令和8年6月22日

NITSニュース第257号

はじめに

窓を打つ雨の音が、教室の日常にそっと馴染む頃となりました。いかがお過ごしでしょうか。行事が一段落した学校にも、変わらず子どもたちが通ってきます。節目となる特別な行事がなくとも続いていく、単調に見える日々の積み重ねが学校を支えているのかもしれません。

本号では、NITS大賞を受賞した学校の「その後」に焦点を当てました。拍手が鳴りやんだあとも、実践はどのように続き、変化しているのか。その姿をお届けします。

今月の目次

1. 学びの交差点

第9回NITS大賞受賞校その後…

2. お知らせ

1. 学びの交差点

第9回NITS大賞受賞校その後…

大賞、準大賞を受賞した3校に受賞後の今の学校の様子をご紹介いただきました。

【大賞】
長府の街は君なしじゃはじまらない ~生徒の主体性と郷土愛を育む仕組みづくり~
下関市立長府中学校 校長 相田康弘

活動概要

学校のある城下町長府は、歴史や文化、活気ある商店街など“生きた教材”に恵まれている。一方、生徒の自己肯定感や地域貢献意識の低さが大きな課題であった。そこで、自らの意思で地域に出て活躍する生徒を育てるため、地域の活動やイベントの主催者の思いを直接聞ける体制を整え、さらにICTを活用して教員の負担軽減も実現した。

受賞のその後…

NITS大賞受賞後、校内では「実感がわきにくい」という声もありました。というのも、本校の取組は、先生方に大きな負担をかけず、日常の延長線上で自然に広がってきたものだからです。ICTを活用した仕組みの中に、地域の方々からの温かいメッセージや、生徒の小さな成功体験を丁寧に積み重ねてきたことで、生徒が自ら地域に飛び出す姿が当たり前の風景になりました。4月に生徒の3分の1が入れ替わりましたが、生徒全員が自ら手を挙げて地域に関わることを目指し、今年度も新たな展開を始めています。

一方、受賞を最も喜ばれたのは、これまで中学生に関わってくださった地域住民や団体の皆さん、そして学校運営協議会の方々でした。「中学生の力が地域の誇りになった」と言っていただき、私たちも改めて地域とのつながりの大きさを実感しました。また、県内外の先生方からも「『君なしじゃはじまらない』の言葉を使わせてもらうよ」と声をかけられるなど、仕組みだけでなく、コンセプトについても思いがけない広がりが生まれています。

最近、観光客の方から「生徒が誇らしげに校歌を歌いながら下校していた」「外国人観光客に明るく挨拶していた」というエピソードを伺いました。まだ地域貢献活動を経験していない新入生も、街中で先輩たちの姿を見て、「地域で活動したい」という声が自然と上がり始めています。受賞をきっかけに、長府のまちに誇りをもつ生徒が確実に増えていることを感じています。

【準大賞】
バラでみんなとつながローズ!~地域リソースを活用した共働的な学びの実践~
広島県立福山特別支援学校 中学部主事 平松紀恵

活動概要

肢体不自由のある児童生徒の重度・重複化が進む中、より魅力ある教育内容を想像するために学校運営協議員の力を借りて地域との繋がりを構築した。福山市の花「バラ」は、戦後復興の象徴として市内に100万本あるとされており、色や香りもはっきりしているため障害を有する児童生徒にも分かりやすく、題材として扱うことで多様な学びを提供できた。

受賞のその後…

第9回NITS大賞の準大賞を受賞し、校内SNSや学校ホームページでお知らせするとともに、県内の特別支援学校にもご報告しました。たくさんの賞賛や激励の言葉をいただき、大変光栄な気持ちです。いつもバラの管理を手伝って下さっている方にも受賞報告をしたところ、我が事のように大喜びして下さり、驚いたことにそのまま行政や近隣の商業施設に飛んで行って光の速さでこのことを広く知らせてくださいました。このような強力な味方(兼インフルエンサー)と繋がれたことに、人との縁のありがたさを実感しています。

また、「つながローズの取組を頑張ってきてよかった」と安堵しつつも、教職員の異動等を考えると、今後の持続可能な取組とは何かを考えました。その結果、令和8年度は教職員全員による「社会に開かれた教育課程会議」を立ち上げることになりました。教職員は「進行・サポート」「地域交流・協働」「体験学習推進」「情報発信・収集」の4チームのいずれかに入り、年に1回以上は地域協働に関わる枠組みを作りました。4月に教職員の希望を基にチーム編成とチームリーダーを決め、5月初旬に取組がスタートしました。

本校の地域協働を通して子どもたちの学びが深まっていることは、教職員や地域の方々の間で共通認識となっています。それぞれのチームが上手く機能し、1年後には児童生徒も教職員たちもさらに主体性が高まり、盛り上がっている福山特別支援学校になっているだろうと現在ワクワクしています!

【準大賞】
変わる先生、学校、そして子ども ~アップデート 主体性×かける対話×かけるDX改革~
和歌山県海南市立亀川小学校 校長 清水奈穂実

活動概要

授業改善・校内研修の刷新・校務DXを軸に、個別最適な学びと協働的学びの一体的な充実を図り、学習者中心の学びを進めた取組である。自由進度学習や行事での選択制等を通して、主体的に学ぶ姿の育成を学校全体で図る。校内研修「授業改善プロジェクト」では、教員の授業観を再構築した。

受賞のその後…

NITS準大賞の受賞は、本校が4年間積み重ねてきた取組が認められたものとして、職員の大きな自信につながり、さらに取組を前向きに進めていこうという機運にもつながっています。受賞時にいただいたご講評を通して、私たちが大切にしてきた「子どもが主語になる授業づくり、学校づくり」の方向性が確かなものであると実感し、職員一同、継続的な学校文化として根付かせていこうという思いを新たにしています。

受賞後は校内外から反響があり、ご指導いただいてきた大学の先生方や教育委員会、地域の皆様から祝福のメッセージが届き、「子どもたちの姿が生き生きしている」といった温かい言葉をいただきました。特に地域の方々が自分のことのように喜んでくださったことは、職員にとって大きな励みとなりました。

校内では、校内研修「授業改善プロジェクト」が2年目を迎え、「自己調整学習」「対話」「教材・学習課題」の3つの柱で研究をさらに深めています。同様に、子ども主体の学校行事も2年目を迎え、6月の運動会では子どもたちの思いが一層発揮されるようになりました。この子どもの変容は、教師にとって何よりの喜びであり、受賞がもたらした大きな成果の一つです。また、職員間の対話も活発になり、授業改善に向けた協働の文化が強まりました。本校は、これからも授業改善と校務DXを一体的に進め、「子どもが主語」の学びの実現に向けた組織的な取組をさらに進め、アップデートをしていきます。

2. お知らせ

第9回NITS大賞・準大賞・優秀賞・入選の活動発表(プレゼンテーション)動画

教員資格認定試験 合格者の声~「私」の教職のかたち~

教員資格認定試験に合格して小学校教諭二種免許状を取得し、現在教壇に立たれている方の声をお届けします。教師を志したきっかけ、教師という仕事の魅力を紹介するインタビューです。ぜひ、ご覧ください。

vol.1
小学校教員資格認定試験 宮澤太郎さん(平成27年度合格者)
vol.2
小学校教員資格認定試験 佐野歩美さん(令和3年度合格者)

研修マネジメント力協働開発プログラム(地域版)

令和8年6月5日(金曜日)に中国四国版(山口会場)、6月15日(月曜日)に近畿版(大阪会場)、6月19日(金曜日)に東海北陸版(オンライン)が開催されました。これから続々と全国各地でマネプロ地域版が展開されます。「研修観の転換」に向けた「学び合いのコミュニティ」形成支援事業ページの「各地域の実施について」を更新していますので、実施要項をご参照ください。

NITS Learning Hubセミナー

NITS Learning Hubセミナーを、東京事務所にて、令和8年7月31日(金曜日)、8月28日(金曜日)に開催予定です。多様な立場の人が自分たちの学びや研修の在り方について少し立ち止まって考え、多くの仲間と語り、つながることができる場です。詳細は、NITS Learning Hubページに随時掲載する実施要項等をご確認ください。皆さまのご参加をお待ちしています。

次号は令和8年7月22日発行予定です。主な内容は当機構審議役島谷千春による「マナコミ事業について」を予定しています。