NITSニュース第250号 令和7年11月21日
子供たちの学びを支える基盤としての特別支援教育の視点
国立特別支援教育総合研究所 発達障害教育推進センター 総括研究員 井上秀和
近年、小・中学校等の通常の学級には、学習面や行動面で著しい困難を示す子供、不登校の状態にある子供、日本語を日常的に使用しない子供、特定分野に特異な才能を 持つ子供など、多様な教育的ニーズや背景を有する子供たちが在籍しています。こうした現状を受け、通常の学級においても全ての子供を包摂するインクルーシブな教育への転換が喫緊の課題となっています。
特別支援教育は、障害のある子供への教育にとどまらず、障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ、様々な人々が生き生きと活躍できる共生社会の形成を支える重要な教育的基盤であり、わが国の現在および将来の社会にとって重要な意味を有しています。
文部科学省が 2022年に公表した「特別支援教育を担う教師の養成の在り方等に関する検討会議」報告では、「特別支援教育は、従前より、障害のある子供一人一人の教育的ニーズに対応して、全ての子供たちの可能性を引き出し、持てる力を最大限度まで高めるための個別最適な学びと、協働的な学びが実現されるよう、個に応じたきめ細かな学習の工夫を実施してきた」と評価されています。そして、「こうした特別支援教育の考え方は、特別支援教育分野の専門性向上や進展のみならず、また、障害の有無にかかわらず、教育全体の質の向上に寄与する」ことが示されています。
通常の学級における実践では、学級担任が子供の困りごとに気付くことが支援の出発点となります。そのうえで、子供の困りごとの背景を把握し、指導・支援の工夫の意図を整理しながら、個に応じた手立てを検討・実施し、子供と共に手立ての効果を検証していくという一連のプロセスが重要です。しかし、これらすべてを担任一人で担うには限界があるため、保護者や特別支援教育コーディネーターなどとの連携を図りながら進めていくことが不可欠です。
子供の困りごとは、学習内容や場面等によって移り変わることから、全ての子供に注目する必要があります。その場合には、特別支援学校の学習指導要領に示されている「自立活動」の視点が有効だと考えます。自立活動は、「人間としての基本的な行動を遂行するために必要な要素」と「障害による学習上又は生活上の困難を改善・克服するために必要な要素」の2つの要素から構成され、その内容が 6区分27項目に整理されています。このような視点を学級担任が知っておくことで、教育的ニーズのある子供への気付きや、自立や社会参加に向けた支援の質を高めることにつながります。
今後は、「自立活動」の視点を、教科指導や生徒指導といった既存の指導場面において、一時的な工夫として行うだけではなく、教職員が意識的かつ組織的に活用することで、多様な教育的ニーズのある子供の学びの充実をめざしていくことが期待されます。
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所では、小・中学校の通常の学級に焦点を当てた複数の研究に取り組んでおり、現在、最終報告書の作成を行っています。令和8年2月28日(土曜日)に開催される研究所セミナーでは、その一部を報告する予定です。ぜひ、この機会にご参加ください。※注
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- 本コラムは令和7年11月21日発行のメールマガジンに掲載された内容です。当該セミナーは終了していますが、以下のリンクから概要をご覧いただけます。
- 令和7年度国立特別支援教育総合研究所セミナー国立特別支援教育総合研究所