NITSニュース第188号 令和4年3月11日
リスク・マネジメント
塩竈市教育支援センター「コラソン」 所長兼スーパーバイザー 身崎裕司
「リスク・マネジメント」とは
教職員一人一人が、「公共の秩序を維持し、児童・生徒の生命をあらゆる危機から守る」という重要な役割をもっているのです。そのため、何が必要なのでしょうか。
学校における危機管理は、事前の危機管理(リスク・マネジメント)と事故等発生時の危機管理(クライシス・マネジメント1)及び事後の危機管理(クライシス・マネジメント2)の三側面から考えます。
- (1) 「事前の危機管理(リスク・マネジメント)」では、危険をいち早く発見して事件・事故の発生を未然に防ぐことです。
- (2) 「発生時の危機管理(クライシス・マネジメント1)」では、万が一事件・事故が発生した場合に、適切かつ迅速に対処し、被害を最小限に抑えることです。
- (3) 「事後の危機管理(クライシス・マネジメント2)」では、保護者等への説明や児童生徒の心のケアを行うとともに、発生した事故等をしっかりと検証し、得られた教訓から再発防止に向けた対策を講じることです。
上記の三側面からとらえた「各種マニュアル」の策定・見直しが必要になり、教職員の危機意識及び資質の向上に努めていかなければなりません。また、児童生徒等への安全教育の充実と日頃の安全点検(安全管理の徹底)が求められます。【参考】文部科学省「学校事故対応に関する指針」(平成28年3月31日)
ただし、日頃、気を付けていても事件・事故や災害の発生は予想することが困難な場合もあります。次のコーナーで事例から考えてみましょう。
事例1:防球ネット死亡事故
2021年4月、宮城県のA小学校で、放課後に児童数人が防球ネットに寄り掛かり遊んでいた際、その防球ネットの木製支柱が折れて、男児2人が死傷した。日常的に防球ネットはサッカーゴールとして利用され、児童が支柱やネットに寄り掛かって遊んでいた。支柱は1989年に設置されたもので、経年劣化が進んでいたとみられるが、点検は教員による目視などにとどまり、児童に接近を禁止するといった指導をしていなかった。県警は2022年2月、校長らを業務上過失死傷容疑で書類送検した。その後、有識者でつくる事故調査委員会が設置され、「事故原因は学校などの不十分な安全管理」とする報告書を当該教委に提出した。
<考える>
まず大事なのは、本当に大丈夫だろうかという意識をもつことです。ちょっとした見逃し、確認不足が取り返しのつかない大事故につながります。また、子どもたちへの安全指導・安全教育も事故を防ぐために非常に大事なことです。施設設備の安全点検においてのマンネリ化を防ぐことも非常に大事です。毎回、同じ場所を点検するのではなく、点検場所をローテーションすることも効果的です。また、施設管理者だけでなく、専門家に定期的な点検をしてもらうことも効果的です。
事例2:こども園に不審者・刃物男事件
2021年11月、宮城県登米市の認定こども園で、刃物を持って侵入した男を男性職員2人が取り押さえた。 男性職員は侵入した男が、職員しか使わない園庭裏の職員駐車場近くを歩く姿に違和感を覚え、庭園で遊んでいた園児を驚かせないように職員が機転を利かせ、「雨が降りそうだから建物の中に入ろう」と呼びかけ園舎の中に入れた。 男性職員は、刃物が見えて怖くなったが、後ろにいる子どもたちを守ろうと必死になって取り押さえた。【河北新報・記事より】
<考える>
いつもと違う行動に違和感を覚えるという危機意識が、こども園の職員の方に見られます。「知らない人が校(園)地内にいたら、必ず声掛けをすることが大事」と、このこども園では不審者侵入を想定した訓練を4月から2回実施しています。園児214名の大規模施設のため、複数の侵入経路を想定し、机上訓練も複数回実施していました。職員の不審者対応への意識が高く、日頃の訓練の成果が表れた事例です。
事件・事故が起きた後に、「~していたら大丈夫だったのに。」「~していればこんなことは起きなかったのに。」ということがあります。「たら…、れば…」に絶対にならないように、最悪のことを考えた危機意識をもつことが非常に大事です。
安心・安全な学校、子どもたちの生命を守るために。