NITSニュース第185号 令和4年1月28日

「コミュニティ・マネジメント」の目標と評価

秋田大学教育学研究科 教授 原義彦

令和3年度のNITS研修講座の一つ「コミュニティ・マネジメント」を担当しました。 NITSの講義や演習であれば、「教育」や「学校」、「教員」といった言葉がタイトルの一部に含まれることが多いのですが、「コミュニティ・マネジメント」にはこれらの言葉はありません。 このタイトルであれば、一般の企業や組織などのコミュニティ・マネジメントを想像するのではないでしょうか。 NITSがあえて「コミュニティ・マネジメント」というタイトルで講座を実施するのは、分野を超えて共通性の高いコミュニティ・マネジメントの視点や方法を、学校においても活用していきたいという意図があるのだろうと、勝手な推測をしながら研修に臨みました。 そこで、この研修の中で、受講者である教員や教育行政職員の皆さんにお伝えしたかった2つのポイントについて、綴ってみたいと思います。

一つ目は、コミュニティ・マネジメントというのは、学校経営や教育活動の全体をコミュニティ化(地域社会との連携・協働の観点と内容で組み立てること)していくという点です。 学校におけるコミュニティ・マネジメントを、各教科等における教育活動の中で、地域の指導者や支援者、団体、施設等と連携・協働するという個別的、局所的な捉え方ではなく、学校経営の理念や目標、目指す姿などに地域との連携・協働の内容や視点を含み、それを個々の教育活動において具現化する全体的、包括的な捉え方にすべきであるというものです。

「あなたと、コンビに」という某コンビニエンスストアのモットーがあります。 最上位の目標である企業理念に地域や地域住民との連携協働の内容や観点を取り入れることは、地域を大切にしようとする経営方針を明確にするとともに、地域住民に寄り添い、そのニーズに応じた個別具体のサービスを進めることにとっても、極めて重要なことになります。

二つ目は、コミュニティ・マネジメントの評価に関することで、PDCAサイクルのPとCの相互関係についてです。PDCAサイクルは成果志向の経営の基本として、すでに多くの分野で活用されています。 PDCAサイクルは、それが循環することが条件ですから、とかくP右矢印D右矢印C右矢印Aという連続性に目が行きがちです。 確かにこれは基本的で重要なことではありますが、連続していない計画Pと評価Cの間に見逃せない関係があることも研修の中で強調しています。

評価(総括的評価)とは、目標の達成状況について各種の調査や測定を通じて価値判断することです。 学校経営の目標は学校経営計画に、個別の教育活動の目標は単元計画などに記載がありますので、評価と計画の関係はP左矢印Cと表現できます。 この評価のためには、Pには評価を可能とする(評価に耐え得る)明確な目標が設定されていなければなりません。 つまり、評価を予測した計画作成が必要で、P右矢印Cと表すことができます。 これを先ほどのP左矢印Cと合わせて表すと、P双方向の矢印Cとなります。 学校と地域との連携協働の活動をどのように評価するかは、計画の段階で適切かつ測定可能な評価指標を設定しておく必要があります。

研修ではコミュニティ・マネジメントの主旨を生かし、評価が可能な学校経営目標と、そのための評価指標作成に関わる演習を行いました。 この「コミュニティ・マネジメント」が評価に耐え得るものであったかは、受講者のみなさんの受け止め次第と言うことになりそうです。