NITSニュース第183号 令和3年12月24日

オンライン研修の可能性と課題 ~基盤研修と指導者養成研修のアンケート結果より~

独立行政法人教職員支援機構 つくば中央研修センター長 清國祐二

新しい生活スタイルが提案される中で、オンライン研修もスタンダードな受講形態としてすっかり受け入れられてきた感があります。 当機構が主催する令和2~3年度の研修並びにセミナーは全てオンラインでの実施となりました。 市場原理とは怖いもので、オンライン需要が高まることで、急激にオンライン研修の技術革新が進みました。 ブレイクアウト・セッションやチャット、ファイル共有、ホワイトボード、アンケート等の機能は、今となっては普通に使いこなされています。 2年前にはおよそ考えられなかった学びの環境の中に今、私たちはいるのです。

それによって皮肉にも、改めて集合・宿泊型研修の意義が問い直されています。 集合・宿泊にはコスト(移動時間や経費、疲労等)がかかりますが、それをかけてもなお効果があることを示さなければなりません。 研修プログラムに示されている「正規のコマ」で展開される学びには、集合とオンラインとで決定的な差異が認識しづらくなってきています。 となると、「正規のコマ」以外の余白の部分での勝負となるのでしょうか。 確かにオンライン研修の現状を見ると、その余白は生まれづらい構造となっているようです。 そのあたりも、技術革新がほどなく埋めていくのかもしれません。みなさんはこのような問いかけに、どう向き合うでしょうか。

さて、当機構で当初よりオンライン研修としていた「学校経営に関する基盤研修」と「教育課題に対応する指導者養成研修」の上半期のアンケートの集計が出揃いました。 そこで得られた興味深いデータをいくつか拾い上げてご紹介します。 その前提として、当機構ではオンライン研修を3つのタイプで提供していることを確認しなければなりません。 Aタイプはできるだけ集合研修に近づくよう、全てライブ・双方向で実施し、講義・演習は外部講師が主導します。 Bタイプは講師による収録動画をリアルタイムで配信し、それを踏まえた演習を当機構職員が企画・運営します。 Cタイプは講師による収録動画をオンデマンドで視聴し、受講者それぞれが振り返りを行います。

最初に、「大変有意義」の比率を見てみましょう。 Aタイプが95.3%、Bタイプが84.4%、Cタイプが82.6%、という結果でした。(ここで紹介するパーセント表示は速報値とお考えください。) 集合研修に近いAタイプへの支持が高くなっています。 続いて「研修への専念」についてです。(当機構としては、任命権者や所属長に対し、研修を勤務日に専念して受講できるよう強く依頼しています。) 専念できた受講者は、Aタイプが93.4%、Bタイプが88.3%、Cタイプが84.4%、となっています。 これもまた、集合研修に近いAタイプがより専念できたようです。 裏を返せば、学校や職場で受講する場合にはCタイプ→Bタイプ→Aタイプの順で受講が中断されやすい、ということになるのでしょうか。

次に、オンデマンド研修のCタイプは再視聴が可能です。 それに対して、AタイプとBタイプはライブ配信ですのでそれができません。 一体どれくらいの再視聴への要望があるのでしょうか。 AタイプとBタイプ、それぞれ88.4%と83.7%の要望となっています。 一方、Cタイプでは91.1%が再視聴しているというデータが得られました。 この調査結果をもとに、令和4年度にはAタイプとBタイプでも、研修終了後にオンデマンドで再視聴できる環境を整える予定にしています。 このように、当機構では研修と研究を関連づけながら、EBPM(Evidence-Based Policy Making)に努めています。

最後に、演習の進め方です。 担当講師が演習を進める方法への高い支持は、Aタイプが51.0%、Bタイプが46.5%、Cタイプが42.1%となっています。 これはAタイプの方法と同一ですが、その受講者が高く支持する傾向にあります。 続いて、担当講師以外が演習を進める方法への高い支持は、Aタイプが30.7%、Bタイプが38.6%、Cタイプが21.0%となっています。 これはBタイプの方法と同一で、上と同様にその受講者が比較的高く支持しています。 個人演習への高い支持は、Aタイプが11.7%、Bタイプが11.9%、Cタイプが45.1%となっています。 傾向は上と同様なのですが、この差は開き過ぎているように見えます。 全体的に見て、Cタイプの受講者は、AタイプとBタイプの受講者に比べて、個人演習を高く、グループ演習を低く評価する傾向にあることになります。 さて、みなさんはこの結果をどのように受け止めるでしょうか。

当機構における、オンライン研修に関する調査研究は緒に就いたばかりで、今後さらに改善して実施する予定です。 そう遠くない未来に、研究成果を踏まえたセミナーが開催できるよう、機構として取り組んでまいります。