NITSニュース第146号 令和2年10月9日

育成指標と教員研修の在り方

鳴門教育大学 教授 葛上秀文

教育公務員特例法の改正により、平成29年度末に、すべての都道府県・政令指定都市教育委員会は育成指標を策定し、それに基づき、教員研修の見直しを行いました。 NITSは、育成指標策定に向けて相談機能を担うとともに、その後の教員研修等の変化について調査を行ってきました。 その成果については、二つの報告書にまとめられています。

教育委員会の多くが策定後、育成指標を見直し、よりよいものとする取り組みを進めています。 育成指標とそれに基づく教員研修の在り方として、今後考えないといけない二つの課題について整理します。

第一に、働き方改革の流れのもと、集合型の教員研修の見直しが求められています。 育成指標に基づき、教員の資質能力の向上を図る上で、教員研修は不可欠ですが、変形労働時間制の導入が進むと、夏期休業中の教員研修を実施しにくくなってきます。 また、今回の新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、集合型の教員研修が多くの自治体で見直しを余儀なくされています。 NITSにおいても、今年度の中央研修は、すべてオンライン型で行うよう変更されました。 今後は、対面型・集合型の研修と、オンライン型の研修を、育成指標と関連づけながら、どのように実施するか考えていく必要があります。 それぞれの実施方法の良さ・課題を吟味し、たとえば、少人数である課題について協議する場合に、構成メンバー同士面識がない場合、どうしてもオンライン型では協議がスムーズに進まないといった課題も見られます。 一方、ある内容をじっくり考えたい、もう一度見直したいといったことは、対面型では難しいでしょう。 対面型の研修として何を実施するのか、オンライン型の研修としてどのように工夫をするのか、各自治体での知見を集約していくことが求められます。

第二に、校外の集合型教員研修とともに、校内研修も、教員の資質能力の向上において重要な役割を果たします。 学校は、校長から若手教員まで、様々なステージの教員で構成されています。 異なるステージのものが、校内研修という場においてどのように学んでいくか考えないといけません。 たとえば、プログラミング教育というテーマで研究していくとき、研究授業を行う若手教員は、その準備の段階から、自らの授業力の向上を目指して取り組みます。 ミドルリーダーは、若手教員がよい研究授業ができるよう働きかけたり、若手教員が研究に専念できるよう配慮したりすることで、ミドルリーダーとしての自身の力量を高めていきます。 管理職は、全体に目配りし、それぞれが校内研修で学びを深めているか把握し、課題がある場合は、次に向けて改善することが求められます。 このように、校内研修の在り方を見直すことが重要になってくるでしょう。

育成指標に基づき、教員が自身の専門性を自発的に向上する、すなわち、学び続ける教員であることが求められています。 教員研修が、消極的な「学ばされ続ける教員」をつくるのでなく、自発的に「学び続ける教員」の支援につながるよう、改善を続けていく必要があります。

今年度、これまでの調査研究を引き継ぎ、「管理職育成に関する研修の在り方に関する調査研究」プロジェクトとして、特に第一の課題に関して調査研究を進め、年度末に報告書を出す予定ですので、また参考にしてください。