アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:同志社中学校
教科等:2年技術・家庭科(平成28年6月)
題材名:金属製マイナスドライバーの製作
機能性とデザイン性を併せた製品づくりのおもしろさを味わってほしい
粘り強く取り組む
協働して課題解決する
知識・技能を習得する
実践の背景
- すべての授業を「教科専門教室」および「教科メディアスペース」でおこなう「教科センター方式」を運用しています。また、タブレット型PC1人1台環境を構築しています。最新の校舎建築、学習環境のもとで、「参加型の学び」と「教科の専門的な学び」を目指して研究と実践をすすめています。
- メイン校舎は、図書・メディアセンターを中心に校舎全体が教科ごとのゾーンに分けられています。国語・社会・数学・英語などの教科専門教室がこの建物内にあり、別棟にある理科や実技教科の教科専門教室とあわせて、すべての授業を教科専門教室で行っています。プロジェクターと電子黒板、それに付随する機器類を完備させ、それらを活用することで興味深くわかりやすい授業の展開を目指しています。
授業改善のアプローチ
下記のようなポイントで教材研究を深め、授業改善を図りました。
- まずは生徒の実態の見直しです。例年、教師は生徒が金属を夢中になって研磨する姿に深く関心を寄せていました。そこで、「金属製マイナスドライバー」を「製品」として位置付けることで、たとえば「究極に研磨しようとする生徒の姿」を技術科における学びとして意味付けようと考えました。このような姿がさらに主体性を持つものとなるよう、有志で道具メーカー工場を見学したり、製品の評価をし合う「グッドデザイン賞」選出会を題材のまとめに位置付けるなどの工夫をしています。
- 次に素材の価値の見直しです。「ドライバー」という素材を、社会的な生産及び流通の中で捉え直しました。流通を支える商品の魅力は、例えば金属製品の場合、光沢のある表面加工と洗練されたデザインがその一つとして考えられます。そこで、旋盤を使用する加工では、図面通りの作品を正確に作る加工から自由な形状をデザインする加工へと位置づけを変えました。こうすることで、生徒は製品としての機能性と、商品としての魅力であるデザイン性の両面を追究することができました。
- そして教材化です。上記のような生徒の実態の研究と素材の研究を題材の目標と照らし合わせつつ、「金属製マイナスドライバーの製作」という題材を教材化しました。そこで、本題材には多くの種類の加工法が含まれており、製作過程を通して身の回りの製品を見つめ直すことができる、また、道具をつくるという「人類的かつ社会的な面白さ」を感じることができる、という価値を見いだしました。
題材づくりのポイント
目標
- 材料と加工に関する技術や製作に使用する工具や機器の仕組みに関心を持ち、目的や条件に応じて、工具や機器を適切に活用しようとしている。
(生活や技術への関心・意欲・態度) - 製品としての機能性と商品としての魅力であるデザイン性の観点から製作をし、製作上見いだした課題の解決を目指して工夫し創造している。
(生活を工夫し創造する能力) - 製作に必要な工具や機器を安全かつ適切に使い、製作品の部品加工、組立及び仕上げができる。
(生活の技能) - 基礎的な材料と加工に関する知識を身に付け、加工の目的や条件と工具の仕組みとの関係を理解している。
(生活や技術についての知識・理解)
展開
- 1
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金属との出会い直し
- 8種類の針金をつぶして金属の特徴を調べる
- 先輩のドライバー作品を見て金属加工に興味を持つ
- 2
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ドライバー先端部分の鍛造
- 罫書き図面の作成 ・鋼を加熱しハンマーで叩く ・焼き入れ処理
- 3
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デザインとねじ切り (本時)
- グリップ部分のデザインシート作成 ・ダイスを使って先端部分のねじ切り
- 4
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グリップの加工
- 旋盤を使ってグリップを削る ・研磨して形を整える ・先端部分のヤスリがけ
- 5
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ねじ切りと研磨
- タップを使ってグリップ部分にめねじ切り ・グリップ部分を磨く
- 6
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ピン打ちと研磨
- 先端部分とグリップを接合、ピン打ち ・ピカピカになるまで磨き続ける ・仕上げ
- 7
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グッドデザイン賞の選考会
- 「作り手のおもい」を分かち合う場 ・選考の観点を生徒と教師で考える
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
- ダイスを使ったねじ切りの方法を理解し、寸法どおりのねじ加工ができる。
授業場面より
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①解決の見通しを持つ
前時にドライバーの先端部分を製作した生徒は、ねじ切りに挑みます。授業開始前からヤスリを使って先端を磨くなどの姿が見られました。本時への意欲が高まってる姿です。教師は①のように声をかけてから生徒を集めました。続いて、②のような手ごたえとともにポイントを端的に伝え、ゆっくりとした動作で演示をします。生徒は教師の一挙手一投足に見入っていました。出来上がったネジを見た生徒から③のような声を聞こえました。本時への見通しを持った姿だと考えられます。
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②仲間と試行錯誤を繰り返す
堅い鋼を自分の手で切るねじ切りの場面です。万力を順番に使って生徒は試行錯誤を繰り返します。教師は安全面を確認しつつ、質問をしてきた生徒に対して必要な助言をしました。④のようにつぶやいた生徒がいます。材料の固定方法は適切でしたが、材料に平均した力をかけられていないためうまく回せなかったようです。何度か試した後、集中している友達の頃合いを見計らい、相談を持ちかけました(⑤)。材料に働きかけて初めて感じた「うまくいかない」という思いを共有しています。
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③仲間と課題を乗り越える
2人による共同追究が始まりました。気付きや考えを何度も伝え合いながら材料に働きかけ、⑥のような発見を共有しました。ダイスと材料が垂直であることを確認した上で材料に平均した力を加えようと、肘を伸ばしてネジを切っていきます。これは、授業の導入で教師が演示した姿勢と同じです。ネジを切る手ごたえをつかんだ2人(⑦)は、それぞれのネジを切り進めるため、個人追究に再び没頭しました。同じ課題を共有し、協働して課題を解決した姿だと考えられます。
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④新たな課題を乗り越える
堅い鋼はダイスで「クルクル」切れるわけではないことをつかんだ生徒は、「ダイスを戻す」という動きをも習得しました。時々「よし」とつぶやきながら粘り強く切り進めることができました。教師は全体の様子を把握して支援が必要な生徒に対応しつつも、この生徒のように仲間と課題を乗り越えていく生徒の学びを見守っていました。最後に、生徒は規格に合っているかを確かめるため、目の高さに定規を合わせて測りました。そして、均等に並んだピッチを見て、満足そうな表情を浮かべていました。
報告者:研修協力員 谷内