アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:鹿児島市立伊敷中学校
教科等:2年技術・家庭科(技術分野)(平成28年6月)
題材名:材料と加工に関する技術「目的に合った収納するものを作ろう」

他者とかかわり、多様な考えの中から意思決定ができるようにしたい

  • 自分と結び付ける
  • 多様な情報を収集する
  • 自分の考えを形成する

実践の背景

  • 実践校の研究主題は「より良い考えを求めて問題解決していく『実践力』を身に付けた生徒の育成ーアクティブ・ラーニングの視点を取り入れた授業を通してー」です。
  • 各教科の授業を通して、学んだことの価値を認識したり、実生活において意味ある行為・行動につなげたりすることのできる生徒の育成を目指した研究・実践を進めています。
  • 「生徒の日常生活、社会生活など、学校外の『世界』に関わることについて具体的に想定された授業」「ペアやグループ、全体における言語活動により、学び合いの学習が充実した授業」「問題を解決するために、多面的・論理的に考えさせる授業」を目指しています。

授業改善のアプローチ

  • 「実践力」の育成につながる到達目標問題の設定
    到達目標問題を学習課題と関連した内容にすることで授業を通して身に付けた力を生かすことができるように工夫しています。
  • 学習内容と実生活における実践の結び付きに気付くことのできる場面設定の工夫
    今後の製作に繋がる課題を設定し、学習の終末において、木材、プラスチック、金属以外にも新しい優れた材料があることに気付かせるニュース記事を用いることで学習内容と実生活における実践の結び付きに気付くよう工夫しています。
  • 他者と関わり、多様な考えの中から意思決定をしていく学習活動の工夫
    加工や実験を通して、木材、プラスチック、金属のそれぞれの特徴をジグソー活動のエキスパート班ごとに分析し、ジグソー活動でそれぞれの知識をもち寄って、異なる知識を統合します。技術・家庭科では、昨年度から知識構成型ジグソー法を用いており、生徒から多様な考え方を引き出したり、生徒同士学び合ったりする学習活動に取り組んでいます。

題材づくりのポイント

目標

  • 材料と加工に関する技術について、関心をもつとともに、技術を評価し、生活をよりよくするために習得した知識や技術を積極的に活用しようとする。
    【生活や技術への関心・意欲・態度】
  • 材料と加工に関する知識と技術を積極的に活用し、生活する上で直面する課題を見付け、課題に対して工夫・創造し、解決策を見いだすことができる。
    【生活を工夫し創造する能力】
  • 材料と加工に必要である基礎的な技術を身に付け、その技術を合理的にしかも適切かつ安全に活用することができる。
    【生活の技能】
  • 生活や産業の中での技術の役割について理解を深め、ものづくりに必要な知識を身に付けている。
    【生活や技術についての知識・理解】

展開

1

さなざまな材料 身の回りにある製品に使われている材料の種類を知る(1時間)

2

材料の特徴 木材・金属・プラスチック、それぞれの特徴を知る(2時間)(本時2/2)

3

材料と環境とのかかわり 材料と環境とのかかわりを知り、材料の使い方について考える(1時間)

※ここでは、題材「目的に合った収納するものをつくろう」において、「材料の特徴と利用方法を知ること」の展開を示しています。

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

  • 課題を進んで見付け、社会的側面などから比較・検討しようとするとともに、適切な解決策を示そうとすることができる。
  • 課題を明確にし、社会的側面などから比較・検討するとともに、適切な解決策やよりよい考えを自分なりに工夫できる。
  • 木材、金属及びプラスチックなどの特徴と利用方法について加工や実験によってわかった知識を身に付けている。

授業場面より

  • ①学習課題を確認する

    学習課題を確認する画像

    木材、金属、プラスチックについて、重量、さわった感じ、水による変形、電気、劣化、外観という項目で観察をしたことを振り返り、「プランターボックスにはどのような材料を選んだらいいのだろうか」という学習課題を確認します。
      本時は、実際に加工、実験を行い、比較しながらそれぞれの特徴について考えていきます。
      教師は、職員室にあった洒落た観葉植物の金属製のプランターや校舎の外に設置されていたプランターの写真を示しながら、その機能を説明します。
      生徒は身近な生活の中にある製品を改めて意識し、構成する材料に関心を高めていきます。観察の結果を判断の根拠として、プランターの役割や設置場所の条件を踏まえ、デザインや実用性等の視点から適当な材料は何かを考えます。本時では、さらに設計に向けて、加工という視点からその特徴について知識を広げようと提案され、実験への意欲を高めていました。

  • ②加工・実験でエキスパート活動を行う

    加工・実験でエキスパート活動を行う画像

    生徒は3人編成の各グループから、それぞれ「切断」「曲げる」「熱を加える」活動に分かれ、木材、金属、プラスチックの加工・実験を行います。生徒は、既習事項をもとに、加工、実験についての見通しを持ち、活動に参加します。その際に、タブレット端末でその様子を記録していきました。
      教師は、実験手順書を各班に準備し、加工、実験が安全に、スムーズに進むよう説明していきます。また、加工、実験に適した大きさ・厚さの材料を準備しています。
      各担当に分かれた生徒同士が、それぞれ手順書に沿って、試行錯誤しながら加工していきます。のこぎりで綺麗に木材を切断する難しさを感じたり、材料を曲げようとして割れてしまうのではないかと力加減に迷ったり、加熱でどのような材料の変質があるのか加熱時間を比較したり、さまざまな加工や実験を通して材料の特徴を理解していきます。加工に必要な技術や時間についても、実際に経験することで気付いていきました。

  • ③グループで共有する

    グループで共有する画像

    加工・実験でわかったことを、各グループに戻り伝えます。タブレット端末で撮影した動画を使って、プラスチックをカッターで切断するには時間がかかることや、金属をただ曲げただけでは元にもどってしまうこと、また、木を加熱して変形させるのは難しいことなど、それぞれ自分が担当した加工、実験を確認していきます。各自が責任を持って観察したことや感じたことを説明し、聞き手も熱心に耳を傾けています。予想と違った結果報告には驚いた表情を見せ、自分の行った加工、実験の結果と比較して考えたり、質問をして材料の特徴を確認したりしています。情報を共有する場面では、材料の選択に必要な情報は何かを考えて、映像に補足説明を加えて伝えようとする生徒の姿がありました。
      教師は、ワークシートを用意しています。生徒は、実験結果から、材料について、切断、曲げる、熱を加える、という加工が「しやすい」か「しにくい」か5段階で評価し、その理由を書きます。加工、実験の結果を整理しながら、自分なりにどの材料がプランターボックスに最適か考えを深めていきました。

  • ④全体で共有する

    全体で共有する画像

    教師は、「環境性」「経済性」という視点も含めてそれぞれの材料について比較するよう促し、板書でまとめていきます。生徒は、材料が再生可能かどうかについて考え、さらに、「今の加工、実験に使った金属は1枚140円、プラスチックは270円、木材は10円。」という情報に、「えー、そんなにちがうの。」と驚き、プランターの作成にあたって、材料の特徴だけではなく、多角的に比較し、材料の選択をするという視点が必要であることに気付きます。
      前時の観察と本時の加工、実験で確認した材料の特徴や、これまで学んだ知識を根拠として、各グループでどのような材料を組み合わせてプランターボックスを作るべきか話し合い、全体に発表し、考えを共有しました。発表では、設置場所の環境を踏まえ、プランターボックスに植えられた花が咲いた姿を想像したり、耐久性を考えたり、生活の実際に合わせた視点を持って、各グループなりの根拠が伝えられました。それぞれが自分なりに最適であると考えた設計図を基に、意見を集約していく話し合いでは、多様な考えの中から最適解を目指して意思決定をしていく生徒の姿が見えました。

報告者:研修協力員  木下