アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:岐阜市立徹明さくら小学校

進んで仲間と考え、問題解決する力を育成したい

  • 見通しを持つ
  • 協働して課題解決する
  • 知識や技能を概念化する

実践の背景

  • 学校の教育目標を「進んで考え やりぬく子(かしこく やさしく たくましく)」とし、願う児童の姿を「新たな問いを見いだして学び続ける子。主体的に仲間と対話し、よりよい解決策を考える子。仲間との対話を通して、自分の考えを見直すことができる子。確かな根拠をもって判断し、自分の考えを明らかにすることができる子。」として、教育実践に努めています。
  • 研究主題を「進んで仲間と考え、問題を解決する児童の育成-発達段階に応じた主体的・対話的で深い学びの究明-」とし、題材開発や単元構成を工夫することから始まり、問題意識を高めたり、対話に必然を感じられるようにしたり、振り返り等を通して学びを実感できるようにしたりするなど、全校で研究体制や研究計画を整えています。

授業改善のアプローチ

  • 社会とつながる教材を用意し、立場を明確にして追究活動を取り入れた単元構成
  • 必然的な関わりを生み出す「前時までの子供の学びを記した机列表」の共有
  • 対話を促進する学習環境(円形テーブル、卓上用ホワイトボード、立型ホワイトボード、大型テレビ、タブレット等)の整備

単元づくりのポイント

目標

  • 地震などの災害復旧・復興の取組には、地方公共団体や国の政治の働きが反映していることに関心をもち、進んで調べようとしている。
    【社会的事象への関心・意欲・態度】
  • 災害などの非常時における国民生活を守るために、地方公共団体や国は日ごろから協力して準備していること、政治は国民生活の安定と向上を図るために大切な働きをしていることを適切に考え、表現している。
    【社会的な思考・判断・表現】
  • 災害復旧・復興の取組について調査したり、収集した資料を活用したりして、地方公共団体と国の政治の働きについて必要な情報を集め、読み取っている。
    【観察・資料活用の技能】
  • 市や県、国による災害復旧・復興の取組は、地方公共団体や国の政治の働きによるものであることや、政治は国民生活の安定や向上を図るために大切な役割を果たしていることを理解している。
    【社会的事象についての知識・理解】

展開(全9時間)

第1時:「震災前の気仙沼市」
 震災前の気仙沼市の概要について調べ、気仙沼市において、水産業は極めて重要な産業であることを、資料から適切に読み取ることができる。

第2時:「東日本大震災による気仙沼市の被害」
 東日本大震災による気仙沼市の被害状況について調べ、その被害の大きさに気付き、復旧・復興に向けた政治の働きについて関心を持つことができる。

第3時:「学習計画を立てる」
 単元の学習課題について、解決への見通しを持ち、学習計画を立てることができる。

第4時:「国・県・市の連携」
 東日本大震災発生後の国・県・市の取組について調べ、相互に連携して対応していることを理解できる。

第5時:「災害復旧における国の取組」
 災害復旧の取組は、予算を立てたり法律を制定したりするなど、国の政治の働きが大きな役割を担っていることを理解することができる。

第6時:「水産業の復旧、カツオの水揚げ」
 壊滅的な被害を受けたにもかかわらず、気仙沼漁港が震災の年もカツオの水揚げ量が全国で一位であった理由を、国・県・市・漁協・漁師といった立場から追究していくことができる。

第7時:「震災復興の願いを実現する政治」
 気仙沼漁港が、震災が発生した年も生鮮カツオの水揚げ量が全国で一位だった理由について話し合う活動を通して、政治の働きが中心となって人々と協力することで、復旧・復興を迅速に目指したことに気付き、自分の言葉で適切に表現することができる。本時

第8時:「復興に向けた様々な取組」
 水産業以外の復旧・復興に向けて、他国やボランティアの取組について調べ、多くの支援があったことを理解することができる。

第9時:「単元のまとめ」
 これからの気仙沼市の復興について、単元の学習を踏まえて考えることができる。。

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

気仙沼漁港が、震災が発生した年も生鮮カツオの水揚げ量が全国で1位だった理由について話し合う活動を通して、政治の働きが中心となって人々と協力することで、復旧・復興を迅速に目指したことに気付き、自分の言葉で適切に表現することができる。

授業場面より

  • ① 解決への見通しを持つ

    解決への見通しを持つ画像

    「宮城県がガレキを撤去したり、魚市場の建物の修復を進めていったりしたことは、調べて分かったけど、それだけではまだ解決できないな。国や気仙沼市の取組を調べている人に聞いてみよう。」と、前時から追究していた学習課題『気仙沼漁港は壊滅的な被害を受けたのに、なぜ震災の年も生鮮カツオの水揚げ量が全国1位だったのか』の解決を図ろうとします。
    このように、子供たちは課題解決に向けて、自分に必要な情報を考え、見通しを持ちます。
    支えとして、教師が前時までの子供の学びを机列表にまとめ、それを子供にも必要な情報として共有していることがあげられます。

  • ② 多様な情報を収集する

    多様な情報を収集する画像

    「漁協が生鮮カツオの水揚げ量の全国1位を目標にした理由は何だろう。」「これまでも1位だったことは漁協の誇りだし、それが復興のシンボルになって、みんなの励みにもなるんだよ。」「分かった。そういうことか。」と、同じ立場で追究していた仲間から情報を得ます。また、「県外のカツオ漁師さんも、積極的に気仙沼港に水揚げをしていたんだ。」と、異なる立場の仲間から情報を得ます。
    このように、自分の情報を他者からの情報とつなぎ、考えを広げたり深めたりしていきます。
    それは、立場を整理して追究し、それを基にして交流することによって実現しています。

  • ③ 協働して課題を解決する

    協働して課題を解決する画像

    「水産庁が5月の補正予算で、補助金を出せるようにしたから、県や市は港の設備などを素早く復旧できたんだ。」「そういう連携があったから、漁協や漁師さんも6月の最盛期にカツオ漁ができて、全国1位の水揚げ量が達成できたんだね。」と、それぞれの関係性を見いだしていきます。
    このように、個別の情報を出し合っていきながら、それらを少しずつつなげて、構造的に捉え直していきます。
    そこには、立場を明確にした追究がなされていたことと、それらを視覚的に捉えやすくしたホワイトボードなどの活用があります。

  • ④ 本時を振り返る

    本時を振り返る画像

    「私は初めは漁協や漁師さんが中心となって取り組んできた結果だと思ったけれど、〇〇さんたちの話を聴いて、市や県、国が見えないところで支えていたこともよく分かりました。」と、学びの変容を振り返りました。
    また、「気仙沼市の人々にとって、震災復興への希望を持つための第一歩になったと思う。もし政治の働きがなければ、生鮮カツオの水揚げ量は全国1位にならなかったと思う。だから、政治は世の中を励ますことになっている。」と書き記しました。
    これは、教師が「人々にとって政治の働きとは何か」という問いがもたらした、社会的事象の意味を捉えた学びの姿であると言えます。

報告者:研修協力員  各務