アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:岡山県立倉敷天城中学校
教科等:2年技術家庭科(平成29年11月)
単元名:室内環境の整備と住まい方
よりよい生活を営むために工夫することについて、自らの生活に結びつけて考え実践する力の育成を目指したい
自分と結び付ける
共に考えを創り上げる
自分の考えを形成する
実践の背景
- 実践校は併設型中高一貫教育校です。適性検査を経て入学する生徒は、学習意欲が高く、高等学校で指定を受けているSSHの牽引役として活躍しています。
- 授業を45分×7校時で行っています。学校独自の教科である「サイエンス」や総合的な学習の時間等を使い、3年次には、「課題研究発表会」を行い、全生徒が興味関心に応じて設定した課題を研究し、まとめた結果を教職員や外部の方の前で発表します。
- 研究主題を「言語リテラシーを活かして、思考力・判断力・表現力を育む授業づくり」とし、中高6年間を見通した教育課程、教育内容の改善を図っています。
授業改善のアプローチ
- これまでに学んだ知識や、体験的な活動を通して身に付けた知識を実生活に生かす場面として、題材の終末では「知識やスキルを総合して活用することができるような課題」に取り組む時間を設定しています。この課題を通して、自分自身が主体的に活動することが、住環境をよりよくしていくことにつながるということに気付くよう構成を考えました。
- 週1時間の教科なので、他教科等の学習との関連を図りながら定着を図りたいと考えています。そのために本題材では、美術科の「家族に優しい居間のデザイン」、社会科や理科の「様々な自然災害」や「自然災害に対する備え」などと関連付けたり、「保健便り」から、本題材の内容に関連する記事を取り上げて紹介しています。(例えば「換気」など。)これらを通して、生徒が他教科等との学びのつながりをより意識するように心がけています。また、過去の学習(小学校の家庭科やこれまでの技術・家庭科の学習)やこれからの学習(高等学校の家庭科)とのつながりを意識し、より充実した授業になるよう心がけています。
- 「グローバル」で学んだ「根拠を理論的に構成し、相手を納得させる技能」を用いたり、「サイエンス」や「AMAKI学」で学んだ「プレゼンテーションの技能」である「ジェスチャー・ポスチャ-(姿勢)・アイコンタクト・ボイス(声量)」を生かす場面を設定することで、これまでに身に付けた資質・能力がより定着し育まれるように心がけたいと考えています。
- 学んだ知識などを整理するために振り返りを中心に「ウェビングシート」を活用し、自由に記述を足していくようにしています。また、本時では、家の間取りを示した「間取りカード」とそれに合わせた家具等のカードを使い、グループでの話合いが活発になる工夫をすると共に、その思考の過程や根拠をホワイトボードを活用して記録し発表に役立てる工夫をしました。
題材づくりのポイント
目標
- 安全で快適な室内環境の整え方と住まい方について関心を持って学習活動に取り組み、住生活をよりよくしようとしている。
【生活や技術への関心・意欲・態度】 - 安全で快適な室内環境の整え方と住まい方について課題を見つけ、その解決を目指して工夫している。
【生活を工夫し創造する能力】 - 住居の機能について理解し、安全で快適な室内環境の整え方と住まい方に関する基礎的・基本的な知識を身に付けている。
【生活や技術についての知識・理解】
展開
室内環境の整備と住まい方
- ①~②
- 世界の特徴ある住まい(夏休みの課題レポートの発表)
- ③~④
- 住まいのはたらき
- ⑤~⑦
- 健康で安全な住まい
- ⑧~⑨
- 住まいと地域
- ⑩
- 家族にとっての快適な住まい(本時)
- ⑪
- 我が家の生活に生かす
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
- 既習の内容を生かしたり、グループで話し合ったりすることより、家族全員にとっての「快適な住まい」となるように根拠を明確にした工夫をすることができる。 【生活を工夫し創造する能力】
授業場面より
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①本時の見通しをもつ
授業の冒頭は、復習から入ります。本題材でこれまでに学習してきた事項を「安全性」「健康」「環境」の3つのテーマでまとめ、1枚のスライドで確認していきます。生徒は、この復習を通してこれまでの学習を振り返ると共に、自分のウェビングシートの追加も行い、学びを整理していきます。さらに、授業者は社会科で学習した「自然災害に対する備え」や「保健便り」の「換気」の記事を取り上げながら、他教科や日常生活と本題材の学習内容を関連付けていきます。
授業者は、「これらの学んだ多くのことを通して、具体的な快適な住まいについて考えてみよう!」と生徒に提案し、めあての提示へとつなげていきました。具体的なグループでの話合いについても「工夫の根拠を明確にする」ように伝え、間取りカードに示すだけでなく、具体的な文も添えるなどの方法も伝えます。さらに、授業の最後には1分プレゼンテーションがあることも予告します。教師のこれらの手立てにより、生徒は今後の見通しを持って、話合いに取り組むことができるようになりました。 -
②グループで「快適な住まい」を完成させる
まずは、役割分担の確認です。4名の班員でそれぞれ司会、書記、発表、TK(タイムキーパー)の役割を分担します。その後指定されたテーマの中から、話し合う視点を設定した後、具体的な部屋割り、家具の配置その他配慮事項などを考えていきます。
ある班では「健康」というテーマについて「精神的」視点に着目し考えました。家族構成や関係性等の設定はあらかじめ示されています。具体的な部屋割りについて考える時には、「祖母は孫との成長が楽しみという設定だし、1日家にいるので小2の妹の世話も兼ねて同じ部屋で」とか、「年を取ると足腰が悪くなるし、和室よりも洋室の方が楽じゃない?」など様々な場面を想定しながら意見が出されました。さらに「精神的なつながりも大切だが、個人のプライベートも欲しい。」「個室にはテレビを置かず、テレビはリビングのみとして、ふれあいを大事にすることで精神的なつながりを保ちたい」などグループでの話合いは続きます。
プレゼンに向けての練習の時間では、グループで意見交流した結果できた間取りカードについて、「根拠」としてどのようなことを付け加えて説明すればよいかを考えながらホワイトボードにまとめていきました。 -
③プレゼンテーションをする
グループの考えを全体に伝える場面です。ここで授業者は、話し合った意見を時間内(1分間)にまとめること、役割分担をして全員が発表に関わることを求めています。また、グループでの話合いでまとめた工夫の根拠についても発表する事が確認されました。これらを理解した上で、全班のグループ発表が始まります。
作成した間取りカードをタブレットPCで撮影し表示することで、全体像を示したり部分を拡大して示したりすることで視覚的に分かり易く示しながら、根拠やポイントを短くまとめて整理したホワイトボードを使って発表をする姿が続きます。
発表を聞く側も、違うテーマや視点から作成された他班のプランについて肯定的に聞き、自分で納得した考えをプリント書き込むなど、他者の考えをもとに自らの考えを広げる姿が見られました。 -
④学びを振り返る
授業者は、全班の発表に使用したホワイトボードを前面に掲示すると共に、発表の中で繰り返し出てきた「快適に暮らす」「立場」「地域」「安全で健康的な暮らし」「工夫」「環境」等のキーワードを提示します。
生徒は、これらを手がかりに、「快適な住まい」について、各自の家庭生活について振り返っていきます。「安全な家具の配置については、他の班でもあまり変わらなかったことから、日常の家具でも少しの工夫で安全や健康的に暮らすことができる。」など自己の考えに確信を持ち、今後の家庭生活に生かしていきたいと考える姿や「テレビをリビングに置くことで家族全員の絆を強めることにつながるとは考えていなかった。」など、仲間の意見から新たな見方で生活を捉えた姿などが見れました。これらの振り返りを通して、「よりよい生活を営むために工夫し実践することが大切だ」と再認識し、各自の家庭にあった住まい方の工夫とその実践の計画を考えるという次時の進め方についての見通しを共有することにつながりました。
報告者:研修協力員 山田