NITSニュース第247号 令和7年8月22日
不登校等児童生徒への支援の充実に向けて
広島県教育委員会 個別最適な学び担当 不登校支援センター長 渡邉美佳
広島県教育委員会においては、令和3年度に事務局内に不登校支援センターを設置し、不登校等児童生徒への支援の強化・充実を図ってきました。本稿では、特に、「不登校SSR推進校への支援」と「県教育支援センター(SCHOOL“S”)による支援」について紹介します。
現在、県内54校を指定して取り組んでいる不登校SSR推進校(以下推進校)においては、校内教育支援センター(以下SSR)で育てたい力を「相談する力」「自分の強みを知り、活かす力」と設定し、加配措置した不登校等児童生徒支援コーディネーター(以下支援Co)が中心となって、SSRが「安心・安全な居場所」であり、「個々の状況に応じて成長できる場所」となるよう取り組んでいます。例えば、ある推進校の中学校では、「先生お手伝いサービス」という活動に取り組みました。先生方からSSRへ依頼された仕事内容について、いつ、誰が、どういった分担で取り組むかを話合い、自分や友達のよさや強みを理解しながら、それを活かしてお手伝いをするという活動です。校長室のトロフィーの手入れを請け負った際には、ピカピカに磨いて校長室の戸棚に並べ、校長先生をはじめ、先生たちの「すごい」「ありがとう」の言葉を聞いた生徒たちは満足そうでした。学校や教室で過ごすことにとまどいを感じ、自分に自信がない言動がある児童生徒が、こういった活動を通して、「自分の強みを知り、活かす力」を成長させていく姿を見せてくれました。ただ、このような活動を取り入れれば育つというわけではなく、支援Coを中心にSSR利用児童生徒をアセスメントし、校内の支援会議で、個々に応じた目標を設定し、支援を継続・検証していくためのサポート計画を作成するなど支援の方向性を共有して取り組むことが重要です。
県教育支援センター(以下スクールエス)は、不登校等児童生徒を支援する学校外の居場所の一つとして、令和4年度から、来室利用での支援に加えて、オンラインの機能を整備し、来室とオンラインの両面からの支援をスタートしました。育てたい力については、上記SSRと同様ですが、スクールエスで児童生徒と生活を共にしていく中で、私たちが大切にしていることの一つが、同じ年頃の者同士、そして大人たちとの関係を結び直すことです。利用児童生徒の多くは登録前の見学の際、初めてスクールエスと接点をもちます。好きな分野の図書を見つけ、語り続ける児童、うつむき加減で小さくうなずく生徒など、対面時に私たちに見せる姿は様々ですが、こういった彼らの姿をサポート計画に記録し、そして、支援会議で目標を設定し、スクールエスでの日常の生活やプログラムの中で目標達成に向けた手立てを講じています。また、スクールエスではスタッフと児童生徒は呼ばれたい名前を決めて呼び合うこととしています。児童生徒に、もう一度周囲の人たちと関係を結び直し、自分が心地よく感じる大きさの集団の中で、少しずつ自分を表現していけるよう、「相談する力」、「自分の強みを知り、活かす力」の育成を図っています。スクールエス利用の児童生徒が少しずつ自信をつけ、次の活動へ歩みを進めていくことができるよう、これからも支援を続けていきます。