NITSニュース第166号 令和3年3月12日

学校種を越えて検討されつつある地域との連携

独立行政法人教職員支援機構 つくば中央研修センター長 清國祐二

つい先だって「コミュニティ・マネジメント~地域との連携・協働を進める視点~」というタイトルの校内研修シリーズNo92(オンライン講座)を収録しました。 プロが撮影してくださったこともあり、編集もスムーズで早々に機構のホームページにアップされました。 今回の収録はスタジオで行われて、カメラの前にプロンプター(原稿表示装置:要するにカンニングペーパー)という優れモノが置かれていました。 前々から興味はありましたが、実物を見るのは初めてでした。 なるほど、そこに映し出された原稿を読み上げれば、カメラ目線で講義ができるというものでした。

令和2年度はやむを得ず、数十時間分の講義動画等を収録しました。 その大半はいわゆる自撮りです。 その頃の私は自撮りの技術を持ち合わせていなかったので、最初はビデオカメラを固定し、その前で動画撮りをしたのですが、なかなか思うに任せませんでした。 そこで、直近の人気職業ランキング2位のユーチューバーに教えを乞うことにしました。 世の中にはいろいろな人がいるものだと驚きもし、ありがたくも思いました。 年間合わせると、ざっと数十時間分の講義動画を収録しましたが、そのための講義資料の準備や収録、場合によっては編集に、その何倍もの時間を費やすこととなりました。

さて、話を戻します。 令和3年に入って「地域とともにある学校セミナーA・B」を1月29日(金曜日)と2月5日(金曜日)の両日にわたり開催しました。 本セミナーは「学校と地域の連携の在り方に関する調査研究プロジェクト」の成果をプログラムに組み込み、受講者から寄せられた声(オンライン演習の様子とアンケート調査)をもって評価としようとするものでもありました。 調査研究プロジェクトのメンバーは、秋田大学の原義彦先生、岡山大学の熊谷愼之輔先生、国立教育政策研究所の志々田まなみ先生であり、日本を代表する社会教育・生涯学習の研究者です。 ということもあり、受講対象者の中に地域と学校の橋渡しやコミュニティスクールの推進に関わっている社会教育主事も加えました。

受講者の属性の中で目を引いたことがあります。 高等学校の先生や特別支援学校の先生が多く受講してくださったことです。 高等学校では「総合的な探究の時間」に向けて準備が始まっていること、特別支援学校では「地域とともにある学校」が学校の目標に位置づけられるところが増えたことなどが影響しているようです。 「学校と地域の連携」は、学校区の限定的で明確な小学校・中学校・義務教育学校の課題といった先入観が大きく崩れ、時代に乗り遅れている自分を恥ずかしくも思いました。 遅ればせながら、社会教育主事(教員籍でない行政職員含む)も一定数ご参加いただきました。

セミナーは、Zoomを使ったオンラインでの開催としました。 オンラインという制約はあったのですが、できるだけ演習を通して学び合いや情報交換をしていただこうと企画しました。 私の担当部分(150分)のうち、講義と演習の比率は6対4を目指し、ほぼそれに近い時間60分強を演習に充てることができました。 概ね好評を得たものの、「イギリスの教育改革とコミュニティスクールについてもっと聞きたかった」や「学校の実践事例をもっと取り入れてほしかった」という声もいただきました。 受講者全員の満足を引き出すことは難しいのですが、プログラムづくりの段階で学習内容と方法の組合せにメリハリをつけ、それをねらいとともに受講者と共有することの重要性を改めて感じました。

他の講師が担当したコマで、受講者から評価が高く印象に残ったことを紹介します。 コンピテンシー(知識や技術を社会で使いこなせる力)が国際標準となる中で、「社会に開かれた教育課程」や「主体的・対話的で深い学び」はその国際標準に沿った改訂の一つであるところに納得がいった、という反応が多数ありました。 学校と地域の連携はカリキュラム・マネジメントに結ぶことで学校に浸透するという言葉が印象に残った、との記述もいただきました。 コミュニティスクールについて学ぶことを期待していた受講者からは、もっと先進事例があると参考になった、との意見もいただきました。

本セミナーは私たちにとって、教育委員会の指導主事や現場の先生方からダイレクトに声を集められる貴重なものとなりました。 私たちが提供した内容(国内外の教育政策の動向、学校と地域の連携の仕組み、学校経営技法等)についても、見せ方伝え方の改善点も見えてきました。 研修は講師と受講者が共に学び合い高め合うとても貴重な場であることが再確認できました。 これからも計画的にセミナーを開催しますので、是非ともご参加ください。