NITSニュース第156号 令和2年12月18日

『カリキュラム・マネジメントと組織化』をめぐって

千葉大学 特任教授 天笠茂

教科等で考え教科等で実践する学校から、教育課程で考え教育課程で実践する学校への脱皮。 あるいは、学級・学年経営で考え学級・学年経営で実践する学校から、教育課程で考え教育課程で実践する学校への転換。 わが国の学校が直面している課題です。 そのために、教育課程で考え教育課程で実践する発想と手法をもった、いうならばカリキュラム・マネジメント力をもった教職員が求められています。

カリキュラム・マネジメントに関する研修は、このような発想や問題意識の育成をめざし、学校の現状をみつめ、学校改善に必要な手法について考える機会や場を提供することをめざして実施されています。 「カリキュラム・マネジメントと組織化」も、そのようなカリキュラム・マネジメントに関わる研修プログラムの一環として位置づけられています。

現在実施されているカリキュラム・マネジメントに関わる指導者養成研修の研修プログラムは、学習指導要領改訂についての解説、カリキュラム・マネジメントの概論、実践事例の紹介、カリキュラム・マネジメントの進め方、評価手法の説明、教員研修プランの作成などによって組み立てられています。 「カリキュラム・マネジメントと組織化」は、その一環として位置付けられており、本年度は、5の柱(1. “学校にはマネジメントがない”ということ、2. 学校のマネジメント-5つの柱-、3. カリキュラム・マネジメントと組織文化、4. すべての教職員の参加・参画、5. カリキュラム・マネジメントをめぐる研修計画の立案)による講義を中心に実施しました。

この「カリキュラム・マネジメントと組織化」は、研修プログラムの位置づけとして、最終日に設けたところにねらいがあります。 初日のプログラムに位置づけたカリキュラム・マネジメントの概論ともいうべき「カリキュラム・マネジメントの新たな展開」とセットになっており、研修受講者への研修全体を振り返る機会や場の提供を意図しております。 それまでの各講師によって伝えられた様々な情報や知識を、受講者自身が咀嚼し、整理し、意味づける機会を用意し、カリキュラム・マネジメントをとらえる視点や枠組みの構築をめざしています。 カリキュラム・マネジメントを自ら考え、自ら組み立てを図る時間をめざし、そのための視点や課題を問いかけました。

カリキュラム・マネジメントと組織マネジメントとの融合、カリキュラム・マネジメントを動かす動力源としての組織文化、ミドルがカリキュラム・マネジメントにおいて果たすべき役割、教職員それぞれの立場からのカリキュラム・マネジメントへの参加・参画、校長によるビジョンやグランドデザインの提示、などのテーマを取り上げることによって、カリキュラム・マネジメントに関わる情報や知識の再組織化を促し、わが校の教育課程と授業や学級経営について見つめる時間となることをめざしました。

コロナ感染禍、プログラム全体の縮減などやむを得ない事情のもとでの「カリキュラム・マネジメントと組織化」ではありましたが、わが校のカリキュラム・マネジメントの推進に少しでもメッセージが送れればと願って臨みました。 実践の一層の発展、期待しております。