NITSニュース第133号 令和2年7月10日

外国人児童生徒等教育に求められるもの

京都教育大学 教授 浜田麻里

外国人児童生徒等は、みなさんの勤務地域でもここ数年増加していると思います。 日本語ができない子どもがある日突然転入してきたら、どうすればいいのでしょうか。

現在では、特別の教育課程を編成して、取り出しによる日本語指導を実施することが可能になっています。 まずは特別の教育課程実施のための体制作りが必要ですが、それ以外にできることを考えてみたいと思います。

(1) 日本語がわからなくても参加できる授業を

私達は、研修で専門用語ばかりの難しい話を聴いていると、集中できなくなり、眠くなってしまいます。 そんな時よく「外国語を聞いているみたい」と言いますが、日本語がわからない子どもは、毎日まさしく同じ状況に置かれています。

でも、例えば海外旅行でその国の言葉がわからなくても、地図を見て行き先をたどったり、身ぶり手ぶりで意思疎通したりすることはできます。 同じように日本語がわからない子ども達も、実物や写真を見て考えたり、首をふって「はい」「いいえ」を伝えたり、指をさして答えたりすることはできます。 日本語がわからないからといって、何もできないわけではありません。 子ども達が出身国で身につけてきた知識や思考力を発揮できる場面を作りましょう。

(2) 日本語が話せるようになっても安心しない

来日して1年ぐらい経つと、流暢に日本語で話せるようになる子どももいますが、授業の内容を理解したり、友達と細やかに気持ちを伝えあったりするまでには、かなり長い時間がかかります。 来日年齢にもよりますが、5年~10年かかるというデータもあります。

おしゃべりができるようになっても安心せず、わかりやすい授業をしましょう。

などの工夫は有効です。

ある学校では、外国人の子どもがわかりやすい授業の工夫に取り組んだところ、学校全体の教科内容の理解が進んだそうです。 授業をわかりやすく工夫することは、日本人の子供達の学習支援としても有効です。

(3) 日本人の子どものグローバル化も

近年外国人の定住化が進んでいます。 外国人の子ども達も将来、我々の社会の担い手になります。 高齢化の進んだ地域で、すでに外国人の若者達がまちづくりを支えている例もあります。 外国人の子ども達が自信を持って成長していけるよう、子ども達の文化を取り上げる取組みやアイデンティティを大切にする学級経営をしましょう。

外国人の子ども達の文化を大切にする取組みをしている学校では、「○○マルマル文化ってかっこいいな」「○○マルマル語教えて」といった会話が子ども同士で自然に生まれているそうです。 外国人の子ども達とともに学ぶことは、日本人の子ども達がグローバル社会に目を開かせるチャンスにもなります。

そのほか具体的な点については、文部科学省『外国人児童生徒受入れの手引き 』にまとめられています(注)。

外国人の子どもを受け入れることは、たしかに心配も負担感も大きいと思いますが、学校改革のきっかけとしてうまく活かしていただけたらと思います。

(注)『外国人児童生徒受入れの手引き 』についてはリンク先をご参照ください。