アクティブ・ラーニング研修実践事例

福岡県立学校(平成27年度及び28年度)

アクティブ・ラーニング等「新たな学び」を実体験

教員がアクティブ・ラーニング(以下「AL」と言う。)を実体験しながら、「新たな学び」の理念を理解し、対話することで、組織的な授業改善を図る第一歩を踏み出す研修です。

Ⅰ  実施背景と目的

  • 福岡県教育センターには「AL特命チーム」があり、希望する所管の学校には指導主事を派遣し、校内研修を支援しています。
  • 職員間でめざす生徒像の共有はできていますが、教育界を席巻するAL等「新たな学び」について知識や技術の自信がありません。
  • 職員が教育改革の背景や方向性を知り、ALを実体験することで、前項の不安感を取り除き、各自の授業改善の契機とするものです。なお、実施日時は、1学期中間考査中等(学校が希望する時期)であり、指定はありません。

Ⅱ  主な流れと時間配分全60分

  1. ALについて講義(指導主事) 30分
    • ALの背景
    • 授業改善の視点
  2. 演習(ジグソー法)・協議 25分
    • エキスパート活動でALの手法を学習
    • ジグソー活動で学習したALの手法を共有
    • クロストークで各自及び学校としての教育活動の改善について協議

準備物:PC、プロジェクタ、配付資料

Ⅲ  事例のポイント

1  ALを実体験

  • ALに対する不安を和らげ、抵抗感をなくし、良さを実感してもらうためには、教員自身が体験するのが近道です。そこで、演習においては、ジグソー法によるグループワークを取り入れました。
  • 3人グループで、先ず、ジグソー活動として3人が別々の「ALの手法」と呼ばれる活動(例えば、シンクペアシェア・ラーニングセル・ラウンドロビン等)を学習しました。その後、グループのメンバーに学習した手法を教えあうことで、ジグソー法を含め4つの手法を体験的に習得できました。
  • 手法習得だけで研修が終わらないように、研修終末において、学校教育目標と結び付けた授業改善の方法を全体で協議することで、組織的な授業改善へと誘いました。

2  県教育センター「AL特命チーム」

  • ALに関するプロジェクトのため結成され、教育指導部長をトップとする指導主事10数名のチームです。
  • 週1回のチーム会議では、派遣先の校内研修の状況等を報告し、研修の内容や方法のPDCAサイクルを回すなど、(上意下達の伝達式ではなく)AL型の会議にすることを心掛けています。
  • 校内研修への講師派遣は、指導主事2人組(講義担当と同行者)を原則とし、同行者は研修の補助をするとともに、研修の様子を俯瞰することで、研修内容や方法の改善に役立ちました。指導主事自身の学び合いの場ともなりました。
    ※ある講義担当の指導主事のコメント
    今までチームとして70校以上の校内研修講師派遣の経験を活かし、(研修当時は答申や新学習指導要領公表前だったので)「審議のまとめ」に準拠しつつも、文科省や中教審の資料を噛みくだいて資料を作り、ALに関する社会背景や留意点を説明した。
    ※同行した指導主事のコメント
    (教員にとってALは)「江戸幕府の御家人が明治新政府の役人を教育するくらいの難しさ」の例えが、先生方にとって納得いく感じだったので、その後のALの必要性や資質・能力育成の方向性の話が、スムーズに入っていく感じだった。
  • 平成28年度末現在、県内の70%以上の県立学校で、同様の研修を実施しています。

Ⅳ  成果と課題

  • 成果:参加者にとって、これまでの実践をALの視点から捉え直すきっかけとなりました。「全く新たな実践をしなければならない」と不安に感じていた職員もいましたが、ALの視点で授業改善をすることは、今までの取組の延長線上にあることが理解できました。
  • ある教員の感想:「様々なALの手法を学びたい」と思って研修に参加しましたが、私が求めていたものは、同僚達と一緒に主体的に考え、模索し、試行錯誤しながら創り上げていくものだと気付きました。

報告者:研修協力員  鬼塚