アクティブ・ラーニング研修実践事例

由利本荘市立西目小学校(平成28年2月)

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善に向かう校内研修

「主体的・対話的で深い学び」の視点から子供の学ぶ姿を分析することで、資質・能力を育成するための効果的な手立てについて明らかにし、明日からの授業改善に生かすための研修です。

Ⅰ  実施背景と目的

  • 実施校は、学校教育目標を「ふるさとに学び、自分の生き方を真剣に考える子どもの育成」として、ふるさと西目に学び、西目らしさの薫る体験的な学習活動や問題解決的な学習活動を重視し、研究主題は「学びの自立を目指して」としています。また、コミュニティ・スクールとして、地域とともに学校づくりを進めています。
  • 実践フィールド校として、全職員でアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善に取り組む過程を、県教育委員会・市教育委員会・県総合教育センターと連携し、推進地域に公開をしながら進めています。
  • 子ども自身が課題を発見し、解決し、発信していく単元構想の中で、どのように事象とかかわり、他者とかかわり、最終的に子ども自身が自己の高まりとして手応えを得るのか、継続した見取りと教師の出番の在り方を問いながら、子どもの学び続ける意欲が醸成されることを「学びの自立」と捉え、研究を推進しています
  • 本研修会では、「主体的・対話的で深い学び」の視点から子どもの学ぶ姿とそれを支える教師の手立てについて分析することで、育ってきた子どもの資質・能力とそれを支える教師の手立てについて明らかにします。また、効果的な取組について概念化シートを用いて共有し、日常の実践に生かしていくようにします。

Ⅱ  主な流れと時間配分(全80分)

  1. 本日の研修の目的と流れについて確認(3分)
  2. 参観した授業の子供の姿を付箋に記入(3分)
  3. グループで「主体的・対話的で深い学び」の視点から子供の学ぶ姿とそれを支える教師の手立てについて分析(20分)
  4. 分析結果について共有(15分)
  5. 個人で振り返り(10分)
  6. 振り返った内容について全員で概念化(10分)
  7. 授業者の感想(5分)
  8. 講師等によるまとめ(10分)

準備物:学習指導案、授業記録、板書写真、子供のノート、模造紙、付箋( 名刺サイズのもの: 4 色)、マジック、ホワイトボード、PC、プロジェクタ

Ⅲ  事例のポイント

1  情報を整理する個人思考の時間を確保する

Ⅱ2では、授業記録を基にして「主体的・対話的で深い学び」の視点から子供の学ぶ姿とそれを支える教師の手立てについて個人で分析し、付箋に記入します。その際、付箋の色は、よかった点(桃色)、課題点(黄色)、改善案(水色)としました。また、各自の得た情報を整理して互いに伝え合うことができるように、授業中に記録したメモを基に、具体的な文章で記述することとしました。さらに、子供の変容とそれを支える教師の手立てについて分析するために、付箋の左上に時刻、右下に記名をすることとしました。

2  子供の学びとそれを支える教師の手立てを結び付けて分析する

Ⅱ3では、「主体的・対話的で深い学び」の視点から子供の学ぶ姿について互いに伝え合いながらⅡ2で記入した付箋を模造紙に貼り、その姿を支えた教師の手立てを分析しました。その際、マトリクスシートを用い、付箋に記入した時刻や記述内容から、子供の学ぶ姿やそれを支える教師の手立てについて、共通内容の付箋を取りまとめてキーワードをつけ、協議したことを可視化・構造化しました。また、グループ編成を、役職、経験年数、専門教科を混在させて構成することで、多様な見方から分析し、協議が深まるように配慮しました。

3  互いの問題意識を可視化・共有化し、日常の授業改善につなげていく

  活発に見える協議会でも、ある一部の方の意見に終始している会も見受けられます。校内研修会で大切にしなければならないことは、全体の協議で明らかにしたことについて、各個人の問題意識と結び付けて考える場面を位置付け、学校として育てたい資質・能力の育成に向けて、多様なアプローチを共有し、日常の授業改善につなげていくことだと考えています。
  本研修事例のⅡ5では、全体協議での分析を受け、自分の問題意識と結び付けながら今後授業に取り入れてていきたいことについて個人で付箋(黄緑色)に記入します。
  Ⅱ6では、全員の付箋を概念化シート(右図参照)に貼り、可視化・共有化します。概念化シートの縦軸は学級集団と個々の児童、横軸は現在できていること、今後取り組みたいこととしました。その際、互いの問題意識を見比べる時間を取り入れ、質問をしたり、質問に答えたりすることで、校内研修会が日常の授業改善につながっていくように工夫しました。

Ⅳ  成果(教員の声より)

  • 「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」の3つの視点から子供の学ぶ姿とそれを支える教師の手立てについて分析することで、育ってきた子供の資質・能力とそれを支える効果的な教師の手立てについて共有することができました。今後の取組に生かしていきたいです。
  • 授業研究会で大切なことは、子供の姿とそれを支える教師の手立てについて分析することだと感じています。課題に対しても、それについて具体的な改善策の提案が伴っていることが重要だと感じました。
  • 授業改善についての互いの問題意識を概念化シートで可視化することによって、互いの取組内容について焦点化をして質問したり、質問に答えたりする雰囲気が生まれ、共同研究がより推進してきています。
  • アクティブ・ラーニングというと子供の外的活動にのみに意識が向く傾向がありますが、子供の頭の中で行われる内的活動までアクティブであるかを見ていくことが大事なことだと感じました。活動あって学びなしにならないように意識して授業改善を行います。
  • ねらいに到達した子供の姿を、学びを振り返って学んだよさを自覚する子供の姿からイメージをすることで、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」の3つの視点から指導過程の質的改善を図ることができそうだと感じています。

報告者:研修協力員  稲岡