アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:由利本荘市立西目小学校
教科等:3年算数科(平成28年2月)
単元名:見やすく整理して表そう(棒グラフと表)

目的に応じて、表や棒グラフを用いて分かりやすく表したり、読み取ったりする力を育成したい

  • 振り返って次へつなげる振り返って次へつなげる
  • 互いの考えを比較する互いの考えを比較する
  • 知識・技能を活用する知識・技能を活用する

実践の背景

  • 実践校は、学校教育目標を「ふるさとに学び、自分の生き方を真剣に考える子どもの育成」としてふるさと西目に学び、西目らしさの薫る体験的な学習活動や問題解決的な学習活動を重視し、研究主題は「学びの自立を目指して」としています。また、コミュニティ・スクールとして、地域とともに学校づくりを進めています。
  • 開発実践フィールド校として、全職員でアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善に取り組む過程を、県教育委員会・市教育委員会・県総合教育センターと連携し、推進地域に公開をしながら進めています。
  • 子供自身が課題を発見し、解決し、発信していく単元構想の中で、どのように事象とかかわり、他者とかかわり、最終的に子供自身が自己の高まりとして手応えを得るのか、継続した見取りと教師の出番の在り方を問いながら、子供の学び続ける意欲が醸成されることを「学びの自立」と捉え研究を推進しています。

授業改善のアプローチ

児童はこれまでに、1学年の簡単な絵グラフに始まり、2学年で簡単な事柄を整理して表や○を用いたグラフに表したり、その数値をよんだりする経験をしてきています。また、本単元では、棒グラフのかき方、よみ方を学び、最大値や最小値をとらえたり、項目間の大小をよみ取ったりするなどし、統計グラフについての基礎的基本的な事柄を学んできました。
  本時では、身近な事象である、学校のみんなにけがに注意してもらうためのポスターにはどのような棒グラフがいいかについて考察していきます。その際、目的に合った棒グラフの表し方について目盛りの大きさに着目して考えることができるように、1目盛りの大きさの異なる3種類の棒グラフを提示します。そして、けがを減らしたいという目的に合った棒グラフにするためにはどのように表すとよいのかについて、1目盛りの大きさに着目しながら互いの考えを比較・検討し、自らの考えを構築していく学びを大切にします。また、児童が学びの変容を自覚し、学んだことを活用していくことができるように、教師が教科内容と学び方を関連付けて、考えの深まった要因や場面について価値付けていきます。単元を通して、目的に応じて、表や棒グラフを用いて分かりやすく表したり、読み取ったりする力を育成したいと考え、授業を構築しました。

単元づくりのポイント

目標

  • 表やグラフに表すことのよさに気付き、目的に応じた観点で資料を分類整理したり、表や棒グラフに表そうとしたりする。
    【算数への関心・意欲・態度】
  • 目的に応じた資料の分類整理の仕方や棒グラフや表の表し方を考え、分かりやすく表すことを工夫することができる。
    【数学的な考え方】
  • 資料を分類整理して表や棒グラフに表したり、表や棒グラフから資料の特徴や項目間の関係を読み取ったりすることができる。
    【数量や図形についての技能】
  • 棒グラフの読み方やかき方、表を用いた表し方について理解する。
    【数量や図形について知識・理解】

展開

1次 見やすく整理しよう
1, 2
  • 資料を見やすく整理することへの興味・関心をもつ。
  • 資料を分類整理する方法や整理結果を表にまとめる方法を理解する。
2次 棒グラフに表そう
3
  • 表と棒グラフや、2つの棒グラフを比べたりしながら、棒グラフを読み取る。
  • 項目のとり方を変えたグラフを比べる。
  • 用語「ぼうグラフ」とその特性を知る。
4
  • 数量が横軸に表された棒グラフを読み取る。
  • 1目盛りの大きさや、項目の順序などについて考える。
5
  • けがの場所と人数を整理した表を見て、棒グラフに表す方法を考える。
  • 項目のとり方、1目盛りの大きさなどの順に従ってグラフをかく。
6
  • 目盛りの付け方が異なる複数の棒グラフを比べ、目的に合った棒グラフの表し方について考える。【本時】
7
  • 自分たちが調べた事象について目盛りの付け方を考えて、棒グラフに表す。
3次 表をくふうしてみよう
8
  • 3か月のけがの種類と人数をまとめた3つの一次元表を読み取る。
  • 3つの表をまとめた二次元表に数を書き入れ、表を読み取る。
  • 二次元表の有用性を考える。
4次 まとめ
  • 練習問題に取り組む。
  • 生活の中の表やグラフを見付けたり、表やグラフで表すと便利なことを見付けたりする。

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

目盛りの付け方が異なる複数の棒グラフを比べ、目的に合った棒グラフの表し方について考えることができる。

授業場面より

  • ①問題解決の見通しを持つ

    問題解決の見通しを持つ。画像

    問題場面を把握し、問題の解決について見通しを持つ場面です。教師は、学校の養護教諭に尋ねた、けがをした時間と人数を表した1目盛りの大きさの異なる3種類の棒グラフを提示し、問題場面に合った棒グラフの表し方に対する児童の意欲を高めていきます。その際、棒グラフの目盛りの付け方に着目した児童の問いを全体で共有し、その考えについてグループで質問をしたり、質問に答えたりする学びを大切にします。このような教師の支援が、棒グラフの目盛りの大きさに着目しながら、学校のみんなにけがに注意してもらうためのポスターにはどのような棒グラフがいいか考察していく児童の姿につながりました。

  • ②互いの考えを比較して話し合う

    互いの考えを比較して話し合う。画像

    けがへの注意を喚起するポスターにふさわしい棒グラフの表し方について個人で考えたり、友達と考えたり、学び方を選択して考察する場面です。教師は、互いの考えを比べたいという児童の意欲の高まりに応じて交流の場を設定します。その際、挙手で互いにどんな考えを持っているのかを可視化し、自分の考えと比べて聴きたい友達を探すことができるように学びをファシリテートします。このような教師の支援が、けがを減らしたいという目的に合った棒グラフにするためにはどのように表すとよいのかについて互いの考えを比較・検討しながら、自らの考えを構築していこうとする主体的・対話的に学ぶ児童の姿につながりました。

  • ③互いの考えを比較・検討する

    互いの考えを比較・検討する。画像

    個人で考えを再構成する場面です。教師は、友達の考えを取り入れた部分は青で囲むように促し、自分の考えと友達の考えの関連がノートに見えるようにしていきます。また、再構成した考えについて根拠を明確にして、一人一人が説明したり、質問に答えたりしすることができるように、グループや全体の学びをファシリテートします。その際、グループの状況に応じて考えの根拠について問い返していきます。このような教師の支援が、学びの変容を自覚しながら、自らの考えの根拠を明確にして目的に応じた棒グラフの表し方について理解を深めていく児童の姿につながりました。

  • ④学びのよさを自覚する

    学びのよさを自覚する。画像

    学習をまとめ、振り返る場面です。教師は、本時に学んだ棒グラフの目盛りに着目して考える数学的な見方・考え方を活用することができる適用問題を用意しました。また、学びを振り返る場面では、教科内容と学び方を関連付けて、自らの考えの深まった要因や場面について価値付けていきます。このような教師の支援が、「僕は最初に、1目盛りは1だと考えていたけれど、友達と互いの考えの理由について話し合うことで考えが変わりました。1目盛りの取り方によって、同じことでも棒グラフに表したときに大きさの見え方が違うことが分かりました。」や「次の時間に棒グラフで表すときには、私が選んだ場面の目的を考えると、1目盛りを小さい数にした方が表す項目が目立つからいいのかなと考えています。」という振り返りからも分析できるように、自らの学びの変容を自覚し、本時の学習で学んだ数学的な見方・考え方を今後の学習や生活に活用していこうとする深い学びにつながりました。

報告者:研修協力員  稲岡