アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:彦根市立金城小学校
教科等:4年算数科(平成28年6月)
単元名:およその数の表し方を考えよう(がい数の表し方)

課題解決に向けて、考えを練り上げる力を育成したい

  • 粘り強く取り組む
  • 互いの考えを比較する
  • 思考して問い続ける

実践の背景

  • 学校教育目標「郷土を愛し世界と未来に目を向け心豊かにたくましく生きる子どもの育成」に向け、目指す子供の姿を「3つの力『気力:やりぬく力・学力:考える力・体力:きたえる力』と3つの心『自立心・共生心・公共心』」と整理し、その実現に向けて全教員で取り組んでいます。
  • 教員が、全ての学年で学ぶ内容や発達段階にあった学び方を知った上で授業を構想できるようになることが、6年間を通じた資質・能力の育成に必要であると考え、担当学年等を縦割りにした研究グループを組んで、指導案検討会や授業協議会等を行っています。

授業改善のアプローチ

  • 前時の問題と本時で扱う問題との違いを考えることで、本時に達成したいめあてを児童が設定・共有することを目指しました。
  • 友達がかいた図や立てた式についてどのように考えたのかを問うたり、学習内容の理解が遅い等の困難を示す児童の考えを取り上げて学級全体で問いを共有することで、互いの考えを比較・検討し、考えを練り上げてよりよい解法や表現に洗練させていったり、その解法や表現のよさを味わったりすることができるようになることを目指しました。
  • 授業冒頭部に共有しためあてに対するまとめを児童が考える場面を設定し、児童自身が最後まで思考し続け、理解がより深まることを目指しました。

単元づくりのポイント

目標

  • 概数を用いることのよさに気づき、生活や学習で概数や四則計算の見積もりを用いようとする。
    【算数への関心・意欲・態度】
  • 概数を用いる場合や概数にする方法、概算の仕方について、その目的に応じて考え、判断することができる。
    【数学的な考え方】
  • 目的に応じた方法で、概数にしたり、四則計算を概数で見積もったりすることができる。
    【数量や図形についての技能】
  • 概数の意味や概数にする方法、概算の仕方について理解する。
    【数量や図形についての知識・理解】

展開

第1次

およその数の表し方:5時間

  • 「がい数」の用語とその意味、数値を概数にして表すよさを理解する。
  • 数直線をもとに、四捨五入の意味とその方法を理解する。
  • 「上から何桁」等で表す概数の意味を理解する。
  • 用語「以上」「以下」「未満」の意味を理解し、「概数で表された数の範囲」を数直線を用いて考え説明する。
  • 用語「未満」と「以下」の違いを理解し、与えられた範囲に合った数を求める。
第2次

がい数を使った計算:2時間

  • 大きな整数の和や差を概数を用いて計算し、見積もる。
  • 大きな整数の積や商を概数を用いて計算し、見積もる。
第3次

がい数の使い方:3時間

  • 概数を用いて資料を棒グラフに表す。
  • 代金の合計について考える場面において、目的に応じて切り上げや切り捨てなどの適切な処理の仕方を考える。【本時】
第4次

単元のまとめ:1時間

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

  • 目的に応じて、適切な見積もりの方法を考え、多めの見積もりが必要となる場面があることを理解することができる。

授業場面より

  • ①問題場面を把握し、本時のめあてを立てる

    問題場面を把握し、本時のめあてを立てる画像

    児童は、買い物で代金の合計を考える場面で、3つの商品を買う時、いくらあれば足りるのかを見積もる問題について考えます。問題文を読み、前時で考えた問題との違いを考えます。違いを考えることで、問題場面を把握すると同時に、本時に達成を目指すめあてを児童が設定し、共有することをねらっています。教師のコーディネートにより、児童は言葉をつなぎながら「足りるように見積もる方法を考えよう」をめあてとして設定しました。さらに、「レジでお金が足りないと困るから、今日の答えは、全部の商品の代金の合計より、大きくなるはずだ」と答えの見当を付ける発言も児童から出てきました。

  • ②問題の解決に取り組む

    問題の解決に取り組む画像

    問題の解決を目指します。これまでの授業で使ったノートや前時までの学習の内容がまとめられた教室壁面の掲示物を見ながら、自分の考えをノートに記述していきます(①)。教師は、児童の学びを机列表を用いて丁寧に見取り、特徴的な考え方を捉え、対話によって考えが深まっていくよう全体検討の計画を練ります。全体で検討したい考え(誤った考えに基づいた立式、正しい考えに基づいた立式)を持っている児童には、ホワイトボードを渡し、考えた式を書くよう促しました(②)。③のように少人数で質問し合う姿も見られました。この対話を通して、自分で考えた答えが「商品の代金の合計より大きくなる」という見当に当てはまらないことに気付き、粘り強く考える続ける児童もいました。

  • ③全体で考えを比較・検討する

    全体で考えを比較・検討する画像

    ホワイトボードに書かれた式を見て、式を書いた友達がどのように考えたのか、それが「足りるように見積もる」という本時の目的に合っているのかということについて全員で検討します。始めに四捨五入で処理した数を用いた式について検討し(④)、次に切り上げで処理した数を用いた式について検討しました(⑤)。児童は④のように言葉をつなぎ、補いながら考えを確かなものにしていきます。⑤では、切り上げで処理した数を用いて答えを多めに見積もった式を2つ取り上げ、その共通点を考えるよう全体に促しました。さらに、④で検討した式と⑤で検討した式の相違点を考える発問をしました。比べて考えることよう繰り返し促したことで、児童は「四捨五入では本当の金額より少なくなることがあるから、今日の問題には合わない」等、本時のめあての達成に迫る気付きを得ることができました。

  • ④本時のまとめをする(グループ→全体)

    本時のまとめをする(グループ→全体)画像

    本時のめあてに対するまとめをします。まとめの書き出し「足りるように見積もる場面では」を教師が示し、それに続くようにグループでまとめの文を考えます。全体検討では発言の機会がなかった児童も含め、全員が自分の言葉で表現する機会を確保することが、この活動のねらいの一つです。グループにすることで「今日は多めに考える場面だから切り上げを使う」「昨日と違って、切り捨てだとお金が足りなくなるからだめ」という対話が生まれました。全体検討での思考をたどり直したり、前時の学習と関連づけて考えたりすることで、日常の事象を数理的に捉え、数学的に処理し問題を解決することができた児童の姿です。本時の最後に全グループの考えたまとめを黒板に並べ、キーワード(切り上げ)を全体で確認した後、振り返りを行いました。「始めは四捨五入で考えたけど、みんなで考えたら少なくなるからだめだと気付いた。それで、切り上げて多くすることが分かった。」と、対話を通して考えが練り上げられたことにより本時のめあての達成に迫ることができたという手応えを感じることができました。

報告者:研修協力員  平中