アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:彦根市立金城小学校
教科等:5年算数(平成29年11月)
単元名:比べ方を考えよう(割合)

様々な考えについて根拠を明らかにしてその真偽を問い、考える力(批判的思考力)の育成を目指したい

  • 粘り強く取り組む
  • 多様な手段で説明する
  • 思考して問い続ける

実践の背景

  • 学校教育目標「郷土を愛し世界と未来に目を向け心豊かにたくましく生きる子どもの育成」に向け、目指す子供の姿を「3つの力(気力:やりぬく力、学力:考える力、体力:きたえる力)と3つの心(自立心・共生心・公共心)」と整理し、その実現に全教員で取り組んでいます。
  • 今年度は、「批判的思考力の育成」を重点課題とし、それにつながる段階として、低学年では「根拠を基に説明する力」、中学年では「比較、関連づける力」の育成を目指すことと整理し、実践を積んでいます。
  • 教員が、他の学年の学ぶ内容や学び方を知ったうえで授業を構想できるようになることが、6年間を通じた資質・能力の育成に必要であると考え、担当学年等を縦割りにした研究グループを組んで、指導案検討会や授業協議会等を行っています。

授業改善のアプローチ

  • 低学年時から、問題場面を図に表し、立式したり説明したりする活動を大切にしてきました。本単元で用いる数直線図は、小数の乗法・除法の学習においても扱っています。乗法・除法の数直線には、①計算する仕方を考え、説明するための機能 ②演算決定の根拠としての機能 ③計算の意味を拡張する機能 ④積や商の見積もりや確かめをする機能 といった機能があります。そのうち、特に②に注目し、根拠を基に立式したり、立式の根拠について説明したりする活動を重視したいと考えました。
  • 上記により、例えば「比べる量=もとにする量×割合」といった公式のようなものを暗記して答えを求めるのではなく、問題場面を捉えながらその意味を考えて立式し、答えを求められるようになることを目指しました。
  • 「わからない」という思いを素直に表出して共有し、共に解決を目指す学習集団づくりを目指しました。友達の感じている困難さに目を向け、友達のつまずきや誤答から学ぶことを大切にしてきました。

単元づくりのポイント

目標

  • 割合、百分率の意味を理解し、それらを用いることができる。
  • 割合、百分率のよさに気づき、生活の様々な場面で用いられていることに気づき、それらを活用しようとする。
    【算数への関心・意欲・態度】
  • 割合、比べる量、もとにする量の関係をもとに、問題解決の方法を考えることができる。
    【数学的な考え方】
  • 比べる量、もとにする量から割合を求めることができ、求めた割合を整数や小数のほかに、百分率で表すことができる。
    【数量や図形についての技能】
  • 問題場面から数量関係を読み取り、比べる量やもとにする量を求めることができる。
    【数量や図形についての技能】
  • 割合や百分率の意味や求め方がわかる。
    【数量や図形についての知識・理解】
  • 百分率」、「パーセント(%)」の用語、記号とその表し方がわかる。
    【数量や図形についての知識・理解】

展開

  • 比べ方を考えよう(割合) 全11時間

①2量を比較するとき、全体と部分の関係を捉え、既習事項を生かして比べ方を考える。

②割合の意味や求め方を理解し、割合を小数で求める。

③割合、比較量、基準量の関係を基に、比較量の求め方を考える。

④割合、比較量、基準量の関係を基に、基準量の求め方を考える。

⑤「パーセント(%)」、「百分率」の意味や用語を理解し、割合を百分率で表す。

⑥百分率の考え方を使って、比較量や基準量を求める方法を考える。

⑦比較量の割合がどれだけになるかを求めるなどして、基準量との割合から比較量を求める。(本時)

⑧比較量の割合がどれだけになるかを求めるなどして、比較量とその割合から基準量を求める。

⑨歩合の意味とその表し方を理解し、割合を歩合で表す。

⑩まとめの問題を解き、理解度を確認する。

⑪単元末確認テストで、各自の習熟度を確認する。

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

「~%引き」の意味を考えて、基準量と比較量を適切に選択して図に整理し、立式して比較量を求めることができる。

授業場面より

  • ①課題を把握し、見通しを持つ

    課題を把握し、見通しを持つ画像

    前時に児童は、定価2000円の70%の代金はいくらかを求める課題について考えました。本時は、定価4000円の30%引きの代金について考えます。
      提示された問題文を読み、「昨日とほぼ同じだ。」「ちょっと違うところがある。」など、児童は口々につぶやきます。定価、代金などの言葉の意味を確認した後、教師は昨日と何が違うか、問いかけました。「今日は『引き』になっている」という違いが共有されたことにより、本時の課題に対する意識が明確になってきました。ここで教師は「では、めあてはどうしますか。」と投げかけます。前時の課題との違いを捉え、子供同士で言葉をつなげながら、めあてを立てていきました。これにより、「『引き』に注意しながら、代金を求める」という本時のゴールとプロセスの見通しを持つことにつながりました。

  • ②自分の考えを持つ

    自分の考えを持つ画像

    見通しを持った児童は、まずは一人で考えます。問題文の中にある情報の中で、もとにする量、比べる量、割合を表すものがどれなのか確認しながら、それぞれの関係を数直線図上に表し、それをもとに立式していきます。
      30%引きが定価の70%と同じであることに気づき、「4000×0.7」と立式し、2800円と正しい答えを導き出すことができた児童がいる一方、「4000×0.3=1200 答え1200円」とする児童もいました。しかし、「安すぎる。何かおかしい。」と自分の考えに対して疑問を抱き、互いの考えや疑問点の交流が始まっていきます。
      教師は机間を周りながら児童の学びについて観察し、次の全体での検討で取り上げたい考えを持つ児童に、その考えた図や式をホワイトボードにかくよう促すなど、指名計画を立てます。同時に、図がかけない等、基本的な部分で困り感を持っている児童に対して個別に支援を行います。しかし、自分の考えの真偽について考え始めている子供に対しては、その思考を妨げないよう、声をかけずに見守りました。

  • ③全体で検討を行う

    全体で検討を行う画像

    全体で考えを検討する場面です。自分の考えに対してすっきりしない思いを持っている子供は、解決したいという切実感を持ってこの時間に臨みます。
      始めに教師は、4000×0.3=1200を表す図と式がかかれたホワイトボードを提示し、子供が説明をしました。しかし、「その式だけじゃだめ。」「だって安すぎる。」という声が噴出します。そこで教師が「どういうこと?」と問いかけると、「1200は30%の値段。まだ『引き』ができていない。」という発言がありました。これを聞いて、「そういうことか」とつぶやく等、納得が広がりました。そこで4000-1200=2800という式が付け加えられ、正答が出ました。
      次に教師は、ホワイトボードに書かれた4000×0.7=2800という式を提示します。子供の間に「どういうこと?」という疑問が広がります。教師は少し黙り、考える時間をとりました。指名を受けた子供が説明を試みますが、うまく表現できません。他の子供が「大丈夫、できる!」と励ます、不十分な部分を補う、リレーのように発言を繋いでいくなどしながら、30%引きはつまり定価の70%であるということについて、図を使ったり簡単な数字に置き換えたりして、納得いくまで説明が続きました。

  • ④学習のまとめと振り返り

    学習のまとめと振り返り画像

    各グループで今日の学習についてホワイトボードにまとめます。細かな部分の表現は違いますが、グループ内で相談したり確認したりしながら、「~%引き」のときの比べる量の求め方を考えるという本時のめあてに対して、全体検討で出た2つの考えの特徴をまとめていきました。ホワイトボードを黒板に並べ、「共通点は『引く』こと、どのタイミングで何から何を引くかということが違う」ということが確認され、各グループのホワイトボードの記述を改めて確認しました。
      最後に振り返りです。振り返りの視点として、「実際の買い物の時に同じような場面があれば、どちらの考えを使うか。それはなぜか。」と示されました。全体検討で初めに出た考えをA、後から出た考えをBとして振り返りを記述していきます。「Bを使う。始めはAの考えだったけれど、○○くんからBの考えを聞いていいな、と思った。一回で代金が分かるから。」「Aを使う。順番に考えた方が私には分かりやすい。」という言葉からは、それぞれの考えのよさについて改めて捉えなおし、実生活において活用しやすい自分に合った考えを選んでいることがわかります。

報告者:研修協力員  平中