アクティブ・ラーニング研修実践事例

岡山市立岡山後楽館高等学校(平成28年11月)

ユニット(小集団)研修で機動力を持った授業研究

中学校や高等学校では、全教職員が一堂に会する校内研究会は、各種条件のすりあわせが困難で、日程が取りにくい現状があります。これらを改善をするために、考え出した方法が「ユニット研修」です。この方法で相互授業参観を行い、授業改善につなげます。

Ⅰ  実施背景と目的

  • 実践校は、併設型中高一貫教育校で、高等部は単位制総合学科として開設されています。平成 27、28年度に、国立教育政策研究所の指定を受け「論理的思考力の育成」を目指して研究をしてきました。この研究を進めていく中で、単位制で7校時の授業を実施する学校のために、全教職員が一堂に会しての校内研究会がなかなか実施しにくいという問題が生じました。
  • 「全教員が集まる」ことが難しいなら、「集まらない方法」で研究を進めることができないかと考え「ユニット研修」を計画し導入しました。このユニットとは、教員3人を1ユニットとしたチームを組んだものです。全教員が集まって行っていた授業研究会の一部をユニットごとの研究会に置き換えることにより、無理なく機動力を持った研究を行うことができるようになりました。

Ⅱ  主な流れと時間配分(各ユニットごとに、時間をずらして行う)

  1. 授業参観(50分)通常の授業の枠内に行う
    • 授業参観シートをもとに、相互参観し記録に残す。
  2. 協議(50分)通常の授業の枠内に行う
    • 記録された授業参観シートをもとに、3名で協議する。
    • 協議の視点は、研究テーマの「論理的思考の6プラス1」他(参考資料参照)

準備物:授業参観シート、グループ掲示用クリアファイル

Ⅲ  事例のポイント

1  ユニットの構成と活動期間

  • ユニットは3名の教員を基本に構成します。この時のメンバー構成は、異教科、異年齢になるよう配慮しました。これは、専門外の目から見えることを伝えることにより、多角的な視点で話合うことや、少人数になることで、若手も含めて議論を活性化させるねらいがあります。
  • 6月、11月に重点活動月間を設定し、その期間にユニット研修による授業研究会を実施することとしました。この設定は、行事等の関係から、授業研究に最も時間を費やせる時期で、計画的にユニット研修を組みやすいからです。

2  授業研究会の取り組みの工夫

  • 授業研究会は、まずユニットメンバー内で相互に授業を参観します。メンバーが空き時間を共有する自分以外2人なので、時間割変更等の負担も少なく、通常の授業を参観し合います。
  • 授業者は、簡単に授業の流れとポイントのみを伝えます。参観者は、授業参観シートをもとに授業の様子をメモします。
  • 授業後に行われる協議でも、記入された授業参観シートを使います。この協議の時間設定も、ユニットメンバー3名の空き時間が揃った時に行い、時間の捻出を無理なく行います。(必ずしも連続で行うわけではありません。)
  • これらを通常の日課の中で行うことで、特別に時間を設定することが必要なくなり、授業研究を無理なく進めることができ、授業研究の回数が増え、研究が進みます。
  • 校内研究のテーマより、参観のポイントは、「各教科・科目の特性を生かし、『論理的に思考する過程での6つの活動+1』(以下「6プラス1」と記述)のいずれか、又は複数の活動を明確に位置づけられているか」とし、「6プラス1」を取り入れた授業を行うことで、論理的な思考力を育成するとともに、知識や技能の習得に生かせるようにしました。

3  各ユニット間の成果交流の工夫

  • 使用後の参観シートは、職員室近くの全員が目につく場所にクリアファイルを用いて掲示しています。クリアファイルにすることで中味が見え、全教員が集まらず各ユニットの研究の成果の共有がすぐにできるので、それぞれのユニットの研究も底上げされます。
  • クリアファイルでの共有とは別に、ユニットリーダーは報告書をまとめます。それを授業提案の教科毎に教科会で共有し、その内容をAL推進センター(校務分掌の一つ)に集約することで、成果と課題をまとめることができます。また、まとめられた成果と課題は、教科会、各ユニットに整理・分析した情報として伝えるようにしています。

Ⅳ  成果

  • ユニット研修では、1回の研究のサイクルが、授業内の2単位時間で完結するので、繰り返し、何度もユニットによる授業研究を行うことができ、授業改善の加速につながりました。
  • 各ユニットの授業研究の回数が進むにつれ、職員室内でもユニット間やユニットを越えた関係で、授業改善の工夫についての交流や議論も増え、主体的に授業の質を高めようとする意識の変容につながっています。
  • ユニットは、校内や校務分掌内の課題の発見や解決に向けて、少人数で話し合う単位として活用が期待できます。

Ⅴ  参考資料

報告者:研修協力員  山田