アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:岐阜大学教育学部附属小学校
教科等:5年音楽科(平成28年6月)
題材名:世界の音楽 こんにちは

自ら創造的に音楽にかかわる力を育成したい

  • 見通しを持つ
  • 思考を表現に置き換える
  • 新たなものを創り上げる

実践の背景

  • 実践校は、創設以来「人間教育」を教育理念とし、理想の全人格教育を目指して、多様な子どもの関わりの中で育てています。
  • 学校の教育目標を「なかまのしあわせのために、よく考え、助け合い、つくりだす、心身ともに健康な子どもの育成」とし、「自分の頭で考える子ども(自主性)、あたたかい胸で助け合う子ども(社会性)、じょうぶな手足でつくりだす子ども(創造性)」を願う児童の姿として描いています。
  • 研究主題を「仲間と共に、新しい価値を創り出す児童の育成~主体的・協働的な学びと自己の学びを省察する児童~」としています。

授業改善のアプローチ

児童が自ら創造的に音楽にかかわることができるように

  • モチーフを工夫するポイントを明らかにしながら、旋律づくりに対して見通しをもてるようにします。
  • 音階の違いを聴き取り、多様な考えが出し合える教材設計を行います。
  • 旋律の動きを、言葉や文字などで表して目に見える形にしていきます。

題材づくりのポイント

目標

【関心・意欲・態度】

音階の違いによって、曲の雰囲気が変わることに興味・関心をもちながら、歌ったり聴いたりする学習に主体的に取り組もうとする。

【音楽表現の創意工夫】

旋律の上がり下がりやリズムの特徴を聴き取り、その働きによって生まれるよさや面白さを感じ取りながら、反復や変化などの仕組みを生かし、どのように音階の音を使い、まとまりのある旋律をつくるかについて考えや願い、意図、見通しをもつことができる。

【音楽表現の技能】

音階の音を使い、反復や変化などの仕組みを生かし、見通しをもってまとまりのある旋律をつくることができる。

【鑑賞の能力】

世界の国々の音楽の音階の違いを聴き取り、それぞれの音階によって醸し出される雰囲気の違いから、想像したことや感じ取ったことを言葉で表すなどして、世界の国々の音楽の特徴を理解して聴くことができる。

展開

第1時

日本の子守歌を異なる音階で歌い比べ、それぞれの雰囲気の違いを感じ取りながら音階に関心をもち、音楽に主体的に取り組もうとする。

第2時

茉莉花(中国)、ガムラン「カンデ」(インドネシア)、ラーガ「タラナ」(インド)の鑑賞を通して、それぞれのよさを味わい感じ取ったことを言葉で表現し、その特徴を捉える。

第3時

旋律づくりに向けて、選んだ国の音階の音を使って、グループごとでその国のあいさつとなる言葉(ニーハオ、スラマッパギ、ナマステ)を当てはめたモチーフをつくる。

第4時

音階による雰囲気の違いを感じ取りながら、反復や変化などの仕組みを生かし、旋律の動きを工夫してまとまりのある旋律をつくる。(本時)

第5時

岐阜大学留学生センターの留学生の方からのアドバイスや他グループの作品を参考に、旋律を見直し、さらに工夫をする。

第6時

発表会を通して、音の選び方や並べ方の違いによって様々な音楽が生まれる面白さや、それぞれの国の文化のよさを味わう。

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

音階による雰囲気の違いを感じ取りながら、反復や変化などの仕組みを生かし、旋律の動きを工夫してまとまりのある旋律をつくることができる。

授業場面より

  • ①本時を見通す

    本時を見通す画像

    「明るい雰囲気が出ている」と感じ方を言葉で表す児童、「うーん」と腕組みをして考え込む児童、「インドらしくない」と自分のグループでの取組と比較する児童・・・。
      「ナマステ(ドレ♭ファソ)・ナマステ(ドレ♭ファソ)・ナマステ(ドレ♭ファソ)・ナマステ(ミファラ♭シ)」と、旋律をずらした教師の示範を聴いて、本時の旋律づくりに向けて、思いを巡らし始めています。
      その他、教師の提示をもとに、反復する、反対にする、上げ下げするなどといった工夫の仕方を確かめます。

  • ②イメージに合った表現を探る

    イメージに合った表現を探る画像

    「ニーハオ、ニーハオ」木琴で音を、手拍子でリズムを取りながら、旋律の動きを考えています。
      「こんな風に、もう1回繰り返した方が明るい感じがするよ。」などと、代わる代わる違うグループの仲間とも様々な表現を出し合いながら、よりイメージに合った表現を探っていきます。
      このように、自分のグループでは気付かなかった工夫を他グループと交流しながら積極的に試していくことで、工夫や感じ方が広がっていきます。

  • ③旋律の動きを可視化する
     

    旋律の動きを可視化する画像

    「同じモチーフを2回続けて、その次に上げてみると、インドらしさがでるんじゃないかな。」と、実際に音を出しながら感じたことを、仲間と共有していきます。その際に、言葉で伝え合うこととあわせて、旋律の動きをホワイトボードを活用して可視化しています。このことによって、旋律の動きに対してどのような工夫を施してどのような雰囲気を醸し出しているのかを見て取ることができます。また、自分の考えを伝えることが容易になることと、グループ内での合意形成も進んでいきます。

  • ④試行錯誤を繰り返して、オリジナルの旋律をつくる

    試行錯誤を繰り返して、オリジナルの旋律をつくる画像

    「最初は、暗くてインドネシアっぽくないと思っていたけど、旋律をだんだん上げて試してみると、楽しく明るい旋律になって、インドネシアっぽい響きがいいと思いました。」
      このように1~3の学びを通して、試行錯誤を繰り返しながら、仲間と旋律づくりに取り組みます。そこには、音階による雰囲気を味わいながら、反復と変化という工夫を加えることで、違った表現になることを楽しんだりしている、いわゆる、仕組みを考えて音から旋律へと構成するという学びがあります。

報告者:研修協力員  各務