アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:大田区立矢口小学校
教科等:2年生活科(平成29年2月)
単元名:ひらめき あそびパーティー

身近な物から工夫しておもちゃを作ったり、遊びを考えたりしながら、自分の思いや気付いたことを表現していく力を育成したい

  • 振り返って次へつなげる振り返って次へつなげる
  • 多様な手段で説明する多様な手段で説明する
  • 思考して問い続ける思考して問い続ける

実践の背景

  • 実践校は、教職経験の浅い教員が多いため、組織的な校内研修体制を構築し、授業研究を中心とした校内研修システムの中で、「全員で学習指導案の検討する」、「子供の学ぶ姿を基に授業を分析する研究協議会」、「研究協議会での協議内容を生かし、授業を再構築する」等を繰り返し行うことを通して、指導力の向上を図り、日々の授業改善につなげている学校です。
  • 日常的に授業研究会を公開し、参観者も研究協議会に参加できる体制をつくっています。 
  • 児童が『自ら課題をつかむ授業』を通して、「課題を発見していく力」、「見通しを持って、自ら考えていくことができる力」、「学んだことを振り返ることができる力」の育成を目指しています。

授業改善のアプローチ

  • 本単元は、身近な物(紙、ストロー、割りばし、ペットボトル、食品トレイ等)からおもちゃをつくったり、遊びを考えたりする活動を通して、自分が考えたことや、気付いたことを言葉や掲示物で伝えたり、交流し合いながら表現していく力を育成していくことを目指し構成しました。
  • 本時は自分が考えた遊びを発表する「ひらめきあそびパーティー」を開催し、他学級の友達に伝えて一緒に遊びながら、気付きを交流し合う内容です。課題意識をもって学習に臨めるように、作ったおもちゃを紹介する側のめあてと一緒に遊ぶ側のめあてをそれぞれ立てました。
  • 作ったおもちゃ紹介する時には、おもちゃを作る過程で「自分で気付いたこと」、「友達の助言で気付いたこと」、「工夫したこと」を視点にし、順序立てて説明ができるようにしました。
  • おもちゃで遊ぶ時間を多く設定し、遊びを通して、自分では気付かなかった新たな気付きや、工夫したことを実感してもらえたことへの満足感が得られるようにしました。
  • 終末では「自分について」、「遊びの仕方について」、「友達について」振り返ることができるようにしました。このような視点を定め、振り返ることで、様々な視点から遊びを捉え、自分の気付きの質を高めていくことにつなげていきました。

単元づくりのポイント

目標

  • 学習経験や生活経験を生かして、身近な自然や物を利用した遊びや、遊びに使う物を作ることを楽しもうとする。
    【生活への関心・意欲・態度】
  • 身近な自然や物を利用して遊びを考えたり、遊びに使う物を自分なりに工夫したりして、それを素直に表現することができる。
    【活動や体験についての思考・表現】
  • 遊びや遊びに使う物を作る面白さ、自然の不思議さ、みんなで遊ぶ楽しさに気付くことができる。
    【身近な環境や自分についての気付き】

展開

第1次
1〜2時

身近にある物に触れ合って遊んだり、遊びに使う物を作ったりする。

3時

前時までに考えた遊びや、自分で作った遊びに使う物を、友達と伝え合ったり教え合ったりしながら、一緒に遊ぶ。

第2次
4時

前時までを振り返り、学習計画をつくり、これからやりたいことの見通しをもつ。

5〜7時

材料に触れながら、自ら課題を見付け、遊びや遊びたい物を作る。

8時

遊ぶ場所や、遊びの約束、ルールなどを考えて遊びをつくる。

第3次
9時

他学級の「遊びパーティー」に参加し、友達のつくったおもちゃや遊びのよさを伝える。【一緒に遊ぶ側の学級の本時】

10〜13時

遊びを工夫したことや友達の関わって遊んだことを振り返り、気付いたことを言葉や図で表現する。

14〜15時

遊びを工夫したことや、友達と関わって遊んだことを振り返り、発表練習を通して、自分なりに表現する。

16時

遊びを工夫したことや、これまでの学習で気付いたことを発表し、友達と一緒に遊ぶ。 【遊びを発表する側の本時】

17時

単元の学習を振り返る。

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

  • 遊びを工夫したことや、これまでの学習での気付きを自分なりに表現することができる。
  • 友達と関わって遊ぶ楽しさや、友達のつくったおもちゃや遊びの工夫のよさや、自分との違いに気付くことができる。

授業場面より

  • ①本時の見通しをもつ

    本時の見通しをもつ画像

    導入の様子です。教師は、本時の位置付けについて、児童が分かるよう掲示物を活用し、これまでの学びを振り返り、(1)作ったおもちゃを使って、「いっしょに楽しくあそぼう」とめあてを示します。(2)ここで、「楽しく遊ぶ」について、児童の活動の見通しがはっきりと持てるよう、おもちゃを紹介する側のめあて、「自分のひらめきを分かりやすくつたえる」(3)、一緒に遊ぶ側のめあて「友だちのひらめきのよいところを見つける」(4)をそれぞれ示しました。このことが、一緒に遊びながら、自分の言葉でおもちゃの工夫などを伝えたり、遊びを通して気付いたことを伝えたりする児童の姿につながっていきました。

  • ②自分の気付きや遊びの工夫を発表する

    自分の気付きや遊びの工夫を発表する画像

    おもちゃを作った過程で得た気付きや遊び方の工夫について、発表している場面です。教師は、どんなことから気付きを得たのかはっきり伝えることができるように、「自分で」、「友達から」、「おもちゃを繰り返し作り直すこと」で気付いた点を中心に発表するように働きかけました。ゼリーカップ、輪ゴム等の材料を使い、射的を作ったこの児童は、「おもちゃを繰り返し作り直すことで、輪ゴムを二重にすると遠くまで飛ぶことが分かった。」、「同じグループの友達と射的で遊ぶことで輪ゴムの太さも太いゴムほど遠くに飛ぶことも分かった。」と、繰り返し作り直すことやや友達との遊びを通して得られたゴムの重ね方や太さという理科の学習につながる質の高い気付きを伝えることができました。

  • ③遊びを通して気付きを交流する

    遊びを通して気付きを交流する画像

    作ったおもちゃで共に遊びながら、気付きを交流し合っている様子です。教師は、紹介する方も一緒に遊ぶ方も様々な気付きが得られるよう、一緒に遊ぶ方はローテーションで、複数のグループを回れるようにしました。また、遊びの工夫やおもちゃの工夫に目を向けるよう助言しました。射的で遊んでいるグループでは、片手で的をねらって遊んでいた児童(1)を見て、「片手だとグラグラして的に当たらない。両手で持った方が安定して,遠くに飛ばせるのでは」と別の児童が、より楽しく遊べる方法を考えていきます。(2)おもちゃを作った児童も実際に試し、「本当だ。しっかり的をねらえる」と納得し、新たな遊びの工夫に気付き、(3)的までの距離を変えながらより楽しく遊ぶ姿につながっていきました。

  • ④本時の学習を振り返る

    本時の学習を振り返る画像

    本時の学習を振り返る場面です。教師は、遊びを紹介した方は、「自分たちが気付かなかった新たな発見についてや分かってもらって嬉しかったこと」、遊びを紹介された方は、「次時以降、自分が取り入れていきたいこと」と、それぞれに振り返りの視点を提示し、学んだことを自覚できるようにしました。これにより、射的で遊んだ児童は、
      「射的でA君が、両手で持って発射するやり方を見付けていた。両手で発射したら、まっすぐ遠くに飛んだ。」(1)と新たな気付きにより、遊びが発展したことの満足感を発表することができました。また、風の勢いで進むボートで遊んだ別の児童は、、「息を吹きかけて水の上をボートがよく進むために、ボートを軽くしていた。ぼくも取り入れたい」(2)と、一緒に遊ぶことを通して見付けた新たな発見や自分自身に取り入れていきたいことを考えていくことができました。このことは、遊びを通して、自分の思いや願いを実現していく姿と考えることができます。

報告者:研修協力員  佐藤