アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:由利本荘市立西目小学校
教科等:5年算数科(平成27年11月)
単元名:こんでいるのはどっちかな(単位量あたりの大きさ)
目的に応じて大きさを比べたり表現したりする力を育成したい
振り返って次へつなげる
互いの考えを比較する
知識・技能を活用する
実践の背景
- 実践校は、学校教育目標を「ふるさとに学び、自分の生き方を真剣に考える子どもの育成」としてふるさと西目に学び、西目らしさの薫る体験的な学習活動や問題解決的な学習活動を重視し、研究主題は「学びの自立を目指して」としています。また、コミュニティ・スクールとして、地域とともに学校づくりを進めています。
- 開発実践フィールド校として、全職員でアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善に取り組む過程を、県教育委員会・市教育委員会・県総合教育センターと連携し、推進地域に公開をしながら進めています。
- 子供自身が課題を発見し、解決し、発信していく単元構想の中で、どのように事象とかかわり、他者とかかわり、最終的に子供自身が自己の高まりとして手応えを得るのか、継続した見取りと教師の出番の在り方を問いながら、子供の学び続ける意欲が醸成されることを「学びの自立」と捉え研究を推進しています。
授業改善のアプローチ
単位量当たりの大きさを用いた考え方は、人口密度や速さなど、日常の生活に結びついています。本単元では、問題場面を解決をするにあたって、数値や式の意味を明らかにしながら筋道立てて説明する場を設定し、考えの根拠を大切にしながら、分かりやすく表現する力を伸ばしていくことができるようにしました。
本時では、これまで学んできた公倍数の考えを用いて混み具合を比べる考え方も取り上げます。その上で、単位量あたりの大きさの考え方を使って比べる方法が能率的であることを、実感を伴って捉えることができるようにしていきます。単元を通して、異種の二つの量の割合として捉えられる数量の関係に着目し、目的に応じて大きさを比べたり表現したりする方法を考察し、それらを今後の学習や生活に生かしていくことを目指して授業を構築しました。
単元づくりのポイント
目標
- 単位量当たりの大きさを用いると、異種の2量の割合としてとらえられる数量を数値化して表せたり能率的に比べられたりすることのよさに気付き、生活や学習に生かそうとする。
【算数への関心・意欲・態度】 - 異種の2量の割合としてとらえられる数量について、単位量当たりの大きさで比べることの有用性をとらえ、用いることができる。
【数学的な考え方】 - 異種の2量の割合としてとらえられる数量を単位量当たりの大きさを用いて比べることができる。
【数量や図形についての技能】 - 異種の2量の割合としてとらえられる数量を単位量当たりの大きさを用いて比べることの意味や比べ方について理解する。
【数量や図形についての知識・理解】
展開
- 1
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面積、匹数が異なる場合の混み具合の比べ方について、公倍数の考えや単位量当たりの大きさの考えを用いて、混み具合の比べ方を考える。(本時)
- 2
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面積、匹数が異なる場合の混み具合の比べ方について、面積をそろえて1㎡当たりの匹数で比べたり、匹数をそろえて1匹当たりの面積で比べたりして、どちらの比べ方が分かりやすいか考える。
- 3
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いろいろな都道府県の人口の混み具合の比べ方について、単位量当たりの大きさの考えを用いて考え、「人口密度」の意味とその求め方を理解する。
- 4
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生活のいろいろな場面の中で、単位量当たりの大きさを用いて、問題を解決する。
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
面積、匹数が異なる場合の混み具合の比べ方を理解し、比べることができる。
授業場面より
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①問題解決の見通しを持つ
問題場面を把握し、問題の解決について見通しを持つ場面です。教師は、一見どれが一番混んでいるのか予想がしにくい図や表(うさぎ小屋の面積とうさぎの数)を提示し、比べ方に対する児童の意欲を高めていきます。教師は、表から3つのうさぎ小屋の中でも比べられる小屋があるのは、面積とうさぎの数のどちらかが同じだからであることに着目した児童の発言を全体で共有し、その考えについてグループで質問したり、質問に答えたりする学びを大切にします。このような教師の支援が、面積かうさぎの数のどちらかを同じにすると混み具合を比べられるのではないかという見通しをもって、問題場面について考察していく児童の姿につながりました。
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②学び方を選択して問題を解決する
面積もうさぎの数も異なる場面でどちらが混んでいるのかを比べるにはどうしたらよいのかについて考える場面です。教師は、個人で考えたり、必要に応じて互いに質問をしたり、質問に答えたりしながら問題の解決に向かうように促します。児童は、既習の最小公倍数の考え方を使って、面積かうさぎの数のどちらかの数値をそろえて考えたり、1m²当たりのうさぎの数や1匹当たりの面積に着目して考えようとしていきます。その際、教師は、「どのようにして比べたのか」と考え方を問うたり、面積をそろえて考えている児童には「なぜ30m²になるのか」など考えの根拠について問い返していきます。このような教師の支援が、混み具合の比べ方について考えの根拠を明確にし、対話を通して考えを構築していこうとする児童の姿につながりました。
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③互いの考えを比較・検討する
面積もうさぎの数も異なる場面でどちらが混んでいるか比べ方について互いの考えを比較・検討する場面です。教師は、ノートの記述を根拠にしながら互いの考えについて比較・検討する場面を設けます。その後、教師は全体で考えを比較・検討する場面で「Ⅰ項目の数値をそろえるために何をしたのか」「Ⅱどんな式になるのか」「Ⅲもとの表はどう変わったのか」について焦点化した話合いになるようにファシリテートしていきます。そして、Ⅰ~Ⅲについて児童の思考過程を黒板に可視化・構造化していきます。このような教師の支援が、互いの考えた数値の表す意味、式や答え、変化した表の意味について児童自身が問い返し、根拠を明らかにしながら、それぞれの考えを「公倍数を用いた考え方」「単位量当たりの大きさを用いた考え方」に整理・分類していく児童の学びにつながりました。
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④学びのよさを自覚する
学習をまとめ、振り返る場面です。教師は、本時の問題場面についての解決方法を「公倍数の考えを使ってどちらかの数字を同じにして比べる」「単位量当たりの大きさの考えを使って比べる」と児童と共にまとめました。その後、2つのうさぎ小屋の表を追加し、本時に児童が見つけた「公倍数の考え方」と「単位量当たりの考え方」を比較する視点をもつことができる適用問題を用意します。このような教師の支援が、「公倍数の考え方では、比べる数値が多くなった場合、公倍数を見つけるのは大変だということに気が付きました。これから、混み具合を比べるときには、単位量当たりの大きさを用いた考え方を使っていきたいです。」という児童の振り返りからも分析できるように、本時の学習で獲得した数学的な考え方を今後、活用していこうとする深い学びにつながりました。
報告者:研修協力員 稲岡