アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:鹿児島市立伊敷中学校
教科等:2年国語科(平成28年11月)
単元名:これからの動物園を企画しよう

自分の思いや考えを広げ深める力を育成したい

  • 自分と結び付ける
  • 多様な情報を収集する
  • 思考して問い続ける

実践の背景

  • 実践校は研究校としての使命を担い、時代の要請に応じた研究・実践を重ね、その成果等を多くの学校へ公開しています。
  • 「新しい時代を切り拓く資質・能力を身に付けた生徒の育成」という研究テーマのもと、教科横断的な視点から考えた学校で目指す資質・能力である「課題発見力」「情報活用力」「論理的思考力」「協働する力」「メタ認知」の育成に向け、生徒の学びに寄り添いながら授業改善に取り組んでいます。

授業改善のアプローチ

  • 問題解決的な学習において、試行錯誤する生徒の思考の流れを「気付き」「納得」「意志」というキーワードから予想することによって、思考を深化、拡張する支援を計画しました。
  • 自らの生活経験や既習事項から気付いた課題を他者と共に解決する学びを通して、納得を伴った理解に基づき、学んだことを今後の学習や生活に生かそうとする意志を育む授業を目指しました。
  • 生徒の深い理解に至った状態を「情報を多面的・多角的に精査し構造化する力を身に付けた状態」と捉え、目的に応じて文章や資料から必要な情報を取り出して整理・構成し、それらを表現する力を身に付けるために、多様な情報を多面的・多角的に精査し、構造化する学習過程を設計しています。
  • 自ら新たな情報を得たり、考えを比較したり、また他者に対して多面的・多角的に考えるきっかけを与えたり、気付きや新しい発想を促したりするために、質問を意識した対話を取り入れています。

単元づくりのポイント

目標

  • 「動物園でできること」について感想を持ち、交流して自分の考えに生かそうとする。
    【国語への関心・意欲・態度】
  • 文章全体と部分との関係、例示の効果を考え、内容の理解に役立てることができる。
    【読むことに関する指導事項】
  • 文章に表れているものの見方や考え方について、知識や体験と関連付け、自分の考えをもつことができる。
    【読むことに関する指導事項】
  • 多様な方法で選んだ本や文章などから適切な情報を得て、自分の考えをまとめることができる。
    【読むことに関する指導事項】
  • 抽象的な概念を表す語句、類義語と対義語、同音異義語や多義的な意味を表す語句などについて理科して読み、語感を磨き語彙を豊かにする。
    【伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項】

展開

1 導入(1時間)

学習課題「これからの動物園を企画しよう」を設定する。

  • 個人で書いた企画書を比較し、必要な学習事項を考える。
2 展開(5時間)

「動物園でできること」を読み取る。

  • 筆者の意見と提起されている課題を読み取る。
  • 筆者の意見に対する自分の考えをまとめる。
  • 文章中の事例の効果について自分の考えをまとめる。

企画書を作成する。(本時 4/5)

  • 情報を比較し、動物園が担う役割を考える。
  • 説得力のある企画書にするための、具体例を考える。
3 終末(1時間)

企画書を発表し、人間と動物の共生についての考えをまとめる。

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

  • 今日の動物園が抱える課題の解決を目指し、動物園が担う役割を踏まえて、新たな企画を提案する。

授業場面より

  • ①新たな企画を考えよう!

    新たな企画を考えよう!画像

    学習課題に対する、解決の見通しを持つ場面です。教師は、単元の導入場面で設定した「動物園の企画を考える」という課題を提示した後、教科書にある「動物園でできること」を通して、動物園が持つ4つの役割(「レクレーション」・「調査研究」・「教育」・「自然保護」)を読み取った前時の学習を振り返るよう促しました。生徒は、動物園がもつ役割を機能させるという視点から、新たな「企画」を考えようとしました。そして、筆者が考える4つの役割に注目し、改めて教科書の文章に向き合いながら、自分が最も重要視したいと考える役割を選ぼうとしました

  • ②動物園の現状は・・・

    動物園の現状は・・・画像

    多様な情報を基に自分の考えを形成する場面です。教師は、動物園の役割と今日的な課題の関連を捉えることができる4種類の資料を提示します。生徒は、自分の「企画」を立案するために必要だと思う部分に印を付しながら、情報を読み進めました。集めた情報を整理・分析することを通して、根拠や理由付けを問い直していく姿も見られ、考えが揺さぶられていることが分かりました。教科書の文章を読み直し、自分の考えと筆者の主張を比べたり、関係付けたりして考える姿も見られました。

  • ③来園者は増えるだろうか?

    来園者は増えるだろうか?画像

    個人で考えた企画をグループで検討する場面です。教師は、各グループが大事にしたい役割とその根拠を明確にした企画を考えられるよう、互いに質問しながら意見を交流するように促します。「(動物との)共生を図るために、自然の環境に近づける」という自然保護の役割を意識し提案した企画に、「来園者は増えるだろうか」という動物園の課題を踏まえた質問をする生徒がいました。このグループでは来場者数の推移を示した資料から根拠となる情報を読み取って吟味し、企画の妥当性に迫っていく姿が見られました。

  • ④私たちの企画を紹介します!

    私たちの企画を紹介します!画像

    グループで検討した企画を全体で共有し、学習を振り返る場面です。教師は、各グループの企画を紹介し合い、自分と他のグループの企画を比較・検討するように促します。生徒は、互いの企画が具体的な根拠に基づいているかという視点から意見の交流を行った後、自分の考えをまとめました。また、教材や資料から適切に情報を読み取ることで、動物園に求められる役割の優先順位やバランスを判断し、それぞれを関連付けたり、動物園の来園者や飼育委員の立場から考えたりしながら、自分の考えを形成できたことを実感していました

報告者:研修協力員  窪