アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:三次市立塩町中学校
教科等:2年外国語科(平成29年2月)
単元名:素敵な塩町中、動画で紹介 Program 9 「A Video Project」

伝える相手を意識し、日本や塩町中学校の特徴を英語で表現する力を伸ばしたい

  • 興味や関心を高める
  • 思考を表現に置き換える
  • 自分の考えを形成する

実践の背景

  • 全校生徒が約200人の連携型小中一貫教育実践校です。
  • 小中で一貫して育成を目指す9つの資質・能力を定め、日々の授業改善に取り組んでいます。
【育成を目指す9つの資質・能力】
「学習方法」に関すること
  • 情報活用能力
  • 発見力
  • 思考力
  • 判断力
  • 表現力
「自分自身」に関すること
  • 将来設計能力
  • 体力・継続力
「他者や社会」とのかかわりに関すること
  • 人間関係形成能力
  • 生活力
  • 各教科の「課題発見・解決学習」の授業後や総合的な学習の時間における探究的な学びの実践後に、9つの資質・能力を相互評価して振り返る時間を設定することで、個々の生徒が身に付いた力を自覚できるようにしています。

授業改善のアプローチ

  • 本単元では、9つの資質・能力のうち、「⑤表現力」を重点にし、「③思考力」、「④判断力」、「⑧人間関係形成能力」の伸長を目指します。
  • 「学校間交流をしているインドの中学生に向けて学校紹介ビデオを作成する」というパフォーマンス課題を設定し、目的、聞き手、場面を意識して学習に取り組めるようにします。
  • モデルとなる映像を参考にして、グループで作成した紹介文の内容が聞き手に伝わりやすくなるように修正します。

その際、次の3点を留意点とします。

(1)日本とインドとの共通点や相違点に着目して、日本や塩町中学校の特徴が伝わるように英語で紹介文を作成するようにします。(表現力)

(2)紹介する内容や撮影する対象など、生徒自らが適切な表現について考えるようにします。(判断力)

(3)生徒が紹介している様子をタブレットを使って撮影し、すぐに生徒が相互確認をしたり、モデルとなる映像と比べたりすることで、改善点を見いだせるようにします。(思考力)

単元づくりのポイント

目標

  • 形容詞の比較級や最上級、as~as…の意味、形、用法を正しく理解し、運用する。
  • 比較表現を含む英文を使って積極的に対話したり、事実や自分の意見を伝えたりしようとする。
  • 既出事項を使って自分の学校を紹介する英文を書き、書かれた内容が聞き手に伝わるスピーチをする。

展開

A Video Project(全13時間扱い中第10時)

  • 形容詞の比較級や最上級、原級を用いた比較表現(6)
  • インドの交流校に向けた学校紹介ビデオの作成
    • 紹介するテーマを設定し、英語で紹介文を書き、よりよい表現にする(2)
    • 映像を撮影し、紹介文を改善する(3)(本時)
    • 互いに映像を確認し、感想を英語で書き、単元を振り返る(2)

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

塩町中学校についての説明が、相手(学校間交流をしているインドの中学生)に伝わることを意識して、話している。

授業場面より

  • ①Q&A形式で既習の表現などを使ってコミュニケーションを図る

    Q&A形式で既習の表現などを使ってコミュニケーションを図る画像

    生徒同士が「最近の学校生活のこと」や「現在学んでいることに関連する内容」を中心に、これまでに学習した表現や文法事項などを使って、英語で質問し、英語で回答します。
      毎時間、互いに関心がある身近な話題について英語で質疑応答することで、円滑なコミュニケーションが図れるようになり、基礎的・基本的な知識や技能が習得できることをねらっています。
      自分の日常生活のことを聞き手にしっかり伝えようとする生徒たち。質問や回答が聞き取れなかった場合は、聞き手に聞き返してコミュニケーションを続けようとしていきます。

  • ②紹介文のモデル映像を参考に、修正点を見いだす
     

    紹介文のモデル映像を参考に、修正点を見いだす画像

    「Please take off shoes here. Let's go inside.」、他の学級の生徒が撮影した、モデルとなる映像を視聴し、自分たちが映像を作成する際に参考となる点を全体で共有します。
      生徒は「表情やイントネーションなどのスキル面が参考になる」ということを中心に述べます。教師はそれらを認めながら、「日本や塩町中学校の特徴を説明する際に、どういった伝え方が参考となりましたか」と、本時のねらいに迫るための発問をします。
      生徒は映像を見直して、配付してある英文も確認し、「靴を脱ぐ動作をしながら室内に入ることを説明していた」などの日本ならではの特徴を動作を交えて説明していることに気付き、相手のことを考え、分かりやすく伝えられるように内容を補おうとする姿につながりました。

  • ③視点を定めて伝える内容を整理し、紹介文を修正する

    視点を定めて伝える内容を整理し、紹介文を修正する画像

    教職員の紹介をするグループでは、「塩町中学校の教職員について、どのような順番でどのような内容を紹介すると聞き手に伝わりやすいか」ということを話し合います。
      聞き手に正しく伝えることを意識し、日本とインドの教職員の共通点や相違点を考えていくと、「交流校の校長先生は何歳か」、「日本やインド特有の教科は何か」といった新たな疑問が生じます。生徒は、すぐに調べられないことは次回までに調べてくることを確認し合い、交流校についてすでに分かっていることを踏まえ、「日本とインドのどちらの学校にも校長先生がいて、学校のリーダーである」という共通点に着目し、自分たちが伝えたいことを整理していきました。
      このとき教師は、前時に生徒が書いた紹介文を手元に用意し、内容を修正した過程を記録しつつ各グループを指導し、日本や塩町中学校の特徴を英語で紹介できていることを励ますことで自信をもって発表できるように支えていきます。

  • ④映像を確認し、気付きや改善点を伝え合う
     

    映像を確認し、気付きや改善点を伝え合う画像

    撮影の前には、役割を分担して繰り返し練習し、正しいイントネーションで発音できているか、意味のまとまりごとに紹介できているかどうかなどを確認し合っていきます。
      いよいよ撮影の本番です。生徒が校長先生のことを紹介し、校長先生と英語で対話する様子を同じグループの生徒がタブレットで撮影します。
      生徒は撮影した映像をすぐに確認し、気付きや改善点を伝え合い、振り返ります。教師も一緒に映像を見ながら、スキル面が向上していることや日本とインドの共通点を意識して紹介ができていることを価値付けていきます。さらに、③で生じた疑問を次回までに確認し、日本とインドとの相違点も踏まえた紹介に改善するように促していきます。
      このように、生徒が目的、聞き手、場面を意識して学習に取り組めるようにすることで興味や関心が高まるとともに、日本や塩町中学校の特徴を英語で表現する力の育成にもつながっていると捉えられます。

報告者:研修協力員  木野村