アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:豊島区立西池袋中学校
教科等:1年道徳(平成29年1月)
主題名:自主、自立、自由と責任【内容項目A-(1)】

自ら考え、判断し、実行し、自己の行為の結果に責任をもつ姿を求めて

  • 自分と結び付ける
  • 互いの考えを比較する
  • 自分の思いや考えと結び付ける

実践の背景

  • 実践校は、全校生徒約470名の中学校で、平成28年度から「特別の教科 道徳」を先行実施しています。
  • 「人間としての生き方を考え、よりよい生き方を求める道徳教育」を研究主題として、「特別の教科 道徳」の授業改善・充実に取り組んでいます。
  • 「考え、議論する道徳」の授業の実現を図るため、授業内容の工夫について検討する分科会(担当学年が混在した教師により構成)で、効果的な資料を選定・分析しています。
  • 問題解決的な学習や体験的な学習を取り入れ、発問や指導方法を工夫したり、ICT機器を利用したりするなどの授業改善を進めています。
  • 道徳ファイルや振り返りシートを用いて、生徒の変容を継続的に捉えることで、文章表記による評価につながるようにしています。

授業改善のアプローチ

  • 資料として「私たちの道徳『ネット将棋』」を用い、責任のある行動について考えられるようにします。
  • 互いの考えや意見を語り合うことで、自分とは異なる見方や考え方に気付けるようにすることで、責任のある行動について深く考えられるようにします。
  • 日常生活の具体的事柄を振り返り、資料と自分の経験とを結び付けて考えたり、対話を通して、異なる見方に気付いたりできるように、発問を通して、生徒が自らの生き方について問い掛けられるようにしていきます。
  • 毎回の道徳で振り返りを記述することで、生徒が自らの変容を継続的に捉えられるようにします。

道徳と各教科等との関連

職場訪問に向けて(総合的な学習の時間)

道徳「ネット将棋」A-(1)自主、自立、自由と責任(本時)

学級活動
・希望の職業につくには

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

  • 自分の行為の結果を深く考えて行動することが自分や周りの人にとってよりよい生活をつくることに気付き、自らの行動に責任をもち、誠実に生きようとする態度を育てる。
  • 資料『ネット将棋』(出典 文部科学省「私たちの道徳」中学校編)

授業場面より

  • ①責任が伴うことに対する感じ方を述べる

    責任が伴うことに対する感じ方を述べる画像

    「中学生になってどんなとき、どんなことに責任を感じますか(ア)」、教師は生徒に問い掛けます。
      生徒は、「委員会活動や部活動などのときに、自分がやるべきことをやらないと、みんなに迷惑がかかる」、集団の一員としての役割と責任について、自らの経験を踏まえた意見を述べます。
      一方で、「やりたいことに夢中になって、親から頼まれたことをし忘れたときは、無責任だったと反省したな」など、家族の一員としての自覚を持った行動ができなかったことを述べる生徒もいます。
      他の生徒もこれらの意見について自分も同じような経験があるとうなずき、共感しながら聞いてました。
      自由な意志や判断に基づいた行動には責任が伴うことに対する生徒の感じ方や考え方を引き出すことで、本時のねらいに迫るための手掛かりをつくっていきます。

  • ②「ネット将棋」を読み、感想を伝え合う

    「ネット将棋」を読み、感想を伝え合う画像

    「責任をもつとはどういうことだろう(イ)」、生徒は資料「ネット将棋」を読み、感想を伝え合っていきます。
      登場人物の「僕」が友達である「敏和」と昼休憩に対局しているときに「形勢が不利だからと言って時間切れを待つ態度」や「自宅でネット将棋をしているときに負けていきなりログアウトする行動」に対し、「卑怯だ」、「相手に対して失礼だ」などと、多くの生徒が「僕」の自己中心的で自分勝手な言動はよくないという感想を述べます。
      逆に、「敏和」のネット将棋で見えない相手に対しても敬意を示して挨拶をするなどの言動に「大人の対応だ」などの感想を述べる生徒もいます。
      ここで教師は「『僕』や『敏和』と似たような経験があるか、そのときどう思ったか(ウ)」について、生徒に問い掛けます。自分の経験と比べて考えることで、生徒は「僕」と「敏和」の両者の言動を捉え、「僕」の心の弱さに目を向けていきます。「僕」と同じような経験をしたことがあるという自身の経験とそのときに感じたことを語る生徒の姿につながりました。

  • ③互いの思いを聞いて考える

    互いの思いを聞いて考える画像

    「部活動で試合に負けたとき、『ありがとうございました』と素直に言えないときがあるな」、「『敏和』はやっぱり大人だよな」と、生徒がつぶやきます。
      このつぶやきを捉えた教師は生徒の思いを共感的に受け止め、「心から『負けました』と言うことで最後は『ありがとうございました』と本気で言えるとあるが、なぜ負けたのに『ありがとうございました』と言うのか(エ)」と、本時のねらいに迫るための発問をします。
      個でじっくり考えた後、生徒は3~4人グループで意見を交わします。あるグループでは、「たとえ負けても、自分の練習にもなり、相手から学ばせてもらった敬意の気持ちだと思う」、「『自分と戦ってくれてありがとう』という感謝の気持ちを伝えることが、相手に対して誠実だと思う」といった意見を語ります。
      一方で、「でも、形だけで心がこもっていない『ありがとう』なら言われたくない」と、相手の誠実さがみられない態度は自分の言動に責任をもっているとはいえないという思いを述べる生徒もいます。
      この言葉がきっかけとなり、誠実な行動とそうでない行動を比べることによって、責任ある行動について自分に問い直していきます。

  • ④考えたことを踏まえて振り返る

    考えたことを踏まえて振り返る画像

    このような自分の行為が自分や他者にどのような結果をもたらすかということを考えた意見を踏まえ、生徒は本時を振り返ります。
      「相手が目の前にいなくても、本気で『ありがとうございました』と言えるように、相手に対する誠実な姿勢をとることが、自らの行為に責任をもつことになる」、「自分の無責任な言動で仲間に迷惑をかけることもあれば、自分が責任をもった言動をすることで仲間も一緒に喜べることがある。一つ一つの行動全てに責任がある」などと、真心をもって他者に接することが自分の行動に責任をもった生き方につながるということを振り返る姿につながりました。
      (ア)~(エ)のように、教師はそれぞれの発問を通して、生徒自らが日常生活を振り返り、資料と自分の経験とを結び付けて考え、対話を通して異なる見方に気付き、自分を深く見つめられるようにしています。
      このことが、相手の立場や結果に対する責任を踏まえ、誠実に行動していくことの大切さについて考えた生徒の姿につながったと捉えられます。

報告者:研修協力員  木野村