アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:徳島県立城ノ内中学校・高等学校
教科等:6年地理歴史科(平成28年10月)
単元名:歴史を論述する~地域から歴史を考え、歴史から地域を考える~
歴史的な認識を深めて、幅広い視野を育成したい
- 自分と結び付ける
- 多様な情報を収集する
- 思考して問い続ける
実践の背景
- 「高い志をもって社会の平和と発展に貢献できる人材の育成」を目指す併設型中高一貫教育校であり、県内の中等教育を牽引する学校を目指す県指定事業「リーディングハイスクール事業」に指定されています。
- 高等学校における「リーディングハイスクール事業」では、「単位制の導入」「週35時間授業の実施」「CALLシステム(語学学習支援システム)の導入」を実施しています。
- めざす生徒像を「社会貢献への自覚をもち、仲間と共に学び合い、向上していく人間性豊かな生徒」「多様な文化・価値観を尊重し、自己の考えや意思を表現できる国際性豊かな生徒」「科学技術に関心をもち、主体的に考え、追究することができる創造性豊かな生徒」と設定しています。
授業改善のアプローチ
- 授業学級は高校3年生の文系普通クラスと応用クラスによって構成される合併クラスで、大半が大学進学を目指すなど、向学心の高い生徒が集まっています。
- その一方で教師は、教科書の歴史的な記述を自分たちにとって身近な事象として感じられない生徒がいることに課題意識を持ち、授業改善を進めてきました。
- 本単元では、実践校が所在する地域の歴史をテーマに、戦前から開校に至るまでの各種資料を教材として取り扱います。教師は、生徒が「私たちの高校はどのようにして開校したのだろうか」という課題を解決するために、「太平洋戦争前~太平洋戦争中~太平洋戦争後」という時間の経過とともに、いくつかの工場が設立されては消えていく理由を、戦前の「経済や外交」、戦中の「勤労動員」、戦後の「高度経済成長」等と関連付けて考えられるように資料を準備しました。
- 生徒が身近な地域からの視点で歴史を見つめることができるとともに、幅広い視野を養い、歴史認識を深化させることをねらいました。
単元づくりのポイント
目標
- 資料の読み取りや解釈について、周りと協働しながら集団としてより深い学習になるよう、意見を出すなどして意欲的に追究しようとしている。
【関心・意欲・態度】 - 資料について、周りとの協働学習から気付いたことや発見したことを資料中の根拠に基づいて適切に表現し、幅広い視野から歴史認識を深めている。
【思考・判断・表現】 - 資料について、教科書や図説資料を参照しながら、同時代の国内政治や経済、国際情勢とのつながりを読み取っている。
【資料活用の技能】 - 資料を題材に、その背景となる国内・国外情勢に関する基本的な事柄を、地域の歴史と教科書の記述等を関連付けて総合的に理解し、その知識を身に付けている。
【知識・理解】
展開
- 第1次 地域から歴史を考える(2時間)
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- 第1時
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学校所在地の歴史を調べ、話し合う。
- 第1時
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グループ発表と質疑応答(本時)
- 第2次 歴史から地域を考える
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- 第1時
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レポートを作成する。
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
- 各資料から読み取れた内容についてグループでのまとめ・発表や、質疑応答を通じて積極的に学ぶ態度を養う。(関心・意欲・態度)
- 教科書等の記述との比較を通じ、歴史的事象への理解を深め、まとめる。(思考・判断・表現)
授業場面より
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①多様な情報を収集する
生徒は自分たちの高校が「紡績会社(1932~1943)、航空機工場(~1945)、専売公社(1948~1973)」という歴史を経て、1980年に開校したことを知りました。教師はこれらを扱った複数の資料を提示し、生徒が地域の歴史と教科書に記述された歴史的事象とを比較しながら、開校までの歴史を探究できるようにしました。生徒は教科書の記述と比較したり(A)仲間と相談したり(B、C)して多様な情報を集めています。
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②集めた情報を共有し、整理する
続いてグループ協議です。教師は「ヒント集」を用意し、生徒が地域の歴史を国内外の歴史と関連付けて思考できるようにしました。こちらのグループでは、航空機工場に焦点を絞り、ヒント集から「当時の戦況」や「勤労動員」などを選び分担して調べました。その結果を共有している場面です(D)。本県の平和産業だった綿織物業が急速に衰退し、軍需産業に転換していくプロセスを国内全体の戦況と結び付けて協議することができました。
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③協議した内容を模造紙にまとめる
協議した内容を模造紙にまとめています(E)。生徒は、教師から与えられた資料を読むことで、この航空機工場で「酸素吸入器」を生産していたことを知りました。高度一万メートルという酸素の薄い上空を飛ぶために搭乗員の酸素補給が必要だったからです。この工場で働いていたのは動員された自分たちと同じ学生でした。地域という視点から歴史を考えていくことで、複数の事実的な知識が必然性を持ってつながっていきます。
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④協議した内容を仲間に伝える
クラス全体へ協議した内容を伝える場面です。教師はグループの発表内容を把握し、生徒が準備できなかった「酸素吸入器の写真」を提示するなど、生徒の発表内容がより具体的に伝わっていくようにしました。グループごとに時期を分担して協議したため、他のグループの発表内容は自分たちが協議した内容と必然的に結び付きます(G、H)。教師の意図した「地域から歴史を考え、歴史から地域を考える」学びが実現されました。
報告者:研修協力員 谷内