アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:大田区立矢口小学校
教科等:5年体育科(平成29年2月)
単元名:器械運動(跳び箱運動)
自己の課題に応じた活動を選んだり工夫したりしながら、技能を身に付けていく力を育成したい
粘り強く取り組む
互いの考えを比較する
知識・技能を習得する
実践の背景
- 実践校は、教職経験の浅い教員が多いため、組織的に校内研修を行うことを通して、指導力の向上を図っていくことを重点に掲げ、日々授業改善を図っている学校です。
- 児童が『自ら課題をつかむ授業』を通して、「課題を発見していく力」、「見通しを持って、自ら考えていくことができる力」、「学んだことを振り返ることができる力」の育成を目指しています。
授業改善のアプローチ
- 基本的な支持跳び越し技(切り返し系、回転系)に取り組み、それぞれについて自己の能力に適した技ができるようにするために、一人一人が自己の課題に応じて、活動を選んだり工夫したりしながら課題を解決していく力を育成していきたいと考え、単元を構成しました。
- 単元を通して、「今持っている力でできる技を習熟する時間」、「自分が挑戦したい技に向かう時間」を設定し、児童が自分の能力に合わせた課題を持つことができるようにしました。特定のグループはつくらず、その時間に同じ課題をもっている児童同士で学習を進めていく形態をとりました。
- 体育支援員を配置し、技のポイントや補助等、個に応じた支援を行うことで、児童の活動の幅が広がるようにしました。
- 「〇分で安全に準備・片付けをするにはどうすればよいか」を児童に問い、自分の役割を果たしたり、安全に気を付けたり、協力して活動したりする学びに向かう力を運動に従事する以外の面からも育むことを意識しました。
- 単元を通して、仲間と課題解決していく学習を繰り返し行い、本時でも技のコツを言葉を通して伝えたり、実際に動作で見せたりしながら課題を解決していく姿が見られました。
単元づくりのポイント
目標
- 基本的な支持跳び越し技(切り返し系、回転系)に取り組み、それぞれについて自己の能力に適した技が安定してできるようにする。
【技能】 - 運動に進んで取り組み、約束を守り助け合って運動をしたり、場や器械・器具の安全に気を配ったりすることができるようにする。
【態度】 - 自己の能力に適した課題の解決の仕方や技の組み合わせ方を工夫できるようにする。
【思考・判断】
展開
- 第1時
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オリエンテーション
- 学習の流れ、学習の仕方等を確認する
- 中学年までに取り組んだ技に取り組み、今できる技を確認する
- 第2時
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基本的な技の習得や技を安定して行うことを目指し、基本的な切り返し系、回転系の技に取り組む
- 開脚跳び、台上前転
- 安定した開脚跳び、台上前転
- 第3時, 第4時
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- 習得した技を安定して行うことを目指し、基本的な切り返し系、回転系の技に取り組む
- 自己の能力に応じた技を身に付けることを目指し、課題とした技に取り組む
- 第5時, 第6時(本時)
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- 習得した技を安定して行うことを目指し、基本的な切り返し系、回転系の技に取り組む
- 自分の能力に応じた技を身に付けることを目指し、課題とした技に取り組む
- 第7時
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- 自己の能力に応じた技を身に付けることを目指し、課題とした技に取り組む
- できるようになった技を見合い、演技発表会を行う
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
- 自分が課題として取り組む技の解決の仕方を考え、自己の課題に応じた練習の場や段階を選んでいる。【思考・判断】
授業場面より
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①技能の習得に向けた動きを確認する
導入の場面です。教師は技能の習得に必要な動きを児童が確認できるように体育館全体を使い、感覚づくりの運動の時間を設定しました。また、図のように場を工夫し、サーキット形式で行うことで、関心・意欲も高めていきました。児童は、それぞれの場所で、「ウサギ跳びは、着手と踏み切りにつながっているんだ」、「開脚跳びの突き放しを確認する」等、一連の動きとして捉えていたものを分割して確認することで、一つ一つの動きの意味について考えていきました。このことにより、児童は、自己の課題を考え、解決に向けて、練習の場や段階を選びながら運動に取り組んでいくことができました。
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②技の習熟を図る
今、自分ができる技を習熟していく時間です。教師は、一人一人が課題意識を持ちながら、運動に取り組めるように、「どんな技を、どのように行うのか」という視点で全体で確認しました。また、「段の高さではなく、いかに技をきれいに見せるか」ということを付け加え、一つ一つの動きを確認しながら、技の習熟を図っていけるようにしました。①
ある児童は、台上前転の踏み切りを強くし、腰を上げるために、ゴム紐を使う練習を行いました。教師は、児童がつまずくポイントを想定し、このような場を用意することで、児童が練習の場を選んでいくことができるようになると考えました。児童は、「今のは腰が上がっていてよかったよ。」、「私の演技も見てみて。」と互いに気付いたことや考えたことを言葉や動作で伝え合い、見たり、支えたりする視点も関連させながら、技の習熟を図っていきました。 -
③自己の能力に応じた技に取り組む
自分の能力に応じた技に取り組んでいく場面です。教師は、一人一人が自分のできる技を増やしていくことを目指し、「自分が挑戦したい技」に取り組む時間を設けました。また、体育支援員を配置し、個に応じた指導ができるようにしました。安定的な開脚跳びに挑戦しているこの児童は、体育支援員の助言を受け、助走から踏み切りが弱い時に跳べないことに気付き、「強く踏み切ること」という課題をもちました。
踏み切った際に、手はどこに付くのか、目線はどこに置くのかという自分の動きについて考えたり、体育支援員や仲間と話し合ったりしながら、課題と向き合っていきました。このように、粘り強く取り組んだことで、コツを掴み、安定した開脚跳びができるようになっていきました。 -
④学びの成果を振り返る
教師は、「どうしてできるようになったのか」についての理解を促すための振り返りの場を設定し、全体で共有しました。安定した開脚跳びができるようになった児童は、その理由を「手の付く位置を前にして、踏み切りを強くしたらきれいに跳べるようになりました」と振り返りました。それによって腰が高く上がり、跳び越えられることを体育支援員や仲間からも伝えられ、どうして、強く踏み切るとよいのか、手の付く位置を前にするとよいのかということを実感を伴って理解することができました。最後に「次は6段をきれいに跳びたいです。」と新たな課題を見いだし、学んだことを次の学習に生かしていこうとする姿につながっていきました。
報告者:研修協力員 佐藤