アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:川崎市立川崎小学校
教科等:3年社会科(平成27年12月)
単元名:働く人とわたしたちの暮らし~工場で働く人と仕事~

学校として一貫した取組を重ねて資質・能力の育成へ

  • 自分と結び付ける
  • 互いの考えを比較する
  • 知識や技能を概念化する

実践の背景

  • 学校として共通性と一貫性のある取組をして、思考力等の汎用的な能力の育成を積み重ね、主体的・対話的で深い学びの実現の基盤づくりをしています。
  • これまで教員が積み重ねてきたエッセンスを整理・重点化し、学校として手立てを統一した「教師の秘伝」を使い、教科の枠を超えた実践を目指しています。
  • 「教師の秘伝」は「全員が挙手して主体的に学べる集団」「話し合いで主体的に考え学び深めていく集団」「全員で話し合い、認め合い、注意し合い、規範のある集団」の各内容を3冊にまとめ、教師の基礎・基本として活用しています。この秘伝が達成できたら、「自分らしさ・個性を生かした教育」として、深まりや広がりのあるアクティブ・ラーニングを実践していきます。
  • 「会議は精選し短時間で」「指導案は単元計画を重視」「新たに何かを入れるときは何かをやめる」などの業務の効率化を図ることで、教師が子どもと向き合う時間を確保し、授業が充実するように取り組んでいます。

授業改善のアプローチ

  • 「全員が挙手して主体的に学べる集団(教師の秘伝①)」を目指しています。挙手して発言できない児童がいる時は、安心してすごせる集団であるか、実態に合わせた発問であるか、個人の問題に対応しているか、といった「集団・発問・児童」の三つの視点から集団を見直します。
  • 「話し合いで主体的に考え、学び深めていく集団(教師の秘伝②)」を目指しています。話し合いの成立のために、相互指名やハンドサインなどの「型」を教えてから話し合いをしますが、型にしばられて発言内容が広がらない児童もいます。そのため、実態に応じて型を活用するかを学級担任が判断するようにしています。
  • 「全員で話し合い、認め合い、注意し合い、規範のある集団(教師の秘伝③)」を目指しています。一人一人の多様な個性が輝くためには、ルールが定着し、活気があり、傷つけられない安心感が必要です。そのために、「みんななかよく一緒」など、同一性や均一性を優先せずに、考え方が違う理由を出したり、折り合いをつけ人と協調・協働できることを心がけています。

単元づくりのポイント

目標

  • 地域の生産に関する仕事について調べ、その仕事の特色や他地域との関わりについて理解する。
  • 地域の生産に携わる人々の仕事の工夫について考え、それらの仕事が自分たちの生活を支えていることを理解する。

・地域で約50年続く手づくりせんべいについて意欲的に調べ、せんべいづくりの仕事と自分たちの生活とのつながりを考えようとしている。
(社会的事象への関心・意欲・態度)

・せんべい工場の仕事の様子について、学習問題や学習計画を考え、表現している。また、せんべい工場では様々な工夫や努力により、衛生的で安全な製品を効率よく生産していることについて考え、適切に表現している。(社会的な思考・判断・表現)

・せんべいづくりについて、調べる観点に基づいて適切な方法で調べ、分かったことを見学メモやノートにまとめている。
(観察・資料活用の技能)

・工場でのせんべいづくりや働く人たちの工夫や努力、原料や流通を通した他地域とのつながり、地域とのつながりを大切にする工場の人の思いを理解している。
(社会的事象についての知識・理解)

展開

1

「A製菓せんべい」の人気の秘密について予想を立てる。

2

DVD等でせんべいの生産工程を知り、おいしさの工夫を考える。

3~4

【A製菓の工場見学】
効率、衛生面、販売などの工夫を知り、なぜすべてを機械化しないのか疑問を持つ。

5

すべてを機械化しない理由を話し合い、A製菓の工夫を考える。(本時)

6

衛生的で安全な製品を生産するための工夫を考える。

7

直売店と駅前店舗との販売方法の違いを知り、その工夫を考える。

8

A製菓と他地域との関わりをまとめる。

9

A製菓の人気の秘密について話し合い、工夫をまとめる。

10

A製菓の副社長にインタビューし、せんべい工場の未来を考える。

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

  • せんべい工場では、効率よく、かつ品質の良い製品を生産するために、様々な工夫や努力をしていることを理解する。

授業場面より

  • ①前時を振り返って本時を見通す

     前時を振り返って本時を見通す。画像

    前時に児童は工場見学で見つけた工夫を「効率・衛生面・他地域との関わり・販売の工夫」という四つの面からノートにまとめました。本時の導入で教師は工場見学時の写真を提示しました(A)。機械での作業風景と人の手での作業風景です。児童はこれらの写真を見たりノートを見返したりしながら(B)、前時の学習を想起し、「今日はすべてを機械化しない理由を考える時間だ」という見通しを持ちました。

  • ②個人でじっくり考え、仲間と相談する

    個人でじっくり考え、仲間と相談する。画像

    続いて、児童は課題に対する考えをまとめ、4人組で友達と相談しました。課題の左側に学習プロセスと所要時間が掲示されています。この工夫によって、児童は見通しを持ちながら取り組むことができました。次に「話し合いタイム」です(C)。教師は「考えをつないで共通点を見つけよう」というルーブリックを黒板の右側に示しました。このような工夫があることで、友達の発言から共通点をよく聞き取ろうとすることができます。

  • ③話し合い、まとめる

    話し合い、まとめる。画像

    児童の相互指名によって進む「話し合いタイム」の様子です。児童が友達が示すハンドサインを根拠に考えをつないでいきます(D)。教師は児童の発言をウェビングで整理していきました。「効率」という点から考えると機械のよさが、「品質」という点から考えると人の手のよさが際立つ。児童はウェビングで整理された板書を拠り所にして、すべてを機械化にしない理由に迫っていくことができました。

  • ④本時を振り返る

     本時を振り返る。画像

    授業の終盤、友達の考えを聞きつつ教科書やノートを見返す姿(E、F)、「ノートに書いてあった考えを言ってごらん」という教師の支援で考えを言い切れた姿もありました(G)。このようにして児童は、生産工程の工夫を「効率性」「品質」という面だけでなく、「機械のよさ」「人の手のよさ」という角度から捉え直すことができました(H)。さらにある児童は「きかいと人でりょうりつしてるからAせいかの味はおいしい」と自分なりに意味付けました。

報告者:研修協力員  谷内