アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:鹿児島市立伊敷中学校
教科等:2年美術科(平成28年11月)
題材名:集団読書冊子のブックカバーをデザインしよう
自分の思いを伝える力を育成したい
粘り強く取り組む
共に考えを創り上げる
新たなものを創り上げる
実践の背景
- 実践校は研究校としての使命を担い、時代の要請に応じた研究・実践を重ね、その成果等を多くの学校へ公開しています。
- 「新しい時代を切り拓く資質・能力を身に付けた生徒の育成」という研究テーマのもと、教科横断的な視点から考えた学校で目指す資質・能力「課題発見力」「情報活用力」「論理的思考力」「協働する力」「学びに向かう力」の育成に向け、生徒の学びに寄り添いながら授業改善に取り組んでいます。
授業改善のアプローチ
- 問題解決的な学習において、試行錯誤する生徒の思考の流れを「気付き」「納得」「意志」というキーワードから予想することによって、思考を深化、拡張する支援を計画しました。
- 自らの生活経験や既習事項から気付いた課題を他者と共に解決する学びを通して、納得を伴った理解に基づき、学んだことを今後の学習や生活に生かそうとする意志を育む授業を目指しました。
題材づくりのポイント
目標
- 本の装丁に関心を持ち、目的意識をもって主体的に制作活動や鑑賞活動を行うことができる。
- 本の装丁を構成する要素を基に、形や色彩などの効果を生かして表現の構想を練ることができる。
- 自分の意図に合う表現を工夫しながら、自分の価値意識と照らし合わせ、創造的に表現することができる。
- 市販されている文庫本の装丁や他の生徒の作品を鑑賞し、作者の意図や表現の工夫、本の装丁としての美しさなどを自分の価値意識をもって味わうことができる。
展開
- 1
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題材の把握と鑑賞Ⅰ(2時間)
- 市販のブックカバーを分析しよう
- 物語を構成する要素を分析しよう
- 2
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表現の発想と構想(2時間)
- 自分にとっての「良いブックカバー」の「目標イメージ」を考えよう
- 3
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制作Ⅰ(1時間)
- ブックカバーを制作しよう①
- 4
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鑑賞Ⅱ(1時間)(本時)
- 自分の作品と「良いブックカバー」の「目標イメージ」とを照らし合わそう
- 5
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制作Ⅱ(2時間)
- ブックカバーを制作しよう②
- 6
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鑑賞Ⅲ(1時間)
- ブックカバーを鑑賞しよう
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
- 本の装丁に関心を持ち、目的意識をもって主体的に鑑賞活動をすることができる。
- 自分の価値意識と照らし合わせ、創造的に表現することができる。
- 自他の作品を鑑賞し、作者の意図や表現の工夫、本の装丁としての美しさなどを自分の価値意識をもって味わうことができる。
授業場面より
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①私の思いは伝わるかな?
これまでの学習を振り返り、本時の学習の見通しを立てる場面です。教師は、市販されている2種類の文庫本を電子黒板に提示しました。2種類ともタイトルは同じですが、ブックカバーのデザインが異なります。生徒は、表現の違いに着目しながら、多様な観点から評価することによって、伝えたい内容を多くの人に伝えるために、形や色彩などの効果を活用することの必要性を確認します。そして、前時に自らが制作したブックカバーのレイアウトが、自分の伝えたい思いを他者に伝えるものになっているのか気になり始めます。
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②他者からの評価は?
互いの構想を評価し合い、前時に行った自己評価と比べる場面です。教師は、自己評価と同様、文字、イラスト、レイアウト、雰囲気の4観点について評価を行い、レーダーチャートに表すよう促しました。生徒は、他者評価と自己評価の2つのレーダーチャートを重ねて見ながら、その違いに見入っていました。満足いく表情が見られる一方、納得いかない表情を浮かべる姿も見られます。自分の表現に対する他者の評価が明らかになり、他者の評価の根拠を知り、改善に生かそうとする気持ちが高まります。
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③私が伝えたいことは・・・
再び構想を練る場面です。教師は、自己評価と他者評価をもとに、グループで評価の根拠や自分の伝えたい思いについて交流するように促しました。「私が伝えたいことは・・・」と自分の思いを語り、アドバイスを求める生徒に対して、「それならば・・・」と、イラストの配置や大きさ、表現の技法などについて意見を交えながら、改善の方法を共に考えます。実際に表現を繰り返し、他者に対し共感が得られる表現になっているか、確認する姿も見られました。
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④思いが伝わる作品を作ろう!
今後の制作に向けた見通しをもつ場面です。教師は、本時の学習を振り返り、文字、イラスト、レイアウトの視点から改善点を整理するように促しました。生徒は、自分がイメージする作品を改めて確認し、改善点をまとめます。寂しい雰囲気を伝えたいと考えたある生徒は、点描の技法を使って文字やイラストに濃淡をつけたり、主人公の表情をぼかし表現したりする工夫を考えました。このような授業を通じて、多様な表現方法の特性を理解しながら、新たな作品を創り出していきました。
報告者:研修協力員 窪