アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:山口県立宇部工業高等学校
教科等:3年地球環境化学(平成28年10月)
単元名:地球温暖化による気象、環境の変化
ESDの視点から、コミュニケーションを行う力や批判的に考える力を伸ばしたい
見通しを持つ
多様な情報を収集する
自分の考えを形成する
実践の背景
- 実践校は大正9年創立の工業高校で、4つの学科(機械科、電子機械科、電気科、化学工業科)があります。
- 校訓「誠と熱」の伝統を継承し、何事に対しても誠意を尽くし、情熱を傾注して努力する意欲的な社会に貢献できる優れた人材の育成を図っています。
授業改善のアプローチ
- 地球温暖化によって起こる現象の中から各グループでテーマを決めて議論ができるようにします。
- 個々の生徒が多くの考えを付箋に書き、大判用紙に貼ることで、よりよい社会の構築に向けた問題点や改善策を整理しやすいようにします。
- 地球温暖化は地球規模で考えていく問題であることから、世界に向けて発信するという場を設定することで、自分たちの考えを英語を用いて表現する必然性が感じられるようにします。
- 地元の小学校で英語を指導している教諭とティームティーチングで実施することで、英語で情報を発信する力の育成も目指します。
- 生徒が地元の小学校に出向き、理科の出前授業をすることで、ESDで育みたい力の深化にもつなげます。
単元づくりのポイント
目標
地球環境の成り立ちから、その仕組みについて知り、大気について基礎的な知識をもち、問題点を理解する。
展開
地球温暖化による気象、環境の変化(全7時間扱い中第2時)
- 1
-
地球温暖化に伴う問題点からテーマの決定(1)
- 2
-
問題点、改善策、個人でできることを整理、類型化(1)(本時)
- 3
-
発表用原稿を英語で作成し発表(5)
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
地球温暖化によっておこる現象のポイントから決めたテーマについて、グループでの対話を通し、批判的に考えることができる。
授業場面より
-
①映像を視聴し、気付きを整理する
本時は、映像「2050年日本の天気予報」(NHK)を視聴し、地球温暖化によっておこる現象の中から各グループで決めたテーマに沿って議論する授業です。
教師は、学ぶ目的を「地球温暖化の影響で世界で起きていることを、グループのテーマに沿って整理し、英語にして発信する」と示し、話し合う目的を「世界に向けて発信するために、映像から見えるまたは想像される問題点、改善策、個人でできることを、グループで決めたテーマに沿って類型化し、整理する」と示しました。また、伸ばしてほしい力として、「批判的に考える力、コミュニケーションを行う力」を生徒と確認しました。
生徒は映像を視聴しながら、これまでの学びを踏まえ、どんな問題点が考えられるか、有効な改善策は何かということを考え、付箋に書き出していきます。 -
②テーマに沿って、グループで議論する
個で書いた付箋を8人グループで共有し、類型化していきます。
教師は、テーマに沿って、いろいろな可能性を考えて議論するように働きかけました。
それぞれが付箋に書いた内容を伝え合いながら、類型化していきます。
あるグループでは、「地球温暖化が人、動物、その他へ及ぼす影響の視点で分類すれば、最終的にすべてがつながると思う」という生徒が立てた仮説に基づいて付箋を分類したところ、問題点ばかりに着目していることが明らかとなります。そこで、これまで学んできた地球温暖化の原因として考えられること(化石燃料の使用量の増大による温室効果ガスの増加、地球温暖化で永久凍土が融解することによるメタンガスの放出など)を確認し合い、問題点に対する改善策を考えていきました。 -
③グループで整理したことを発表し、共有する
グループで整理した意見を交流することで、地球温暖化による多様な問題点を理解し、全体で今後の学習の見通しを共有します。
各グループから、「地球温暖化により、さらなる水不足が予想される。どのようにしたら海水などから飲料水を効率よく取り出せ、どのように利用することがよいのかを調べ、考えて発信していきたい」、「私たちはまだ知らないことが多いけど、世界の人に正しく伝えることが大事だと思うので、現在、すでになされている対策について、もっと知識が必要だと思う」など、より合理的で創造的な改善策について考えていきたいという見通しを持った意見を交わしました。 -
④本時の学びを振り返る
毎時間、本時に学んだことや対話を通して考えたこと、次時に取り組みたいことなどについて振り返ります。本時の学習の目的を踏まえ自ら振り返ることで、学びを価値付けたり、身に付いた資質・能力について自覚したりしていきます。
生徒は、「映像から得られた情報やこれまで学んできたことをもとに地球温暖化を捉え、水不足や猛烈な台風の発生などの問題点に対する改善策や今すぐ個人でできそうなことについて整理できた」、「グループや全体での対話を通して、地球温暖化による問題点の共通した原因をつきとめ、改善策を考えることの必要性を感じた」などと、学ぶ目的や伸ばしたい力を意識して振り返るとともに、これから明らかにしていきたいことを見いだす姿につながりました。
報告者:研修協力員 木野村