アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:廿日市市立大野中学校
教科等:3年保健体育科(平成28年7月)
単元名:器械運動 マット運動

自己に適した技を仲間とともに追究する力を伸ばしたい

  • 振り返って次へつなげる
  • 協働して課題解決する
  • 知識・技能を習得する

実践の背景

  • 各学年3学級の中学校で、小中一貫教育推進校です。
  • 学校として育成を目指す資質・能力を「説明力」「自己有用感」と設定し、互いの考えや意見などを交流し、広げ深めていく授業づくりに、全教科で取り組んでいます。

授業改善のアプローチ

  • 生徒自らが倒立前転の完成度を高めるための視点を見いだせるようにするために、理想とする姿とそうではない姿を比べることで違いを考える映像を用います。
  • 自己の課題に応じた練習ができるように、自分が練習をしているところをタブレットを使って動画を撮影してもらい、練習後すぐに、確認できるようにします。
  • 仲間の演技を客観的な立場で捉え、グループで改善策をアドバイスすることで、互いのよい動き方を讃え合えるようにします。
  • 一枚のワークシートに完成度を高める視点と振り返りを書くことで、生徒が変容を自覚できるようにします。

単元づくりのポイント

目標

  • 回転系や巧技系の基本的な技を滑らかに行うこと、条件を変えた技や発展技を行うこと、それらを組み合わせることができるようにする。
  • 器械運動に積極的に取り組むとともに、よい演技を認めようとすること、分担した役割を果たそうとすることや、健康・安全に気を配ることができるようにする。
  • 器械運動の特性や成り立ち、技の名称や行い方、関連して高まる体力などを理解し、課題に応じた運動の取組方を工夫できるようにする。

展開

器械運動 マット運動(全11時間扱い中第7時)

1 器械運動の基本技の確認(3)

回転系や巧技系の基本的な技の完成度を高める。

2 新しい技への挑戦(3)

条件を変えた技や発展技に取り組み、自分の能力に適した技を選び、自己の課題を明らかにし、解決を図る。

3 合わせ技への挑戦(3)(本時)

技の組み合わせを工夫して、仲間とともに助け合い教え合いながら、技の完成度を高める。

4 連続技の発表(2)

構成した技を一連の動きとして演技し、互いの演技を認め合い、単元を振り返る。

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

  • 仲間と協力して教え合ったり、練習の場を整えたり、補助し合ったりして進んで運動に取り組もうとする。【運動や健康・安全への関心・意欲・態度】
  • 練習の進め方を工夫したり、技のできばえを確かめたりしている。【運動や健康・安全についての思考・判断】

授業場面より

  • ①技をよりよくする視点を見いだす

    技をよりよくする視点を見いだす画像

    生徒は前時に倒立前転に取り組んでいます。前時の振り返りから、技の完成度をもっと高めたいという意欲を抱いている生徒が多くいます。
      そこで本時は、理想とする姿とそうではない姿を映像で比べることで、生徒自らが倒立前転の完成度を高めるための視点を見いだし、個々の課題に応じ、練習に取り組めるようにします。
      教師は映像を提示し、「2つの映像を比べて、技の完成度を高めるための視点を見つけよう」と生徒に働きかけます。
      あるグループでは、何度も映像を確認しながら気付いたことを伝え合い、「顔をマットに向ける」、「足や足首を伸ばす」、「手の指を広げる」の3つを視点として定め、ワークシートに記入し、練習に取り組んでいきます。

  • ②視点を基に練習に取り組む

    視点を基に練習に取り組む画像

    グループで定めた視点を意識し、自己の課題に応じて練習を工夫することで、倒立前転の完成度を高めていきます。
      自己の課題を自覚できるようにするために、自分が技の練習をしているところをタブレットを使って動画を撮影してもらい、練習後すぐに確認します。その際、グループのメンバーと演技をした生徒とが、映像と定めた視点とを照らし合わせていきます。技の完成度が高まっているところを認めたり、気付きを指摘したり、どこをどのようにすればよいか具体的にアドバイスをしたりすることで、演技をした生徒は次の練習の改善点を自覚していきます。
      撮影した生徒も仲間の演技を客観的な立場で捉えることで、よい動き方を確認したり、仲間の演技を讃えたりしていきます。

  • ③技の完成度を高める

    技の完成度を高める画像

    教師は、各グループの練習の様子を確認しながら、指導していきます。
      例えば、仲間の演技を見て、「技がきれいにできていますね」と言った生徒に対し、教師はともに映像を確認しながら、「技の途中までは確かにきれいだけど、倒立したときの姿勢はどう思う」と問いかけることで、個々の課題に応じ、さらに完成度を高めるための視点に自ら気付けるように働きかけていきます。
      その後、生徒は仲間とともに再度映像を確認し、視点と照らし合わせて見付けた改善点を踏まえ、練習を繰り返すことで、技の完成度を高めていきます。

  • ④本時の学びを振り返る

    本時の学びを振り返る画像

    生徒は毎時間、学びを振り返ります。
      教師は、定めた視点を基に練習に取り組んだ結果、自己の課題を踏まえ、技の完成度がどのように変わったかということを中心に振り返るように働きかけました。
      ある生徒は、「手の指を広げる」という視点について、「手の指を広げることを意識して練習すると、バランスが取れやすくなって安定することに気付いた」とグループで定めた視点を基に練習し、完成度が高まったことを自覚していました。
      また、映像を確認し、仲間と対話を通して見つけた改善策が有効だったことを振り返った生徒もいました。
      一枚のワークシートに完成度を高める視点と振り返りを書いて比べることで、生徒は変容を自覚することにつながりました。

報告者:研修協力員  木野村