アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:大田区立矢口小学校
教科等:5年理科(平成28年1月)
単元名:物の溶け方
予想や仮説をもとに見通しをもって実験を行い、問題を解決していく力を育みたい
見通しを持つ
多様な情報を収集する
知識や技能を活用する
実践の背景
- 実践校は、全員で研究授業をつくる校内体制を整え、組織的に校内研修を行うことを通して、指導力の向上を図っていくことを重点に掲げ、日々授業改善を図っている学校です。
- 『自ら課題をつかむ授業』を通して、「課題を発見していく力」、「見通しを持って、自ら考えていくことができる力」、「学んだことを振り返ることができる力」の育成を目指しています。
授業改善のアプローチ
既習事項や生活経験を活かしながら、学習計画を立て、予想や仮設をもとに、見いだした問題を解決していく力を育んでいく単元を構成しました。本時は、問題の解決に向けて、グループで実験計画を考え、他のグループとの意見交流を通して、実験計画を再検討していく授業です。「自分たちで学習する」意欲を育んでいくためにグループで学習リーダーを設定し、リーダーを中心に話し合いを進めていく形態を取りました。一単位時間の中で、リーダーが変わるようにすることで、一人が単元を通して、何回もリーダーとして、話し合いを進めたり、意見をまとめたりできるようにしました。他のグループとの考えの交流には、グループの一人が残り、他のメンバーが他のグループの考えを聞く所謂、「ワールドカフェ方式」を取り入れ、多様な考えを聞き合える工夫をしました。交流の足跡を残すために、付箋紙を活用し、
○実験計画についてのアドバイス
○実験計画に関しての感想
の視点で交流を行いました。
交流のみで終わらないよう、グループで実験計画を再検討する学習過程を組み、アドバイスや感想を基に、より妥当性が得られる実験計画を考えることに繋げていきました。
単元づくりのポイント
目標
物の溶け方をそれらに関わる条件に目を向けながら調べ、見いだした問題を計画的に追究したり、ものづくりをしたりする活動を通して、物の変化の規則性についての見方や考え方を養う。
展開
- 第一次
-
- 1, 2
-
食塩の粒を観察しよう
- 水に物を溶かした経験を基にその様子を話し合う。
- 食塩の粒を観察する。
食塩を水の中に入れた時の溶ける様子を観察しよう
- 【実験】食塩を水の中で溶かし、溶ける様子を観察する。
- 3, 4
-
食塩を水に溶かした時、できた水溶液の重さはどうなるのだろうか。
- 予想を立てる
- 【実験】溶かす前と溶かした後の水溶液の重さを調べる
<結論>食塩を水に溶かした時、できた水溶液の重さは、水の重さと溶かした食塩の重さの和になる。
- 第二次
-
- 5, 6, 7
-
物が水に溶けるということはどのようなことかまとめよう。
決まった量の水には、どのくらい食塩やミョウバンが溶けるだろうか。
- 予想を立てる
- 【実験】食塩やミョウバンが水に溶ける量を調べる。
- 実験から分かったことをまとめる。
<結論>決まった量の水に溶ける食塩やミョウバンの量には、限りがある。また、食塩とミョウバンは水に溶ける量に違いがある。
- 第三次
-
- 8(本時)
-
水に食塩やミョウバンをたくさん溶かすにはどうしたらよいか。
- 予想を立てる。
- 9, 10
-
- 【実験】水の量や水温を変えて、食塩やミョウバンが水にどれくらい溶けるか調べる。
- 実験から分かったことをまとめる。
<結論>水の量を増やすと、食塩やミョウバンの溶ける量は増える。水温を上げるとミョウバンの溶ける量は増えるが、食塩の溶ける量はあまり増えない。
- 11, 12, 13
-
食塩やミョウバンの水溶液から、溶けている物を取り出すことはできるのだろうか。
- 予想をたてる。
- 【実験】水溶液に溶けている食塩やミョウバンを取り出す。
- 実験から分かったことをまとめる。
<結論>ミョウバンの水溶液は、熱して水を蒸発させたり、冷やしたりすると溶けているミョウバンを取り出すことができる。
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
物の溶け方とその要因について予想や仮説を持ち、条件に着目して実験を計画し、自分の考えを説明したり、他者の考えに対する自分の考えを伝えたりすることを通して、考えを深めることができる。
授業場面より
-
①学習リーダーを中心に課題を考える
導入の場面です。教師は前時の学習内容
「水が50mlでは、食塩はスプーン6杯分溶けた」ことを確認します。「食塩が水に溶ける量には規則性があるのではないか」という児童の振り返りを基に、本時の課題を考えていきました。教師は、自分たちで学習を進めていく意識を育てるために、グループの中で、学習リーダーを決め、順番にリーダーが話し合いを進めていくようにしました。児童は、リーダーを中心に意見を交わし、既習事項を基に、「水の量」、「温度」等に着目しながらを自分たちで課題を考えていきました。その後、グループごとに課題を発表し合い、意見の共通点を見付け合うことで、「食塩やミョウバンをたくさん溶かすにはどうしたらよいか」という課題を設定していきました。 -
②個人で予想を立てる
「水に食塩やミョウバンをたくさん溶かすにはどうしたらよいか」という課題に対して、自分で予想を立てる場面です。教師は、食塩だけでなく、ミョウバンも取り扱うことで、溶ける量の違いが顕著に観察できたり、物が水に溶ける規則性を捉えたりできるようにしました。児童は
「水の量を増やせばよいと思う。料理をするときに、水を沢山足したら、溶けたから」
「水を温めるとよい。お湯を沸かした鍋に塩を入れたら溶けたから」
と生活経験とも関連させながら、予想を立てていきました。
その後、全体で予想を確認し、その予想が妥当であるかを全員がマグネットで意思表示することで、見通しをもって課題を解決していくことができました。 -
③グループで実験計画を考える
実験計画を考える場面です。
①まず、既習事項を生かしながら、個人で実験計画を考えました。
②その後、考えた実験方法を伝え、グループで意見交換することで、実験方法の妥当性を検討していきました。
③教師は、科学的な思考力や表現力を育成していくために、
○使いたい科学的な用語
○前時までに児童が使った実験計画の示し方の例(言葉、絵、表、図)
を掲示物で示し、科学的な用語に加え、図や絵、表を使って実験計画を考えられるようにしました。
児童は、
④「四人の考えを聞くと、温度の変化に関しては考えは一緒。でも、水に関しては増やす量について、二つの考えがある。水についての実験は二つ書いておこう」と考えを比べながら言葉や図、絵も用いて実験計画を考えていくことができました。 -
④他のグループのアドバイスを基に実験計画を再検討する
他のグループと交流をした後、自分たちの実験計画を再検討している場面です。教師は、
①多様な情報を収集し、互いの実験計画をよりよくしたり、一人一人の説明する力を育んでいったりするために、
【グループの一人が残り、他のメンバーが他のグループの実験計画を聞きにいく】所謂、ワールドカフェ方式を取り入れました。この際、アドバイス等を再検討に活かすため、付箋紙を活用しました。付箋紙には
・考え方についてのアドバイス
・説明についてのアドバイス
と視点を定めることで、話し合いが焦点化していくようにしました。
②「水の量を少しずつ増やすと書いてあるが、量が分かりにくいから、具体的な数字を書いた方がよい」
といったアドバイスをもとに、
児童は、受け取った付箋の内容から、より正確に実験できるようなアドバイスを選び、
「前の実験も10mlずつ増やしたから、今回もそうしよう」といった
既有の経験を活かし、課題を解決していくための実験方法を考えていくことができました。
このようにして考えた計画をもとに、実験等の問題解決の活動を繰り返し行うことで、個人がもっている自然についての素朴な見方・考え方が科学的な見方・考え方に変容していく姿に繋がっていきました。
報告者:研修協力員 佐藤