アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:岡山県立倉敷天城中学校
教科等:3年社会科(平成28年9月)
単元名:現代社会の見方や考え方
多様な考えが持てる問いに対して自らの考えを持った上で、議論を通して合意形成を行う過程を体感させたい
自分と結び付ける
共に考えを創り上げる
思考して問い続ける
実践の背景
- 実践校は併設型中高一貫教育校です。適性検査を経て入学する生徒は、学習意欲が高く、高等学校で指定を受けているSSHの牽引役として活躍しています。
- 授業を45分×7校時で行っています。学校独自の教科である「サイエンス」や総合的な学習の時間等を使い、3年次には、「課題研究発表会」を行い、全生徒が興味関心に応じて設定した課題を研究し、まとめた結果を教職員や外部の方の前で発表します。
- 研究主題を「言語リテラシーを活かして、思考力・判断力・表現力を育む授業づくり」とし、中高6年間を見通した教育課程、教育内容の改善を図っています。
授業改善のアプローチ
- 研究主題を「言語リテラシーを活かして、思考力・判断力・表現力を育む授業づくり」とし、中高6年間を見通した教育課程、教育内容の改善を図ることとします。
- 人間が社会的存在であること、社会生活における物事の決定には対立が避けられないことを知り、合意に導くためには「効率」や「公正」の観点から考察することが有用であることを理解することが重要になります。そのため、現在鉄道会社ごとで対応が分かれている「女性専用車両は必要か」のテーマを設定し、その議論を通して、これらの対立に対して考察する体験をすることにより、社会での合意形成について理解し、社会人として自らの意見を持って「効率」と「公正」の観点から考え続けることができる人になるようにとの思いから計画しました。
単元づくりのポイント
目標
- 社会生活における物事の決定の仕方、決まりの意義に対する関心を高め、それらを意欲的に追究している。
【社会的事象への関心・意欲・態度】 - 社会生活における物事の決定の仕方、決まりの意義について多面的・多角的に考察し、その過程や結果を適切に表現している。
【社会的な思考・判断・表現】 - 社会生活における物事の決定の仕方、決まりの意義に関する様々な資料を収集し、有用な情報を適切に選択して、読み取ったり図表などにまとめたりしている。
【資料活用の技能】 - 社会生活における物事の決定の仕方、決まりの意義と、現代社会を捉える見方や考え方の基礎としての対立と合意、効率と公正などについて理解し、その知識を身に付けている。
【社会的事象への知識・理解】
展開
現代社会の見方や考え方(全6時間)
- 導入
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- 1
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社会集団の中で生きる私たち
- 展開
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- 2
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効率と公正
- 3
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「女性専用車両は必要か」について調べる
- 4
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「女性専用車両は必要か」について話し合う (本時)
- 5
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決まりを作る目的と方法
- まとめ
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- 6
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決まりの評価と見直し
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
- 「女性専用車両は必要か」について、効率と公正の観点から、意欲的に追究し、捉えようとしている。【社会的事象への関心・意欲・態度】
- 「女性専用車両は必要か」について、効率と公正の考え方を踏まえて、多面的・多角的に考察し、その過程や結果を適切に表現している。【社会的な思考・判断・表現】
授業場面より
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①グループ内で意見交流
前時までに学習した「効率」と「公正」の概念を復習した後に、4人組のグループで、自分が調べ、考えた意見を発表し合い、お互いの考えについて意見交流をする場面です。
教師は、意見交流を活発にするために、それぞれのグループをまわり意図的に対立の構図を作ります。
生徒は自分の意見を発表するだけではなく、他のメンバーの意見を聞きながら、自分の意見について考え直しています。 -
②任意の3人に発表
さらに、視野を広げるために、クラス内で、班員以外の3名に自分の意見を発表します。根拠が明確で説得力のある意見を伝えた相手にはシールを貼り意思表示をします。
生徒は、積極的に相手を見つけ、自分の意見を発表します。この取組は、自分から発表するという機会を増やす目的もあります。この積み重ねで、誰もが自分の意見を発表しやすくなります。 -
③全体討議
全体討議では、机をコの字に並び替え、議論がしやすい場の設定を行います。
教師は、ファシリテーターとして、子供たちの意見を聞き、ポイントを整理して板書していきます。
生徒は、根拠や出典を示しながら、自分の意見を表明します。また、出た意見に対して、賛成・反対の立場を明確にしながら、議論が進みます。最後には全体で「必要かどうか?」の挙手を行い議論を終えました。 -
④まとめ、振り返り
教師は出た意見をもとに議論の内容を振り返り、賛成反対それぞれに根拠がある中で、何らかの決定を下していかなければならない場面が、社会生活の中ではよくあることを確認します。今回の合意は、社会とは切り離された場面でのことではありますが、その様な判断を迫られる場面での合意形成の過程を体感したことを評価します。
生徒はその後、自分たちの活動を振り返ります。
生徒は、「効率」と「公正」の考え方を手がかりに、主権者として生きていく上での合意形成の方法を体感することで、学びが社会とつながり、深い学びに至りました。 -
振り返りの文章より
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報告者:研修協力員 山田