アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:岡山県立倉敷天城中学校
教科等:1年理科(平成27年11月)
単元名:音による現象

変数を意識し、仮説を立てたり、観察・実験の条件を考えたりすることで、観察・実験を構想する力を育てたい

  • 見通しを持つ
  • 協働して課題解決する
  • 知識・技能を活用する

実践の背景

  • 実践校は併設型中高一貫教育校です。適性検査を経て入学する生徒は、学習意欲が高く、高等学校で指定を受けているSSHの牽引役として活躍しています。
  • 授業を45分×7校時で行っています。学校独自の教科である「サイエンス」や総合的な学習の時間等を使い、3年次には、「課題研究発表会」を行い、全生徒が興味関心に応じて設定した課題を研究し、まとめた結果を教職員や外部の方の前で発表します。
  • 研究主題を「言語リテラシーを活かして、思考力・判断力・表現力を育む授業づくり」とし、中高6年間を見通した教育課程、教育内容の改善を図っています。

授業改善のアプローチ

  • 研究主題を「言語リテラシーを活かして、思考力・判断力・表現力を育む授業づくり」とし、中高6年間を見通した教育課程、教育内容の改善を図ることとしました。
  • 仮説並びに実験計画を自分たちで考える(実験を構想する)ことにより、実験操作の意味を考え、見通しをもって実験を進めることができるようになると考え、計画をしました。
  • 仮説が複数出るような課題を設定し、対話の必然性がある場面を設定しました。また単元の終末に学習内容のメタ認知を促進するための問いを設定しました。

単元づくりのポイント

目標

  • 音の性質に関する事物・現象に進んで関わり、それらを科学的に探究しようとするとともに、事象を日常生活との関わりで見ようとする。
    【自然事象への関心・意欲・態度】
  • 音の性質に関する事物・現象の中に問題を見いだし、目的意識を持って観察、実験などを行い、音の発生と伝わり方、音の高さや大きさと発音体の振動の関係などについて自らの考えを導き、表現している。
    【科学的な思考・表現】
  • 音の性質に関する観察、実験の基本を習得するとともに、観察実験の計画的な実施、結果の記録や整理などの仕方を身に付けている。
    【観察・実験の技能】
  • 音の発生と伝わり方、音の高さや大きさと発音体の振動の関係などについて基本的な概念や原理・法則を理解し身に付けている。
    【自然事象についての知識・理解】

展開

音による現象(全6時間扱い中第6時)

導入
1

音が発生するしくみを調べる

展開
2

音が伝わるしくみを調べる

3

音の伝わる速さを調べる

4

音の大小と高低を決める条件を知る

5

弦の振動と音の関係を調べる

まとめ
6

音の高低を変えている条件を調べる(本時)

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

(1)要因が複数考えられる現象で、仮説を設定し、検証する実験を計画することができる。【科学的な思考・表現】

(2)実験結果を分析し、解釈することで、音の高さを決めている条件を明らかにすることができる。【科学的な思考・表現】

授業場面より

  • ①「変数」(条件)について考える

    「変数」(条件)について考える画像

    水の入ったパイプに息を吹き込み音を鳴らす演示実験を見て、生徒がこの実験の場合の「変数」について考えている場面です。
      教師の「この場合の音の高低を決める変数は何が考えられる?」という問いかけに対し、生徒は各自じっくり考え、自分の考えをペアで確認し合った後、代表者が発表します。
      発表する時には、言葉だけではなく、具体物も使い身振りも交えながら多様な表現で伝わるよう丁寧に説明しています。

  • ②それぞれの仮説を検証する実験方法を考える

    それぞれの仮説を検証する実験方法を考える画像

    実験器具を手に取りながら、具体的な実験方法を考える場面です。
      教師は、個人、グループ、全体での思考と段階を追って考える時間を確保します。
      生徒は、実験仮説に対して、それぞれ具体的な実験方法を考え全体で発表(交流)します。質疑応答を経て、実験方法について全体で確定します。この場合、変数について、「水の量」と「空気の量」の2つの仮説が立てられ、それぞれの仮説を検証するための実験方法も考えました。

  • ③検証実験を行う

    検証実験を行う画像

    検証実験は、学習班を解体し、新たな実験班をつくり行います。
      2つの仮説に対して、教師は、それぞれの仮説の検証実験を行う実験班に組み替えます。
      生徒は実験班に移動しても、既習の方法と、学習班で立てた実験計画に沿って行うため、主体的に実験が行われました。また、実験結果は、学習班に戻った時に伝えないといけないので、記録も共有しています。

  • ④結果を持ち寄り、考察する

    結果を持ち寄り、考察する画像

    それぞれの実験班の結果を学習班に持ち寄り、どの仮説が正しかったかを追究します。
      生徒は、どちらの仮説が正しかったかを考察する過程で、それぞれ自分たちが行った実験結果を説明し、各々の考えを交流するため、対話の必然性が生まれます。
      教師は、検証する過程では、正しくない事が分かる実験を行うことも意味のあることだと伝えます。

  • ⑤考察結果を発表する

    考察結果を発表する画像

    考察結果をクラス全体で発表する場面です。
      教師は、全体での発表の仕方や発表の聞き方などについても意識するよう、生徒に働きかけます。
      生徒は、考察結果を発表する時、実験結果を伝えるだけではなく、図表を使い、指し示しながら、分かりやすく伝える工夫を意識しています。聞く側は、自分の考察と比較しながら追加の記入をするなどします。

  • ⑥振り返りを記述し新たな問いを解決する

    振り返りを記述し新たな問いを解決する画像

    生徒は、めあて(本時のねらい)にそって授業の振り返りを記述します。
      教師は、メタ認知を促進するための追加質問として「1mのパイプに水を入れ、演示実験で使ったパイプと同じ高さの音を出すためには、どれだけ水を入れますか?」を問います。
      生徒は、本時に学習した「音の高低につながる変数は空気の量」という考察結果を使って考え、「空気の量が等しくなるために、パイプに入れる水の量をこの位置まで入れることにより同じ高さの音を出すことができる」という答えを出しました。

報告者:研修協力員  山田