アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:由利本荘市立西目中学校
教科等:2年社会科(平成28年11月)
単元名:日本の諸地域 近畿地方~歴史的背景を中心とした考察~
社会的事象を多面的・多角的に捉え、考察する力を育成したい
振り返って次へつなげる
多様な情報を収集する
自分の考えを形成する
実践の背景
- 実践校は「立志の学校」です。高い志を持ち、将来に渡って力強く生き抜く人間を育てることを理念としています。また、コミュニティ・スクールとして、地域とともに学校づくりを進めています。
- 開発実践フィールド校として、全職員でアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善に取り組む過程を、県教育委員会・市教育委員会・県総合教育センターと連携し、推進地域に公開をしながら進めています。
- 学校で育てたい資質・能力を全職員で話し合い、それに向けて各教科で具体的な取組を積み重ね、取組を日常化シートに教師の手立てと子供の変容について記入し、共有、検証しながら研究を進めています。
授業改善のアプローチ
本単元では、学習指導要領に示された七つの考察の仕方のうち、「歴史的背景を中核とした考察」によって近畿地方の地域的特色を捉えていきます。本授業では、歴史上、政治や文化の中心として機能してきた近畿地方の中から、京都を取り上げます。京都は歴史的文化財が多いことから、地域の産業や住民の生活が歴史的事象と深く関わっていることに注目し、既習の地域と比較することによって、特殊性を見いだせるようにしていきます。また、京都では歴史的景観を守るための取組が行われる一方で、歴史的背景の保護の必要性を考える立場や住民生活の利便性を考える立場等、立場の違いから意見の相違が生じている事実もあります。多様な資料を活用し、様々な立場から社会的事象について話し合うことで、社会的事象を多面的・多角的に捉え、考察する力を育成したいと考え、本授業を構築しました。
単元づくりのポイント
目標
- 近畿地方の地域的特色を、歴史的背景と関連付けながら意欲的に追究し、捉えようとすることができる。
【社会的事象への関心・意欲・態度】 - 近畿地方の産業や人々のくらしの特色やその課題を、歴史的背景と関連付けながら考察し、適切に表現することができる。
【社会的な思考・判断・表現】 - 近畿地方の地域的特色を示した資料を取捨選択し、適切に情報を読み取ったり、図や表にまとめたりすることができる。
【資料活用の技能】 - 近畿地方の地域的特色には歴史的背景が関わっていることや、近畿地方の景観を守るための取組が行われていることを理解できる。
【社会的事象についての知識・理解】
展開
- 1
- 統計資料や地図、年表などの資料を活用し、近畿地方の特色を見いだす。
- 2
- 複数の資料を読み取り、それらを関連付けて考察することを通して、京都市で景観が保護されている理由について歴史的背景から捉え、保護の必要性とその課題を考察する。(本時)
- 3
- 複数の資料を読み取り、それらを関連付けて考察することを通して、近畿地方の工業と歴史との関連性を見いだし、現代の発展につながっていることを理解する。
- 4
- 複数の資料を読み取り、それらを関連付けて考察することを通して、近畿地方の商業が歴史的背景から発展してきたことを理解する。
- 5
- 近畿地方の課題を資料から見いだし、問題点を指摘し、その克服に向けての策を提案する。
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
京都市で景観が保護されている理由を歴史的背景から捉え、保護の必要性とその課題を考察することができる。
授業場面より
-
①なぜ景観を保護しているのか予想をする
教師は、地名を伏せて京都にある看板や商業施設の画像を複数提示し、生徒が色やデザインに注目できるようにしていきます。また、なぜ景観に配慮がなされているのか予想した生徒の発言や、自分の生活する地域と比較して考えている生徒の発言を共有していく中で、「なぜこのような地域的特色が見られるのだろうか」という生徒が社会的事象から見いだした問いを追究していく授業を構築しました。
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②複数の資料から自分の考えを持つ
自分の考えを形成するために資料を選択し、意見を交流する場面です。教師は、社会的事象の特色や相互の関連、意味を多面的・多角的に考察することができる資料を準備し、生徒が自由に考えを相互交流できる学習形態を工夫しています。このような支援が、資料を活用し、友達と意見を交流しながら、異なる立場から社会的事象を考察して自分の考えを形成していこうとする姿につながっていきました。
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③資料を活用し、様々な立場から景観保全について話し合う
交流して考えたことについて全体で話し合う場面です。教師は、景観保全について、個々が考察した立場を明確にした話合いができるように、学習隊形を円形にし、机の前に考えのキーワードを提示するように促しました。また、生徒がそれぞれのキーワードを見て、詳しく考えを聴いてみたい生徒に発言を求める話合いを取り入れました。話合いの中で、教師は生徒の発表内容をつないだり、問い返しをしたり、意味付けをしたりしていきます。このような教師の支援が、生徒が主体的に社会的事実を多面的・多角的に考察する姿につながりました。
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④多面的・多角的に事象を捉える大切さを自覚する
学びを振り返る場面です。生徒の振り返りには、「たくさんの資料を基に、友達といろいろな立場から考えることで、生活の利便性を守ることも、歴史的な景観を守ることもどちらも大切なんだということについて深く考えることができました。」ということが記述されていました。この記述から、生徒が、歴史的な背景を中心とした考察をしながらも、いろいろな立場から事象を捉えていく大切さについて自覚してきていることが分かりました。
報告者:研修協力員 稲岡