アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:安曇野市立三郷中学校
教科等:2年音楽科(平成28年6月)
題材名:うちらのクラス合唱曲を創り上げよう!

生徒と共に音楽の楽しみや魅力を分かち合うために

  • 興味や関心を高める興味や関心を高める
  • 互いの考えを比較する互いの考えを比較する
  • 新たなものを創り上げる新たなものを創り上げる

実践の背景

  • 学校教育目標「豊かな心を持ち、辛抱強く自分を鍛え、自ら学ぶ生徒になろう」の具現を図るため、「生徒も教師も成長し合える学校」を目指して授業改善を積み重ねています。
  • 本年度は、生徒同士が聴き合える雰囲気の形成、グループ学習において対話の目的を明確にすること、個人・グループ・全体の各学習場面における教師の役割を重点に据え研究を深めています。
  • 同じ校区の小学校との合同研修会(授業公開を含む)を開くなど、地域の子供たちの育ちを同じ目線で見つめ、小学校6年間、中学校3年間の学びをつなげようと努めています。

授業改善のアプローチ

  • クラスや学年、全校の仲間と合唱を創り上げる喜びを味わっている本校の生徒は、文化祭で合唱することを心待ちにしています。この背景には、音楽科の授業にとどまらず、全校音楽集会や学年音楽集会においても、生徒が主体的に合唱に関わり歌声を創り上げられるような支援の積み重ねがあります。
  • 中でもクラス合唱に寄せる思いは強く、音楽科教科会がクラスの実態に応じて選んだ数曲を提示し、生徒と共に1曲を決め出すという学習活動を設けています。この工夫は、生徒が音や音楽と切実感を持って出合い、心から楽しむなど主体的に関わっていく姿につながっています。また、生徒同士が互いの多様な価値感を認め合いながら協働し、自己表現とともに自己を形成する学びも実現されます。

題材づくりのポイント

目標

  • クラスの特徴を生かした合唱を創り上げるため、パート練習や全体練習で仲間と意欲的に取り組むことができる。
    【音楽への関心・意欲・態度】
  • 合唱表現の工夫を通して、曲のイメージに合った発声で発音や強弱の工夫をしながら歌うことができる。
    【音楽的な感受や表現の工夫】
  • 担当するパートの旋律を把握し、豊かに響く発声で正確な音程で歌うことができる。
    【表現の技能】
  • 混声合唱の豊かなハーモニーを聴き取り、味わうことができる。
    【鑑賞の能力】

展開

第1次  うちらのクラス合唱曲はこれだ!(2時間)
  • 教師が提案した数曲を鑑賞し、合唱コンクールで歌いたい曲を精選する。本時
  • 精選した曲を歌い比べてイメージをつかみ、クラスの特徴を生かした1曲を決め出す。
第2次  パートの音を確実に取ろう!(2時間)
  • パートリーダーを中心に練習をする。
  • 各パートの音を確実に取りつつ、みんなで歌いたいイメージをすり合わせる。
第3次  曲にふさわしい表現を創り上げよう!(2時間)
  • 楽譜を基にして歌いたいイメージを語り合いながら、強弱や発音など、表現の工夫をする。
  • 録音した演奏を聴くなどして、表現の工夫を確かめる。
第4次  うちらのクラス合唱曲を振り返ろう!(1時間)
  • コンクール当日のビデオを視聴し、クラス合唱を創り上げてきたプロセスを仲間と共に振り返る。

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

複数のクラス合唱の候補曲を聴き比べた生徒が、グループやクラス全員で選んだ理由を音楽的な特徴に関連づけて伝え合うことを通して、クラスとして創り上げたい合唱のイメージを共有し、次時の歌い比べに向けた意欲を高めることができる。

授業場面より

  • ①先生、新しい候補曲を聴かせて!

    先生、新しい候補曲を聴かせて!画像

    1次投票の結果を聞いた後(A)、教師に新しい候補曲をリクエストする場面です(B)。「うちらのクラス合唱曲」を納得ずくで選ぼうとする切実感の現れです。この言葉を待ち受けていた教師は「みんなのイメージにふさわしい曲に出合いたいもんね」と生徒と今の気持ちを分かち合った後、新しい候補曲を流しました。生徒は学習プリントに感想を綴りながら聴き浸ります(C)。生徒はこれまでの学習経験を生かして、各候補曲の要素の働きや音楽的な特徴を比べつつ、クラスの仲間と創り上げたいイメージを関連づけながら感想を記述しました。

  • ②グループで推薦曲を選ぼう!

    グループで推薦曲を選ぼう!画像

    4人グループで感想を交流する場面です(D)。教師は互いの感想を言葉や音楽で伝え合うことで、各候補曲の音楽的な特徴を客観的な根拠として共有することをねらっていました。「曲に感情を込めたい」と願っていたこのグループでは、「練習のしがいがある曲はどれか」という観点で話し合いを深めていました。「最初の部分は音を取るのが難しそう」「でも、そこにやりがいがある」、生徒たちは次第に学習プリントの記述から離れ、互いに目を見合わせながら語り合います。自分が歌いたい曲から「うちら」が歌いたい曲へのすり合わせが行われました。

  • ③選んだ根拠をみんなで共有しよう!

    選んだ根拠をみんなで共有しよう!画像

    クラス全員でグループごとの推薦曲と理由を聴き合い、候補曲を精選する場面です(E)。「曲が短いし、同じフレーズが繰り返される。曲を極められると思う」「だんだん盛り上がっていく部分がいい」「男声パート、女声パート、それぞれの声を生かすことができる」「私たちのクラスは男子の声量が大きいので生かすことができる曲だと思う」。教師は発言内容から音楽的な特徴を聞き取って板書することで、生徒はそれらを客観的な根拠として考え合うことができました。次第に曲が絞り込まれ、3曲が候補曲として意識されるようになっていきます。

  • ④次の時間は歌い比べてみよう!

    次の時間は歌い比べてみよう!画像

    候補曲が3曲に絞り込まれたことを把握した教師は「じゃあ、次の時間に歌い比べてみようよ」と誘います。生徒は「待ってました」と言わんばかりに深くうなずきました(F)。本時では感想を言葉で伝え合う場面が多く見られましたが、教師は言葉での交流に留まることなく、歌うことを通して音楽的な特徴を共有・共感する活動を重視していますが、その活動が必要感に根ざしたものであることを願っています。授業後、歌いながら音楽室を出ていく生徒が多く見られました。次への見通しを確かに持ち、歌い比べることを待ち遠しく思う姿だと考えられます。

報告者:研修協力員  谷内