アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:大田区立矢口小学校
教科等:2年生活科(平成28年7月)
単元名:大すきいっぱい  わたしのまち

地域の中で気付いたことを、伝えたり、交流したり、振り返ったりして表現する力を育みたい

  • 振り返って次へつなげる
  • 思考を表現に置き換える
  • 知識・技能を活用する

実践の背景

  • 実践校は、全員で研究授業をつくる校内体制を整え、組織的に校内研修を行うことを通して、指導力の向上を図っていくことを重点に掲げ、日々授業改善を図っている学校です。
  • 『自ら課題をつかむ授業』を通して、「課題を発見していく力」、「見通しを持って、自ら考えていくことができる力」、「学んだことを振り返ることができる力」の育成を目指しています。

授業改善のアプローチ

  • 学区内にある二つの町を探検し、地域の人々や様々な場所とかかわり合う体験活動と、言葉による表現活動を充実する学習活動を通して、「気付いたことを伝えたり、交流したり、振り返ったりしながら自分自身や自分の生活について考え表現する力」を育んでいきたいと思い、本単元を構成しました。
  • 生活科で町探検を行った後、そこで、見付けた物や場所、人を紹介する文章を書く学習活動を国語科で設定し、生活科での学習の成果を他教科に生かしていきました。
  • 本時は、町探検での各自の気付きを交流し合い、「自分たちが見た施設の最も印象に残ったこと」を決める学習です。個人の気付きをグループ間で交流する機会を意図的に設けたことで、国語科で育まれた、『互いの話を集中して聞き話題に沿って話し合う力』を発揮し、町探検での気付きを活発に意見交換し合う姿に繋がっていきました。このように、他教科の学びを生かしたり、生活科の学びを他教科に生かしたりすることで、表現する力を育んでいこうとしました。
  • 交流の場面では、町探検で見たことや聞いた様々な事柄を伝えたり、振り返ったりしながら、意見や思いの共有、相違点の発見ができるよう、町探検での気付きは付箋紙に書き出せるようにしました。
  • 「施設の最も印象的なこと」を決めるために、画用紙の真ん中に線を引いたシートを活用しました。児童は、そのシートを用い、付箋紙を操作しながら、共通点をまとめたり、優先順位を付けたりしながら、施設の最も印象的な場所を決めていくことができました。

単元づくりのポイント

目標

  • 自分の生活は地域で生活したり働いたりしている人々や様々な場所と関わっていることが分かる。
  • 地域の人々や場所に親しみや愛着をもち、人々と適切に接することや安全に生活することができる。

展開

第一次
1
  • 生活経験を基に、自分がよく行く場所や好きな場所、遊ぶ場所などをカードに書く。
  • グループ、全体で、様々な場所や人を想起し、カードに書き足す。
2
  • グループで似ている場所や違う場所を仲間分けする。
3
  • 行く場所について、見てきたいことや体験してみたいことを書き、グループで話し合い、ホワイトボードにまとめる。
第二次
4
  • 線路の向こう側の地域を探検して、見付けた物や人、場所などをメモする。
5, 6
  • 線路の向こう側の町探検で分かったことを紹介する文章を書く。
7
  • 幹線道路の向こう側の地域を探検して、見付けた物や人、場所などをメモする。
8, 9
  • 幹線道路の向こう側の町探検で分かったことを紹介する文章を書く。
10
  • 駅前商店周辺の地域を探検して、見付けた物や人、場所などをメモする。
11, 12
  • 駅前商店街周辺の町探検で分かったことを紹介する文章を書く。
第三次
13
  • 行きたい場所を選ぶ。
    ○郵便局 図書館、保育園 児童館
  • 選んだ場所について、見てきたいことや体験したいみたいこと、そこで働く人に質問したいことを書く。
14
  • 選んだ場所を探検して、見付けた物や人、場所などをメモする。
  • 施設で働く人に取材する。
14
  • 施設探検で分かったことを紹介する文章を書く。
第四次
16, 17
  • 町探検を基に、施設にあった物や場所を付箋紙に書き出し、グループで交流する。
  • 施設にあった物や場所の中で、最も「すごい」、「なるほど」、「いいね」と思うことをグループで話し合い、気付きを振り返る。
18(本時)
  • 町探検を基に、施設について分かったことや気付いたことを付箋紙に書き出し、グループで交流する。
  • 施設について分かったことの中で、最も「すごい」、「なるほど」、「いいね」と思うことをグループで話し合い、気付きを振り返る。
19, 20
  • 町探検を通して関わった人への手紙の表紙を書く。
  • 町探検を通して関わった人への手紙の本文を書く。

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

町探検で分かったことを基に、気付いたことや気に入ったことを考え、付箋紙に書いたり友達と話し合ったりして表現することができる。

授業場面より

  • ①本時の見通しを持つ

    本時の見通しを持つ画像

    本時は、町探検で最も印象に残ったことを「キャッチコピー」で表す学習です。町探検でお世話になった人に書く手紙の表紙に書く「キャッチコピー」の例を導入で教師は示しました。そして、「どんなことを書いてあげたらよいかな」と問い、児童のイメージを膨らませていきました。
      「分かったこと」、「気付いたこと」、「教えてもらって初めて知ったこと」と児童は、書く内容についてつぶやいていきました。
      教師は、「そうだね。そうやってキャッチコピーをつくって表紙に書いたら、施設の人も『話してよかった』『話したことが伝わった』って思うよね」と児童の発言を価値付けます。これにより児童は、「自分たちの見たこと、聞いたことを基に、表紙のキャッチコピーを考える」と活動の見通しを持ち、町探検について、交流したり、振り返ったりしながら、進んで学習に取り組んでいきました。

  • ②町探検での気付きを振り返る

    町探検での気付きを振り返る画像

    町探検で得た情報を付箋紙に書いている様子です。児童は、前述した視点を基に情報を整理していきます。教師は、後にグループで話し合いの際に、自分たちの気付きを操作しながら、交流できるよう、町探検で得た情報を書いたワークシートから、選んだ情報は付箋紙に書くようにしました。
      児童は、ワークシートを見ながら、町探検について、振り返ります。そして、
      「郵便局には一日、4000通も手紙が集まる」、「24時間、郵便局があいている」等、見たこと、聞いたことから印象に残ったことや分かったことを選び出していき、グループでの交流に繋げていきました。

  • ③グループで意見をまとめる

    グループで意見をまとめる画像

    自分たちの気付きを交流していく場面です。「特に印象に残ったこと」を選んでいくために、教師は
      画用紙の真ん中に線を引き、二つに分けた画用紙をワークシートとして活用しました。そして、①のような言葉を掛けや話し合いの流れを掲示し、活動の方向性を示しました。
      児童は、見たこと、聞いたことから得た気付きを伝え合い、付箋紙に可視化した自分たちの気付きを比較したり、分類したりしながら
      「自分たちの一番印象に残ったこと」を決めていきました。

  • ④自分たちのキャッチコピーを紹介し合う

    自分たちのキャッチコピーを紹介し合う画像

    選んだキャッチコピーを全体で発表している場面です。教師はただ発表するのではなく、選んだ理由をしっかりと話すよう条件を加えました。「ぼくたちの班は、『1日にあつかっている郵便物の数は11万通』にします。理由は、郵便局で見たり、聞いたりした中で一番印象に残っていて、それを表紙の言葉に付ければ、もらう人たちもうれしいと思うからです」と選んだ理由の根拠を含めて発表することができました。「キャッチコピー」を考えることを通して、相手の気持ちに立って、学習を振り返っていくことができました。これにより、
      「町探検でお世話になった方に思いを込めて手紙を書きたい」  という思いへと結び付けていくことができました。
      授業後の振り返りでは、
      「今まで、郵便局の建物について考えたことがなかったけど、郵便局があんなに大きな建物だったのは、たくさんの郵便物が集まるからだと分かりました。」
      と、自分たちの地域にある郵便局について、新たな気付きを見いだしていきました。

報告者:研修協力員  佐藤