アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:大田区立馬込小学校
教科等:5年体育科(平成30年1月)
単元名:ボール運動(ネット型 ソフトバレーボール)
ゲームを通して見出した課題を仲間と共に考え、課題を解決していく力を育みたい
振り返って次へつなげる
思考を表現に置き換える
知識や技能を活用する
実践の背景
- 実践校は「考える子供」の育成を目指し、基礎的な学力をしっかり身につけさせ、思考力、判断力、表現力などの課題解決能力を培うために授業改善を図っている学校です。
- 他者と協力しながら様々な問題や課題に前向きに取り組み、児童によるディスカッション、グループワーク、プレゼンテーションなど、能動的な学習を取り入れた児童主体の参加型授業であるアクティブラーニングを様々な授業で展開している学校です。
- 児童の基礎的・基本的な学力の定着と向上のために、校内研究・研修の活性化を図り、 経験年数の浅い教員を対象としたフレッシュ研やOJTを進めることで、組織的に授業改善を進めている学校です。
授業改善のアプローチ
- 全7時間の単元を「ゲーム中心」で構成しています。単元の前半はゲームを通して規則を理解し確認しながら、チームのよさや特徴を掴むことを目指しました。その中で、効果的な作戦に気付いて共有し、みんなが得点をとる楽しさを味わえるようにしました。
- 単元の後半ではチームごとに課題に応じた練習の仕方を選び、チームの練習がゲームで活用できるようにしました。たくさん得点するためにチームの仲間と一緒に作戦を練ったり、相手に得点を与えないような守り方の工夫をしたりして、自分たちのチームの特徴を生かしたゲームができることを目指しました。
- チームの時間で考えた動きや作戦をゲームで活用することを大切にするため、単元を通して一単位時間の流れを「チームでの練習→ゲーム1→チームでの練習→ゲーム2」としました。
- チームの時間で話合いを活性化するために互いの考えが可視化され、操作できる作戦ボードを用意しました。これをゲームとゲームの合間に活用することで新たな課題を立てて、次のゲームに生かしていけるようにしました。
単元づくりのポイント
目標
【技能】
- 片手、両手を使ってボールを相手コートに返球することができる。
- ボールの方向に体を移動させたり、体を向けたりすることができる。
【態度】
- ネット型のゲームに進んで取り組むことができる。
- 規則を守り、友達と励まし合って練習やゲームをしたり、ゲームの勝敗の結果を受け入れたりすることができる。
- 用具の準備や片付けを友達と一緒にすることができる。
【思考・判断】
- ネット型ゲームの行い方を知り、楽しくゲームを行うことができる。
- プレーヤーの数やコートのつくり、プレー上の制限、得点の仕方、ゲームや練習をするときの規則を選ぶことができる。
- チームの特徴を知り、それに応じた作戦を選ぶことができる。
展開
- 1
-
- 単元を通して学ぶことや運動の行い方、進め方を知る
-
- オリエンテーション
- 準備運動
- ゲームにつながる運動
- ゲーム
- 整理運動
- 振り返り
- 用具の片付け
- 2〜4
-
- ゲームを通して、ルールや動きを知り、チームの特徴を掴む
-
- 本時の学習内容の確認
- 準備運動
- ゲームにつながる運動
- ゲーム
- 整理運動
- 振り返り
- 用具の片付け
- 5〜7(本時は第6時)
-
- チームの特徴を生かして作戦を選んで取り組む
-
- 本時の学習内容の確認
- 準備運動
- ゲームにつながる運動
- ゲーム
- チームの時間
- ゲーム
- 整理運動
- 振り返り
- 用具の片付け
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
【技能】チームの作戦やゲームの状況に基づいたボール操作ができる。
ボールの方向に体を向けて、攻撃につながりやすい場所でボールを受けることができる。
【態度】励ましの声を掛け合うなど、友達と助け合って練習やゲームを行っている。
【思考・判断】チームのよさを生かした作戦を選んでいる。
チームの課題に合った練習を行っている。
授業場面より
-
① 「投げるスピードやボールの高さ変えてみて」
①導入の場面です。教師は本時の目標「作戦をえらんでゲームしよう」について簡潔に説明し、児童と共有しました。その後、本時で扱う身体の部位を中心に準備運動を行いました。「手首はよく使うからしっかり回そうね」等言葉を掛けることで、けがの防止や安全に運動する意識を育んでいきます。②ゲームにつながる練習ではボールのキャッチ、トスの動きの練習を行いました。「低い位置に速いスピードで投げて」、「次はフワッと、上に投げて」等実際のゲームで起こりうるボールの軌道やスピードを考え、それを見据えて練習を行うことができました。このことがゲームにおいて「キャッチ、トス、アタック」の連係プレーを意識した攻撃につながっていきます。
-
② 「連係プレーで得点をとろう」
ゲーム1に取り組んでいる場面です。教師は一単位時間の中でチームでの課題の解決を図っていくことができるよう、展開をゲーム1→チームでの時間→ゲーム2の流れで行いました。連係プレーによる攻撃が成り立ちやすいようにするため、使用するボールはやわらかくて軽い素材にし、やレシーブではなく手でボールをキャッチできるようにすることにしました。このような教具やルールの工夫により、児童は前向きに運動に取り組んでいくことができます。それが①ゲームの前にチームごとに円陣を組み、自分たちの作戦を確認する姿となって表れます。②「ボールをつないでアタックまで行って得点をとる」ために、相手のいないところをねらう作戦にした黄色チームは、チームの時間の練習を生かしながらボールをつなぎ、連係プレーによる攻撃を行っていきます。しかし、逆にコートの空いている所を狙われ、得点を取られてしまうシーンも多く見られました。
-
③ 「コートの空間をなるべくつくらないようにしよう」
チームの時間の場面です。①教師は、マグネットで操作できる作戦ボードを用意しました。ゲーム1での動きを可視化し操作しながら、動きを確認しゲーム1での課題を見出しやすくするためです。また、話合いを俯瞰し、適宜必要な言葉をグループごとに掛けていきました。児童はマグネットを操作しながら「コートの空いている所にボールが落ちている。前にボールが行ったときはこの人が動いて・・・」等とコートの外から見ていたチームの仲間からのアドバイスも聞きながら、作戦ボードで動きを確認します。②その後、ボードで確認した動きをコートで試します。実際に動くことにより「コートの空間をなるべくつくらないようにしよう」、「前の人と後ろの人の距離を縮めて守ろう」、「相手がどこにねらってくるかよく見て素早く動こう」と動きながらアイデアを出し合い、より具体的な課題の解決方法が見付けていきました。このように、ゲーム1で見付けた課題をチームの時間で修正し、ゲーム2につなげていくことができました。
-
④「間をせまくしてボールが落ちないようにしよう」
ゲーム2の時間です。教師は、ゲームの前にチームの時間で話し合ったことを再度確認するよう伝えます。①コートに空間をつくらないように、コートの前と後ろの人の距離を縮め、陣形を整えながら相手の攻撃に備えたこのチームは、「後ろはぼくがとるよ」と声を掛けたり仲間の動きを見たりしながら、守備を意識したゲームを展開します。また、コートの外からも「次は後ろねらってくるよ」、「前があいてるよ」等、チームの仲間の動きを見て助言することでゲームに関わっていきます。これによりコート後方へのボールやネット際のボールへの対応もしっかり行うことができ、ゲーム1で見付けた課題を解決していくことができました。②振り返りの時間では、「声を掛けたり、仲間の動きを見たりするようになってボールがコートに落ちなくなりました。アタックはうまく打つことができるけれど、守備はまだできないので、次の時間は積極的にボールを拾いにいきたいです。」と運動を「する」だけでなく、「見る」、「支える」視点からも捉え、できるようになった喜びを振り返ることができました。また、次時に向けての目標を見出すこともできました。
報告者:研修協力員 佐藤