アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:由利本荘市立西目中学校
教科等:2年国語科(平成29年6月)
単元名:言葉と向き合う ~新しい短歌のために~
先人の思いに、言葉を介して対峙し、現在の自分たちと結び付けながら、未来へと自分たちの学びを発信していきたい
自分と結び付ける
先哲の考え方を手掛かりとする
自分の考えを形成する
実践の背景
- 実践校は「立志の学校」です。高い志を持ち、将来に渡って力強く生き抜く人間を育てることを理念としています。また、コミュニティ・スクールとして、地域とともに学校づくりを進めています。
- 開発実践フィールド校として、全職員でアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善に取り組む過程を、県教育委員会・市教育委員会・県総合教育センターと連携し、推進地域に公開をしながら進めています。
- 学校で育てたい資質・能力を全職員で話し合い、それに向けて各教科で具体的な取組を積み重ね、取組を日常化シートに教師の手立てと子供の変容について記入し、共有、検証しながら研究を進めています。
授業改善のアプローチ
- 豊かな表現力や言語感覚を養うために、著名な短歌作品に触れることを大切にするだけでなく、子供自身が実際に言葉を紡ぎ、表現を練る創作活動が有効であると考えました。そこで、短歌の創作活動やその解釈・推敲をする言語活動を中心に据え、単元を構築しています。
- 実践校が70周年を迎えるに当たり、70年間歌い継がれてきた校歌に着目し、そこに込められた情景や思いを短歌に表すことを目的として創作を行います。校歌の歌詞が五音、七音で構成されていることの驚きを原動力としながら、先人の思いに、言葉を介して対峙し、現在の自分たちと結びつけながら考えます。さらには未来へと自分たちの学びを発信する活動として本単元を位置付けています。
単元づくりのポイント
目標
- (1)短歌を詠む楽しさや豊かな言葉の世界に触れ、短歌の音律や表現の美しさを味わおうとしている。
【国語への関心・意欲・態度】 - (2)短歌に詠まれた情景や作者の思い、イメージについて読み取ったことを交流し、自分のものの見方や考え方を深めることができる。
【読むこと】 - (3)心情や情景が伝わるように、表現のしかたを工夫して短歌を創作することができる。
【書くこと】 - (4)語句の意味や効果的な使い方、表現技法などを吟味・使用することで語彙を増やし、語感を磨くことができる。
【伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項】
単元の目標
- 1
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- 短歌の基礎知識について確認する。
- テーマごとに分類された短歌を読み、それぞれの大意を理解する。
- 2
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- 短歌の魅力について考える。
- 短歌を鑑賞する際の観点としてまとめる。
- 3
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- 校歌からイメージした情景や思いを百字程度で文章化する。
- 校歌を通して地域や先人と向き合い、現在や未来と関連付けて短歌に再創造する。
- 4(本時)
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- 創作した短歌についてよいものを根拠とともに選ぶ。
- 選評について話し合い、ベスト3を選出する。
- 5
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- 選んだ3作品にさらに推敲を加えて改作する。
- 短歌と画像を合わせて作品を完成する。
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
観点に基づいた作品の選評を交流することで、短歌のよさや魅力を味わっている。
授業場面より
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①前時までの学習内容を振り返り、本時の学習課題を確認する
教師は導入で、由利本荘市立西目中学校の歴史のつながりを受け継ぎ、未来に残す作品としての短歌の選出であることに触れ、本時の学習の方向付けを図ります。
また、選評の基準を生徒が意識できるよう、前時までに短歌の魅力として挙げられた既習事項を観点(①言葉の選び方、②リズムのよさ・響き、③遠回しの表現・想像性、④表現技法の効果、⑤共感しやすい・印象的、⑥場面の様子や心情の伝わり方、⑦違った視点・発想の面白さ)として生徒と共有しました。このような教師の支えにより、生徒は自分がよいと思った作品について観点を意識し、自分たちの地域、生活と結びつけながら考えていくことができました。 -
②選んだ短歌のよさを発表し合う
作者の名前を伏せた生徒の作品の中から自分が未来に残す作品として、選んだ根拠を伝え合う場面です。教師は、選んだ作品ごとのグループにすることで、その作品のよさや特徴を客観的かつ多面的に味わえるようにしました。また、1人しかいなかった作品については、互いに選評を交流し合うようにしました。このグループでは、右記の短歌について、観点を意識しながら「上の句の初句、二句、三句にそれぞれ色が入っていて、印象的だ。」、「西目の特徴的な風景に合う色を意図的に入れているから情景がよく伝わる。」、「愛し、愛されという言葉の選択がいい。私たちも西目を愛しているし、自然から愛されながら育っていくのが分かる。」等対象と言葉、言葉と言葉の関係性に着目しながら作品を選評した根拠を共有していきました。
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③選評理由を明確にする
全体に選評したことを紹介するために、グループでの選評の理由を明確にしていきます。①教師は、対象と言葉、言葉と言葉の関係や言葉の使い方等より具体的な根拠となるように考えを絞り込むよう助言しました。②あるグループでは「育つ」という言葉と対象との関係性について再度考えていきました。じっくり言葉と向き合い、「句に、『共に』という言葉がなくても私たちは自然を愛し、愛されながら自然と共に育っていくということが想像できる。」と選評の理由をワークシートに書き記しました。
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④グループごとに選出した作品を選評とともに全体に紹介する
その後、グループごとに選出した作品を選評と共に全体に紹介しました。教師は、生徒が話合いを通して、考えを発展させたり合意形成を図ろうとしたりすることができるように、決定までの話合いの進行を生徒に委ねます。そして、必要に応じて短歌のよさや魅力として挙げた観点が相互関係にあることに気付くことができるように支援しました。これにより生徒は、出された作品について観点に基づいた作品の選評を交流し、それぞれの短歌のよさや魅力を味わいながらベスト3を決定していきました。
終末の振り返りの言葉から、短歌の創作や選評を通して、短歌における効果的な言葉の選択や表現方法、心情について捉え、言語感覚を磨いたり、自らの創作や言語生活に役立てたりする力や短歌における自己のものの見方や考え方を広げたり、深めたりし、作品をより解釈、創作する力が育まれてきていることが伺えました。
報告者:研修協力員 佐藤