アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:福岡県立光陵高等学校
教科等:1年保健体育科(体育)(平成29年10月)
単元名:球技 バレーボール

役割に応じたボール操作とゲーム中の連携した動きへの技能を育成したい

  • 粘り強く取り組む
  • 協働して課題解決する
  • 知識・技能を習得する

実践の背景

  • 実践校は、普通科高校で、卒業後は大学及び専門学校に進学する生徒がほとんどです。
  • 校訓は、「誠実・自主・創造」であり、誠実にして自主性・創造性に富んだ人間の育成を目指しています。
  • 生徒は、教師の説明を熱心に聞き、指示を受けた場合は的確に行動できます。さらに、自ら考えて行動に移すことや学習した内容を別の場面で発揮することを今後の課題にしていきたいと感じている生徒もいます。

授業改善のアプローチ

  • 前項の背景を踏まえ、研究テーマを「能動的学習による基礎的・基本的学力の定着のための授業改善」と定めました。
  • 単元内で、特定のスキルについて随時教師がテストを行い、合格した生徒をST(スモール・ティーチャー)に任命します。「ST学習」を学習過程に位置付け、そこでSTが他の生徒に助言を与えながら練習します。STは他者に教えることを通して、他の生徒はより身近な存在から密に教わることで、技術の向上を図ることができ、自己有用感や自己効力感が高まると考えました。
  • 単元の序盤と終盤に、様子を動画で記録し比較します。自身の姿を動画で確認することで、よさや課題に気付くことができ、練習に活かすことができると考えました。さらに、前後で比較することで、自己の成長に気付くことができます。また、視聴を全員で行うことで成長を共有し、他者から承認を得ることで自信をつけさせることができると考えました。

単元づくりのポイント

目標

  • 勝敗を競う楽しさや喜びを味わい、作戦に応じた技能で仲間と連携したゲームが展開できるようにすることに自主的に取り組もうとしている。
    【関心・意欲・態度】
  • 学習した知識や技能を活用して、チームや自己の課題に応じた運動の取り組み方を工夫することができる。
    【思考・判断】
  • 役割に応じたボール操作と連携した動きによって空いた場所をめぐる攻防を展開することができるようにする。
    【運動の技能】
  • 技術の名称や行い方、体力の高め方、課題解決の方法、競技会の行い方を理解することができる。
    【知識・理解】

展開

全15時間

1 単元の見通しを持とう 1時間

2 どれくらいできるか試してみよう(試しのゲーム) 1時間

3 役割に応じたボール操作ができるようになろう 4時間【本時】

4 ゲームで3段攻撃ができるようになろう 6時間

5 学習した成果を発揮しよう(ゲーム) 2時間

6 振り返りをしよう 1時間

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

  • 学習した知識や技能を活用して、チームや自己の課題に応じた運動の取り組み方を工夫し、教え、教わりながら練習に取り組むことができる。
  • 狙った場所にコントロールしてボールを上げることができる。

授業場面より

  • ①本時の見通しを持つ

    本時の見通しを持つ画像

    教師は、前時に取り組んだ直上パスと2人組パスについての評価を名札でホワイトボード上に示しています。生徒はこれを確認するとともに、課題を達成できたら特別ルール(バドミントンコートとネットを使用、1チーム4人で何度触れてもよいなど)のゲーム①に移ることを聞きました。そうすることで、自身が本時に何を目指すか明確になるとともに課題を早くクリアしたいという思いが高まりました。ST学習において、直上パスではA段階評価の生徒が、2人組パスではAA段階評価の生徒がSTになります。教師は、前時までのバレーボールの技術に関する生徒の姿を伝えながら「この人なら私のスキルを上げてくれると思う人の所に行くように」と促します。生徒自身が技能の向上のために誰に学べば良いか選択し、ペアが決まると一緒に練習スペースに走って行きました。学びに向かう意欲が表われていました。

  • ②班活動で技術向上を図る

    班活動で技術向上を図る画像

    生徒は、ペアや班に分かれて、課題に取り組みます。ST役の生徒は、ペアの生徒のトスをする様子を見て、どこを修正すればうまくいくかを考えて、「両手で三角をつくって掌全体じゃなく、指でキャッチするといいよ」、「手だけになってるから、もっと膝を使うといいよ」といった助言をしていました。時には同じ悩みをもつペアと一緒に改善策を考え、助言をしながら練習を続けました。教師はST役の生徒にどのような視点で見ているか、どのようにアドバイスをしているかを確認し、必要に応じて助言をしていきます。また、テストにチャレンジするように促していきます。練習により、基準の直上パス40回をクリアできるようになったと思った生徒は、教師の所へ行きテストを受けました。新たに合格する生徒も複数出ていました。授業後に、「テストの時は、頭の中で教えてもらったことを考えながらしました。(そして合格しました)」と感想を述べた生徒もいました。ST学習により、技能を向上させることができました。

  • ③班での学びをゲームで試してみる

    班での学びをゲームで試してみる画像

    本時の後半では、男子は2人組パスの合格者数が条件を越えることができたため、これまでの授業で培った技能を活用するゲーム①に取り組むことができました。2人組パスのAA評価を対人3往復にするなど練習は“つなぎ”を意識して行っています。ゲーム①は練習したことをより意識できるよう、チーム内で3回以上つないで返球したらプラス1点など通常のバレーボールとは異なるルールを設定しています。教師は、正式なルールと特別なルールを比較しながら伝えます。また、ゲームの運営は生徒に全て委ねます。ルールの意図や留意点を聞いた生徒は、自分達だけでゲームを運営するとともに、ゲーム中には、高得点を狙ってできる限り3回以上つないで返そうと試み、得点が決まるたびに一喜一憂していました。このようにゲームを通して、競う楽しさを感じながら、よりチーム内でつなぐために必要なことは何か考えるきっかけとなりました。一方、女子は本時ではゲーム①はできませんでしたが、多くは直上パスの課題をクリアし、2人組パスに取り組み始めました。

  • ④学習を次時につなげる

    学習を次時につなげる画像

    教師は、本時の様子について感想を伝えます。「不安に思っていたけど、合格者が条件を越えたのでゲーム①を実施することができた。これもSTが頑張ってくれたから」と、STの生徒の貢献と、技能を向上させることができたことを賞賛します。そして、「ゲームをしていて何か自分達に足りないと感じたものはなかった?」と問いかけます。教師とのやりとりを通して、生徒は、パスの練習を行ったことで味方が打ちやすいボールを上げる回数が増えたなど本時の学びの手応えを感じるとともに、つなぐためにはもっとお互いに声をかけあう必要があるなど新たな課題を発見していきました。教師は生徒のそのような姿を見て、「女子の〇〇さんは、自分がとる時はハイと声をだし、誰かにとって欲しい時はその人に声をかけることができているよ」と賞賛するとともにモデルを示し、参考にするように促します。そして、次の時間は「ゲーム中に誰がボールを拾うか明確にする」ことを意識できるようゲームのルールを変更することを伝えました。本時を振り返り次時の予定を知ることで、生徒は、次に取り組む課題が明らかになり、次時への見通しを持つことができました。

報告者:研修協力員  山本