アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:我孫子市立我孫子中学校
教科等:3年数学科(平成29年10月)
単元名:二次方程式

二次方程式を具体的な場面で活用できる力を養いたい

  • 興味や関心を高める
  • 互いの考えを比較する
  • 知識や技能を概念化する

実践の背景

  • 実践校は1年生8クラス、2年生9クラス、3年生8クラス、特別支援学級5クラスの大規模校です。
  • 学校教育目標「社会の変化に主体的に対応し、夢と希望を持って自ら学び、豊かな心でたくましく生きる人間の育成をめざす」を掲げ、教員による授業改善に留まらず、例えば学習委員会が中心となり、「各クラスで目指す授業像」を生徒主体で考えるなど、学びを「教師と生徒が創り上げるもの」と捉え、目標実現に向け邁進しています。

授業改善のアプローチ

  • アクティブ・ラーニングを「活動あって学びなし」としないように、我孫子中学校版のアクティブ・ラーニングを「単純に『身体を動かす』ということではなく、『自分の頭で考え、表現すること』」と定義し、全職員で共通認識を図りました。
  • 生徒の実態と様々な資料・文献を参考に、我孫子中学校で育成を目指す資質・能力を「課題発見力」「計画力」「創造力」「状況把握力」「規律性」「傾聴力」「柔軟性」「働きかけ力」「実行力」「発信力」の10個とし、各教科・領域で、上記の資質・能力を意識しながら日々の授業改善を行っています。
  • 生徒が学んだことを深く認識できるように、「リフレクション」を全教科で継続的に取り入れています。
  • 指導案を書く際は深い学びを意識できるように、特に授業が深まる場面を、「本時の授業の『学びを深める』ところ」と題して特筆するようにしています。
  • 学校教育目標から導き出した「各教科で目指す生徒像」を設定することで、各教科で育成を目指す資質・能力を具体的な生徒の姿で具現化し、授業改善を進めています。

単元づくりのポイント

目標

  • 2次方程式の解法に関心を持ち、既習の内容と関連付けて解くことができるかを考えようとする
    【数学的な関心・意欲・態度】
  • 因数分解や平方根の考えを利用して、2次方程式の解き方を見出すことができる
    【数学的な見方・考え方】
  • 因数分解や平方根の考えによる解き方を使い分けて2次方程式の解を求めることができる
    【数学的な技能】
  • 2次方程式とその解の意味を理解する
    【知識・理解】

展開

1  2次方程式と2次方程式の解の意味を理解する(2時間)

2  因数分解を利用した2次方程式の解法を理解し、それを用いて2次方程式を解く(3時間)

3  平方の形の2次方程式を、平方根の考え方を用いて解く(2時間)

4  2次方程式は平方の形に変形して解くことができることを理解する(2時間)

5  2次方程式を具体的な場面に活用し、解の吟味の必要性を理解し、方程式の解が問題に適しているかどうかを確かめる過程を通して、解決を図ることができる(5時間)【本時 5/5】

6  章のまとめ(2時間)

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

規則性がある事象で2次方程式を活用することができる。

授業場面より

  • ①中学1年生の問題と似ているけど・・・
    どうやって解けばいいのだろう?

    中学1年生の問題と似ているけど・・・どうやって解けばいいのだろう?画像

    ①「さぁ、みなさん、この問題覚えていますか?」と言いながら、黒板に白い棒を貼りだした教師。完成した図は中学1年生で学ぶ1次方程式の問題でした。生徒は記憶をたどりながら、棒の本数と正方形の個数の関係を1次方程式で表します。②次に教師は「では、横にだけ正方形を並べるのではなく、縦にも増やして並べていったらどうでしょう?例えばこのように並べていき264本の棒を使ったとき、正方形は何個できますか?」と質問しました。③すると様々な考えが飛び交っていた教室が、一瞬で静まりました。全員黒板を見つめ、ぶつぶつ言ったり、空中で正方形型に指を動かしたりしています。導入で既習事項の類似問題を提示したことにより、解けそうで解けないといった違和感が、生徒の課題意識を高めました。

  • ②棒を並べて図をかいて、
    まずは規則性を見付けよう!

    棒を並べて図をかいて、まずは規則性を見付けよう!画像

    「それでは少し時間をとります。まずは個人で考えましょう。」教師はそう言いながら、ワークシートを配りました。さっそく生徒は個人の考えを、それに書き始めます。しかし、棒と正方形の規則性を見出せず何もかけなかったり、途中まで数式等をかいたものの、ペンを置いて考え込んだりする生徒がいました。そこで教師は「使いたい生徒は使ってもいいですよ」と言いながら、個人用の白い棒と、正方形が印刷されたラミネートフィルムを提示しました。棒を正方形に並べたりずらしたりする生徒、フィルムに正方形をかいたり消したりする生徒、多くの生徒が規則性を見出すために具体物を操作しながら個人の考えをつくりました。

  • ③班員の考えを聞き合ったり質問し合ったりして理解を深めよう

    班員の考えを聞き合ったり質問し合ったりして理解を深めよう画像

    個人の考えをもとに、グループで考えを深めます。「ここの本数は2n2になるでしょ」式で解けた生徒はホワイトボードの図を指さしながら自分の考えの説明を始めました。しかし、周りの生徒は今ひとつ理解ができません。「nって何を表しているの?」「えっと・・・nは大きな正方形の一辺の棒の数ね。それで・・・2乗すると正方形の数が求められるでしょ?だからn2は正方形の数を表しているの。」「で、何でn2を2倍するの?」「だって、正方形1つに対して棒は2本あるでしょ?」周りの生徒の質問により女子生徒の説明は洗練され精緻化が進み、より理解が深まります。同時に周りの生徒も、自分のワークシートにかかれた個人の考えと見比べながら粘り強く理解を進めました。

  • ④この班、私たちと同じ考えだ!あの班の解法は・・・こんな解き方もできるんだ!

    この班、私たちと同じ考えだ!あの班の解法は・・・こんな解き方もできるんだ!画像

    最後に各班の考えを全体で共有します。教師は式で考えた班と、表で考えた班を選んで発表を促しました。①式で考えた班の考えを聞いた女子生徒は、「この班と私たちの班、(棒の)分け方は違うけど考え方は同じだ。」とつぶやきました。2次方程式を整理すると最終的に同じ式になることで、文字式の良さを再認識すると同時に、自分の班と他の班の考えを統合的に考えることができました。②また、表を使い演繹的に考えた班の発表を聞くときは、うなずきながらメモを取っていました。多様な解法の説明を聞いた生徒は、それぞれの解法を比較することを通して、規則性のある事象へ2次方程式を活用する場合の概念を広げていきました。

報告者:研修協力員  宮迫