アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:千葉県立我孫子東高等学校
教科等:2年物理基礎(平成29年11月)
単元名:熱とエネルギー「熱と熱平衡」
生活と繋がる課題から科学的に考察できる力を育成したい
興味や関心を高める
協働して課題解決する
知識や技能を概念化する
実践の背景
- 実践校は、平成28年度より「新たな学びに関する教員の資質能力向上のためのプロジェクト」の研究指定を受け、本年度は「新たな未来を築くために、自らの力を育み(基礎学力)、自らの能力を引き出し(コミュニケーション能力)、主体的・協働的に学ぶ生徒の育成」~基礎的・汎用的能力を育成するために~を研究主題とし、授業改善に取り組んでいます。
- 生徒の実態を踏まえた授業を実践し、学習意欲の向上と基礎学力の定着を図ること、さらに個々に応じた学力向上を目指す指導方法や内容の工夫を図ることを目標としています。
- 共に学ぶ授業から生徒に主体的に学習に取り組む姿勢が生まれ、学習意欲が高まっています。
授業改善のアプローチ
- 小中高の系統性を踏まえて既習の内容を振り返り、生徒たちの理解に繋げています。
- 家庭科の保育実習や実生活に繋がる課題として「粉ミルクを人肌の温度にしてみる」実験を行います。実験では、熱現象とエネルギーとの関連を探究し、導き出した数値を科学的に考察できるような場面を設定しています。
単元づくりのポイント
目標
- 様々な物理現象のエネルギーを観察、実験などを通して探究し、科学的に理解し、意欲をもって取り組むことができる。
【意欲・関心・態度】 - 熱現象を微視的な視点で捉え、原子や分子の熱運動と温度の関係を科学的に考察し、導き出した考えを表現することができる。
【思考・判断・表現】 - 熱と温度について、原子や分子の熱運動という視点から理解することができる。
【知識・理解】
展開
全9時間
1 温度と熱運動
【1】
①温度 ②熱運動と絶対温度
2 熱と熱平衡
【本時4/4】
①温度と熱平衡 ②熱容量と比熱 ③熱量の保存 ④比熱の測定
3 熱と仕事
【2】
①物質の三態 ②内部エネルギー ③ジュールの実験 ④熱量学の第1法則
4 エネルギーの変換と保存
【2】
①可逆変化と不可逆変化 ②熱機関 ③エネルギーの移り変わり
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
- 熱平衡について理解し、実験・観察を通して意欲的に探究しようとする。【関心・意欲・態度】
- 熱量の保存について、自らの考えを導き、まとめることができる。【思考・判断・表現】
授業場面より
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①粉ミルクを人肌の温度にするためには・・・
「粉ミルクを人肌の温度にしてみよう」と課題が示されます。
家庭科の保育実習や子育てサロンに参加した経験から身近に感じられるようになった素材を使った課題の設定で、生徒たちは関心を持って取り組んでいきます。「今日は熱に関する実験なので、熱量の公式や熱量の保存の公式を使って正確に目指す温度を実現しよう」と本時の目標が伝えられ、生徒は公式を復習しながら必要な数値は何か確認します。さらに、プラスチック製と耐熱ガラス製の2種類の哺乳瓶が用意されたことで、「比熱」の違いを意識していきます。 -
②計算で人肌のミルクを作るんだ
公式に数値を代入して理論値を求めます。
生徒は哺乳瓶や粉ミルク、お湯や水の質量・比熱などあらかじめ数値のわかっているものと、お湯に溶かしたミルクの温度や温度を下げるための水の温度といった実験の過程で測定する数値があることを確認します。グループ内で公式に沿って計算をしていく中で、疑問や理解が十分でない箇所を共に考えたり、教え合ったりしながら、科学的に調乳を行うという実験に関心を高めていきます。 -
③いざ、実験!!
哺乳瓶に粉ミルクを入れ、お湯と混ぜて温度を測ります。哺乳瓶を保温袋に入れながら水の温度を測り、人肌の36.5(℃)にするために必要な量の計算をしました。お湯の熱さを肌で感じながら、「5(℃)違うとこんなに熱いんだ」「ビーカーやフラスコに入れ替えたら、こんなに温度が下がった」とつぶやく生徒がおり、温度とは何かという既習事項を振り返りながら日常の場面で行われる調乳を科学的な視点から行う実験を通して、熱の移動について考えることができていました。
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④まとめと考察
生徒は理論値と実測値の違いについて考察していきます。
プラスチック製の哺乳瓶を使用したグループから「(計算によると)人肌の温度36.5(℃)をつくるために必要な水の量は21(g)でした。理論値から求めて実際に作ったミルクは36(℃)になりました。理論値と実測値の違いを考えてみると、44(J)の差が出ましたが、理論値を求めれば、ほぼ正確であることがわかりました。」と物理基礎で学んだ知識が日常生活に生かせることを実感した発表がありました。
報告者:研修協力員 木下