アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:北海道札幌北高等学校
教科等:3年理科(物理)(平成29年9月)
単元名:電気と磁気
電気や磁気に関する概念や原理・原則を日常生活や社会と関連付けて考察する力を育みたい
興味や関心を高める
協働して課題解決する
知識や技能を概念化する
実践の背景
- 実践校は、普通科8クラスからなり、生徒の多くは大学への進学を希望しています。
- 個別的な知識・技能ではなく、構造化された生涯役に立つ知識・技能の習得を図っています。
- アクティブ・ラーニングについて全職員での情報共有を図るために、各自の実践を発表する等の職員研修を、年6回程度実施しています。
- 生徒の学びをアクティブにするため、公募による校内委員会を設置し、各分掌と連携を図りながら学校全体で授業改善に努めています。
授業改善のアプローチ
- ブレインズオン(頭がもがいているの状態)をアクティブ・ラーニングと考え、効果のあるときに必要な手段を講じるように心掛けています。
- 65分で授業を構成することにより、協働学習の時間を十分に確保しています。
- いつでも復習ができるように、2年生から使用している全てのノートをつづらせています。
単元づくりのポイント
目標
- コンデンサーの性質を調べようとしている。
【関心・意欲・態度】 - コンデンサーの性質と接続について考えることができる。
【思考・判断・表現】 - コンデンサーに充電される電気量と電気容量、電圧の関係を調べ記録することができる。
【観察・実験の技能】 - コンデンサーの性質がわかる。
【知識・理解】
展開
第4部 電気と電磁(第1章 電界と電位 4 コンデンサー)
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- 電気容量
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- 平行板コンデンサー
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- コンデンサーに蓄えられるエネルギー(本時)
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- コンデンサーの接続
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
コンデンサーの仕組みを知り、コンデンサーを直列つなぎにしたときの電気量を計算により求めることができる。
授業場面より
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①これが充電で、これが放電か!電気量は・・・少ない!
導入場面です。教師はコンデンサーを取り出し、「前時からコンデンサーについて学習していますね。ところで、このコンデンサーには豆電球を何秒灯せるだけの電気を溜めることができると思いますか?」と問いかけました。生徒は「3分くらい?」「20秒くらいじゃない?」と予想を立てた後、班ごとに実験を始めました。「今充電中ね」「豆電球につなぐと放電するんだね」と確認しながら実験をする生徒がいました。豆電球が光った瞬間、教室中から歓声が上がりましたが、その光は5秒ともたず消えてしまいました。思わず女子生徒が「電気量これだけ?!少ない!!」とつぶやきました。実験を通して確かめることで、充電したものを放電すると電気が流れなくなるコンデンサーの特徴やそのときの電流の動き、そして電気量を、実感を伴い理解することができました。
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②コンデンサーを直列につなぐと、電気量はどのくらいかな?
実験終了後、教師は前時で学習したコンデンサー1個の場合の計算方法を確認しました。そして「今回はコンデンサーを直列に2個つないだとします。さぁ、電気量を求めることはできますか?」と問いかけました。電位や電圧に関する補足説明の後、生徒は個人で電気量を求めます。回路図上を電流の動きに合わせて何度もペンを走らせ充電と放電をイメージで捉えようとする生徒がいました。実験を通して理解を深めていることが思考の支えとなっています。また、多くの生徒が前時のノートを見返しながら問題を解いていました。以前に習得した知識を活用しながら答えを導こうとしていました。
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③2倍になりそうだけど・・・図で考えると変わらない?!
個人の考えを班で説明し合います。個々のコンデンサーの電気量が同一になることは早々に解決できましたが、全体の電気量についてはなかなか解決しません。教師は各班を回りながら生徒のノートと発言を確認し、支援が必要な生徒には班内の協働を促すことで見通しを持たせました。「感覚的には2倍になるような気がするけど・・・」「でも、流れる電気は図で考えると1個分になるよね?」2つ合わせても1つ分の電気量しかたまらないという予想は立てられたものの、感覚と予想の不一致から生まれた違和感が、さらに課題解決への意欲を高めました。
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④なるほど!発展問題も同じ考えで解こう!
班活動を通し解決できた生徒の代表者が、考えを板書し、教師がまとめる形で解法の共有を図りました。「なるほど」とつぶやく生徒や、頷きなら説明を聞く生徒がいました。課題解決への意欲が高まったことにより、積極的に理解しようとする姿につながりました。
授業終盤、教師は発展問題を配りました。生徒は本時の課題に対する解法や、回路図上にメモをした教師や班員の意見を見直しながら、発展問題を解いていきます。実験や班による協働学習を通してコンデンサーの概念や原理・原則をしっかり理解している生徒は、既習の知識を適切に活用しながら発展問題を解くことができました。
報告者:研修協力員 宮迫