アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:福岡県立北筑高等学校
教科等:1年保健(平成29年7月)
単元名:健康の保持増進と疾病の予防

健康の保持増進と疾病の予防について、多様な考えを踏まえて自己の考えをまとめる力を育みたい

  • 見通しを持つ
  • 互いの考えを比較する
  • 自分の考えを形成する

実践の背景

  • 実践校は、普通科と英語科を併設する高等学校です。
  • 生徒は素直で元気が良く、行事にも積極的に取り組みます。その反面、授業中の発表については、もっと積極的であることが望ましい状況でした。
  • そこで、素直で明るい生徒の良さは活かしつつ、生徒の思考力を高め、判断力・表現力を向上させ、最終的には自分の考えを論理的に説明できる生徒を育てたいと考えました。

授業改善のアプローチ

  • 上記を踏まえ、研究テーマを「論理的に説明する力を育む授業改善の研究」と定めました。
  • 学校全体として、生徒同士のグループワークやディスカッションを授業に取り入れ、生徒の思考力・判断力・表現力の向上を実現しようとしています。また、ルーブリックをもとにした振り返りを取り入れています。「社会人基礎力」(経済産業省)をベースに汎用的なルーブリックを作成し、単元や生徒の実態に応じてその中から評価規準を抽出し、振り返りに活用しています。本単元では、「考え抜く力」、「発信力」、「傾聴力」を評価規準とし、それぞれに三段階の評価基準を示しました。
  • 本単元においては、思考を可視化し関連語句相互の関連付けを図るため、ウェビングマップを取り入れたワークシートを用います。班員と意見交換する際にも用い、シートの記載内容を付加修正し、自分の考えをまとめていきます。

単元づくりのポイント

目標

  • 健康の保持増進と疾病の予防について、自らの健康を適切に管理すること及び環境を改善していくことの重要性に関心をもち、学習活動に意欲的に取り組もうとしている。
    【関心・意欲・態度】
  • 健康の保持増進と疾病の予防について、課題の解決を目指した話合いにより、自他の意見を比較したり、班で意見をまとめたりし、まとめた内容を説明することができる。
    【思考・判断】
  • 健康を保持増進し疾病を予防するために役立つ、自らの健康を適切に管理すること及び環境を改善していくことについての基礎的な事項を理解することができる。
    【知識・理解】

展開

全8時間

1
生活習慣病とその予防 2時間
2
喫煙、飲酒と健康 3時間 【本時1/3時間】
3
薬物乱用と健康 1時間 
4
感染症とその予防・単元のまとめ 2時間

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

喫煙による自己や社会への影響について、自己の考えを他者の意見と比較しながら付加修正し、考えをまとめることができる。

授業場面より

  • ①本時の課題を把握する

    本時の課題を把握する画像

    はじめに、グループ内で誰が1から4の何番になるか決めました。これがアイスブレイクになり、空気がほぐれるとともに、班内で“意思決定”するリハーサルになりました。また、授業中教師が「〇番の人、~をしてください」と役割を与えることで、様々な人が活躍する場が生まれました。
      前時に学んだ「生活習慣病」について、班内で復習しました。代表班の発表内容から、教師が「基本的な生活習慣を健康なものにする、さらに、喫煙や過度の飲酒をしない」といった本時の学習に繋がる部分を取り上げて全体に示すことで、生徒は単元内での学習内容の関連を意識できました。
      教師が、「ヘビースモーカーになったつもりで考えてみよう」と特定の立場で物事を捉えるように投げかけることで、「喫煙について自己や社会への影響」との本時の課題について、自分とは異なる視点からも考えることにつながりました。

  • ②班で話し合う(1)

    班で話し合う1画像

    話合いの前に、教師は、後に行う班相互の交流が上手くいくように、班内で出た意見について共通認識をもち伝える内容を合わせておくことや、授業の終わりに振り返りを行うことを伝えてルーブリックを示すなど、話合いの進め方や留意点を説明します。そうすることで、生徒は、どのように取り組めばよいか見通しや基準をもつことができました。
      話合いでは、班長が進行しながら、班員も伝え方や聞き方を意識しつつ、協力して話合いを進めていきました。ワークシートにどのように書いていくか相談しながら、「受動喫煙になる人が周りに出る」など、喫煙について集中して話し合う生徒の姿が見られました。また、話合いの様子を見て、教師は、スクリーンに「家族」「医療費」などのキーワードを示します。この支援により、話合いが停滞しがちであったグループも、キーワードを糸口にして、話合いを進めていくことができました。

  • ③班で話し合う(2)

    班で話し合う2画像

    2回目の話合いは、班長のみ残し、他の三班から、一人ずつ集まり、4人班をつくります。一人2分で元の班で話し合った内容を伝えます。教師は、その際、自分の班で出てこなかったことはメモをすること、2分間は必ず一つの班の発表・質問を続けることなどを確認します。こうすることで、生徒は特定の班に偏ることなく他班の考えを知ることができました。また、ウェビングマップのシートを用いての発表を取り入れたことで、相手に向かって、自分の言葉で説明する姿が多く見られました。
      「自分が癌になりやすいだけでなく、周りの人も病気になりやすくなる」「体力がなくなり寿命が縮まる」などの発表した後、他の人が「病気になったら、家族の経済的な負担が増える」と発表した時に、メモをする姿が見られました。発表に用いたウェビングマップに、他の考えを自分の書いていた内容と近い所に矢印で関連付けてメモをすることで、自分の考えを付加修正していくヒントを得ることができました。

  • ④学習をまとめ、振り返る

    学習をまとめ、振り返る画像

    元の班に戻り、新しく得た考えを共有し、考えをまとめた後、全体共有を図ります。教師が、愛煙者の存在を踏まえつつ、喫煙で本当に幸福を享受できているかと問いかけることで、生徒は喫煙が及ぼす悪影響について再考していきます。さらに教師は「他者の喫煙をやめさせるには」と解決策について問いかけます。その際、「個人として、国として」と考える視点も示したことで、生徒は「家族が止めるようすすめる」「禁煙外来の設置」「法律を整備する」など、多様な案を出すことができました。このまとめにより、喫煙による健康課題を防止するには、個人への働きかけと社会環境への適切な対策が必要であるとの認識をより確かにできました。
      最後に、個人で振り返りを行いました。ルーブリックを用いることで「学習課題について考え抜くことができたか」「発言は相手に伝わったか」「相手の話を聞く姿勢はどうだったか」を自覚的に振り返ることができました。また、「社会保障費が増えるので、喫煙は社会全体に影響が出てくることがわかった」といった記述もみられました。

報告者:研修協力員  山本

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