アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:北海道札幌北高等学校
教科等:1年国語科(国語総合)(平成29年9月)
単元名:伊勢物語 東下り
登場人物の心情を読み解くことを通して、感情を働かせて思考する力を育成したい
粘り強く取り組む
共に考えを創り上げる
知識・技能を活用する
実践の背景
- 実践校は、普通科各学年8クラスからなり、生徒の多くは大学への進学を希望しています。
- 個別的な知識・技能ではなく、構造化された生涯役に立つ知識・技能の習得を図っています。
- アクティブ・ラーニングについて全職員での情報共有を図るために、各自の実践を発表する等の職員研修を、年6回程度実施しています。
- 生徒の学びをアクティブにするため、公募による校内委員会を設置し、各分掌と連携を図りながら学校全体で授業改善に努めています。
授業改善のアプローチ
- ブレインズオン(頭がもがいているの状態)をアクティブ・ラーニングと考え、効果のあるときに必要な手段を講じるように心掛けています。
- 65分で授業を構成し、協働的に学習する場面を設定しています。
- 生徒から提出された疑問点をまとめたプリントを配付し、課題解決に向けて、学習意欲の向上を図ります。
単元づくりのポイント
目標
- 歌物語の特徴や構成と掛詞、序詞などの修辞法の内容や効果などを理解する。
【知識・理解】 - 古文に親しみ、進んで面白さを楽しもうとする態度を身に付け、書き手の意図を捉えようとしている。
【関心・意欲・態度】 - 物語の中の人物の心情を表す和歌に注目し、その内容を考察することができる。
【読む能力】
展開
- 1
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伊勢物語を題材とし、歌物語とはどのようなものかについて、その特徴や構成などを理解する。段落毎に大まかな内容をイメージし、作品の中から感じた疑問点を明らかにする。
- 2, 3
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和歌の修辞法(掛詞、序詞、枕詞)などの古典文法についての知識・理解を深め、グループでの対話を通して、自分と他者との考えを比較しながら、協働して、書き手の意図を踏まえた解釈を目指す。(本時)
- 4
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古文を正確に解釈する上で、正しい文法理解が不可欠であることを理解し、生徒が抱いていた人間関係や情景などの疑問点の解決を、協働的な学習活動を通して実現する。
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
掛詞や序詞などの修辞法についての知識を基に「から衣」の和歌の内容を理解し、「みな人」が泣いた理由を考察し、本文を読み解く。
授業場面より
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①前時の学習内容を振り返り、本時の目標を確認する。
ペアで本文の音読をすることから授業が始まりました。言葉の響きを味わい、古文独特の言い回しに親しむためです。生徒は前時の学習内容を振り返ったあと、本時が本文の第一段落の内容把握を中心に進められることを理解しました。中でも筆者の見た情景やその時の心情が描かれている部分はという問いに対して、和歌と答えたことで、生徒は本時の目標を理解して「なぜ旅の一行は涙を流していたのか」ということを和歌の表現技法に着目して、読み解くという学習活動をスタートさせました。
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②修辞法の知識を習得する
教師は和歌が情景や風景により心が動いた時に詠まれることが多いということを伝えます。そして、第一段落の読解におけるキーポイントとなる「から衣」の歌の解釈に取り組むために必要な枕詞、序詞、掛詞などの修辞法について、その技法や効果などの問い掛けを繰り返しながら、一つずつ確認します。生徒は自分なりにわかりやすくノートにまとめ、教師の説明を中学校の既習事項や古典文法書と結び付けていました。そしていよいよ習得した古典文法の知識を活用した「から衣」の和歌の解釈への挑戦が各グループで始まりました。
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③グループで和歌の解釈をする
Aさんのグループでは、品詞分解を行い、既習の古典文法を活用した解釈を始めました。複数の意味を持つ「つつ」の解釈では意見が分かれました。文法書を確認すると、ある生徒が「反復」の意味に気付き、腑に落ちた表情を見せました。掛詞が4カ所もある和歌の解釈は容易ではありません。生徒は古語辞典や文法書や、修辞法について整理したノートの内容を見直し、自分なりの意見を出し合い、紆余曲折しながらも何とか「慣れ親しんだ妻のことを思い出し、寂しく思っている」という心情の解釈につなげました。そして事物や風景をイメージしたもう一つの解釈が課題として残りました。
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④他グループの発表を自分たちの考えにつなげ、言葉の奥深さを実感する
教師はより解釈が深まるよう、現時点での解釈を発表する機会を設けます。この発表から、Aさんのグループのある生徒が何かひらめいたようでした。その様子を見ていた教師はさらに深い解釈をこの生徒に求めます。この生徒は詠み手の心情と事物や風景の解釈を併せて表現しました。教師が、さらにこの和歌に登場する折り句の技法を伝えた時、驚きの声が囁かれ、「こんなに深い意味を込めた和歌を詠んだ昔の人って凄い」「限られた字数で多様な思いを伝えるためでは」など言葉の奥深さに感嘆した意見が出ました。他者の意見を参考に、言葉に込められた思いをより深く解釈した生徒の姿が見られました。
報告者:研修協力員 織田