アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:福井県立高志高等学校
教科等:2年数学科(数学B)(平成29年9月)
単元名:平面上のベクトル
既習事項を用いて課題解決する力を育成したい
粘り強く取り組む
互いの考えを比較する
知識や技能を活用する
実践の背景
- 実践校は、1学年あたり、普通科7~8クラス・理数科1クラスからなり、生徒の多くは大学への進学を目指しています。
- 国際社会および地域社会のリーダーとして貢献できる知徳体の調和のとれた人材を育成するため、探究型学習に注目し、学校設定科目や選択型研修旅行、土曜授業などを通して学びの楽しさを体感できるようにしています。
- SSH、SGHの指定を受け、「積極的に課題解決に取り組み、世界に貢献できる科学技術関係人材の育成」、「ふくい発、東アジアの発展と希望に貢献するグローバルリーダーの育成」に取り組んでいます。
授業改善のアプローチ
- 新しい時代に対応する資質・能力の育成を目指し、探究型学習に注目し、学校全体で取り組んでいます。
- 対話的な学びを通して、多様な解法を論理的に理解し、統合的、発展的な思考を促すようにしています。
- 教職員の指導力と意識の向上を目指し、探究型学習に関する校内研修会の充実を図っています。
単元づくりのポイント
目標
- ベクトルについての基本的な概念に関心を持つとともに、数学的な見方や考え方を認識し、平面図形や空間図形の性質等の考察に活用しようとする。
【関心・意欲・態度】 - 向きのある量を定義する意味に気付かせ、その有用性を認識し、図形や式の性質の理解に活用することができる。
【数学的な見方や考え方】 - ベクトルと座標平面上の点の関係を比較・考察して理解し、形式的・合理的に演算を処理することができる。
【数学的な技能】 - ベクトルの分解・内積・成分などの用語・記号の意味を理解し、知識として活用することができる。
【知識・理解】
展開
1~2ベクトルの意味について理解する。
3~6ベクトルの加法、減法、実数倍とその性質について理解する。
7~10ベクトルの成分と成分による演算やベクトルの大きさを求めることができる。
11~13ベクトルの内積と基本性質について理解する。
14~15位置ベクトルの意味や線分の内分点・外分点について理解する。
16~20平面図形の性質について、位置ベクトルを用いて表現する。
21~24ベクトルの方程式の意味及び直線や円のベクトル方程式、平面上の点の存在範囲について理解する。
25既習事項を活用して、ベクトルの有用性に気付くことができる。(本時)
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい
既習事項をもとに仲間との対話と通して、自分なりの道筋や方針を立てて、多様な解法を考え、ベクトルの有用性を理解する。
授業場面より
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①自分の課題を明確にする
生徒は予習をして、本時の問題に対する自分なりの解答を準備して、授業に臨みます。「まずは分からなかったことを中心に班で話し合ってみましょう」という教師の言葉を皮切りに、班での話合いがスタートしました。この班(4人組)では、「ベクトルの大きさをどう求めるか」という共通する課題を見出して、意欲的に学習活動に取り組みました。また、教室には支え合いながら学ぶことができる雰囲気がありました。
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②前時の学習内容を活用する
さらに「どのように内積を求めるか」という課題に対して、互いの考えを出し合い、解決を目指します。この班では、2つのベクトルの大きさとなす角の大きさがわからないと内積が出せないと考えていた生徒が、他の班員に解法の方向性について質問しました。すると「自分はこのような内積の計算で解いた」という友人の意見や上の写真のように考えることで、基になる2つのベクトルの大きさとなす角の大きさがわかれば、内積を求めることができることに気付きました。助言をした生徒も「分かりやすく説明できるように心掛けたら、自分の考えが整理できた」と教え合うことの魅力を振り返っていました。
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③自分と友人の発表を比較する
教師は各班での話合いの間、机間指導を行いました。意図的な指名で生徒の理解が深まるようにするためです。発表の場面では実物投影機で解法を示すことで可視化が図られます。特に平行四辺形ABCDの点Aを直交座標の原点に置き、三角比やベクトルの成分を活用した解法は、多くの生徒の関心を集め「垂線を1本引けば、三平方の定理を活用して解けるんだ」と驚いていました。ある生徒は「自分も座標で考えたけど、手間がかかると思った。内積の公式を活用した方が早い気がする」と複数の解法を自分の考えと比較して、最適解への手掛かりを獲得しているようでした。
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④ベクトルの有用性を実感する
本時の振り返りの場面でも、友人の発表や教師の支援を手掛かりにとして、学習内容を理解しようと、粘り強く取り組む生徒の姿が教室の至る場所で見られました。そして次第に「内積を求める2通りの考え方を活用すればよいのか」といったゴールに近づく声が増えていきました。多様な考え方を理解することから、生徒はベクトルの有用性を実感しました。授業後、多くの生徒が「難しかったけど、考えもしなかった解法に気付くことは楽しい」「ベクトルを使えば簡単に解答を出せる」とベクトルの知識を活用して、考察を進める姿が見られました。
報告者:研修協力員 織田