アクティブ・ラーニング授業実践事例
学校名:岐阜市立東長良中学校
教科等:3年社会科(平成29年10月)
単元名:現代の民主政治と社会ー地方政治とわたしたちー
社会的な見方・考え方を働かせて社会認識を獲得し、社会参画への意欲や態度を育てたい
興味や関心を高める
多様な情報を収集する
思考して問い続ける
実践の背景
- 当校は、「共に自立をめざす生徒」を学校の教育目標に掲げ、学び合いを通して、学びの深まりを実感する生徒を育てています。
- 生徒と教師がP・D・C・Aサイクル(学習過程)を共通理解し、学習活動を創り上げる学習集団を育成しています。
- 学校の教育目標等を踏まえ、研究主題を「各教科等における見方・考え方を働かせ、学びを深める生徒」としています。そこで、汎用性のある資質・能力を育むために、単元や題材における一単位時間の役割を明確にして実践に取り組んでいます。
授業改善のアプローチ
- 習得した知識を生かして、社会的事象を多面的・多角的に捉えることのできる単元構成
- 学ぶ意欲が連続する課題意識の生み出し方と見通しの立て方
- 思考を整理し、可視化する学習過程
単元づくりのポイント
目標
- 地方自治の基本的な考え方、地方公共団体の仕組み、住民の権利や義務について理解している。また、収集した情報を社会的な見方・考え方に沿って読み取っている。
【知識及び技能】 - 地方自治の本旨や住民参加の意義を、私たちの生活と関連付けて多面的・多角的に考察している。
【思考力、判断力、表現力等】 - 住民の政治参加について主体的に社会に関わろうとする態度を養い、地方自治に対する多面的・多角的な考察や理解を通して、国民主権を担う公民としての自覚を深めている。
【学びに向かう力・人間性等】
展開(全5時間)
第1時:「私たちの生活と地方自治」
第2時:「地方自治の制度」
第3時:「地方財政」
第4時:「高山市の住民自治」本時
第5時:「私たちと岐阜市」
「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善
本時のねらい(4/5)
選挙権を持たない高校生の議会での提案が実現した理由を考えることを通して、住民や高校生、議会、市長が地域の抱える課題を解決したいという共通の思いをもっていることに気付き、市長や議会が地域をつくる一人一人の願いを大切にし、住民一人一人が「自分たちの手で地域をつくる意識」をもつことが、まちづくりへの参加や社会参画につながるという考えを見いだすことができる。
授業場面より
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①学びたいことを明らかにする
「高校生の提案が実現に向かうなんて、議員さんがやることと思っていた。」「ボランティア以外にもできることがあるのか。」
単元を通して「私たちは地域の政治やまちづくりに参加できるのか。」ということを考えてきた生徒たちは、「高山市に大学を設置して欲しいという高校生の要望が実現に向かっていった」という事象と出会い、素朴概念が揺さぶられます。
その上で、本時は「高校生の提案が実現に向かっていったのはなぜか」という切実感のある学習課題を、教師と生徒と共に作り上げます。
そこには、生徒の思考に寄り添う教師の姿勢と、たゆまぬ教材研究があります。 -
②課題解決への見通しを持つ
「高校生の提案は、説得力のあるものだったのだろう。」「市長さんや市議会は、一緒に問題を考えたいと思っているのじゃないかな。」などと、生徒は学習課題に対して、立場を整理しながら予想を立てます。
「高校生(住民)や市長さん、市議会のそれぞれの思いを探ることで、今回の学習課題を解決できるのではないか。」と、生徒は考えを出し合って、解決の方向性を見いだしていきます。
それは、既習をまとめた掲示物によって、これまでの学びを想起できるようにしていることや、生徒の発言を、地方政治のしくみと重ね合わせて、立場から黒板に整理していることが支えとなっています。 -
③立場を整理して追究する
「市長は、人口減少の問題に対して、魅力ある地域を作っていきたいと考えている。そして、町づくりの主役は市民であると考えているんだ。」「議会は意見交換会等を開いて、これからを担う若い世代の意見も大切にしているんだ。」
見通しを持った生徒は、解決に必要な資料を取捨選択しながら、じっくりと追究していきます。
このような学びを通して、生徒は多面的・多角的に考察を進め、根拠を明らかにしながら、理由を述べる力を付けていきます。 -
④自分事として考える
「政治に参加する方法は、選挙だけではないことが分かった。自分が地域をよくしていきたいという思いを持ち、やれることを考え、行動していくことを学んだ。創生(総合的な学習の時間)でも、さらに地域に目を向けて取り組んでいきたい。」
「地方自治に大切なことは何か。」という、終末での教師の問いに対して、生徒はここまでの学びを振り返ります。
それによって、事象を自分と結び付けて考え、次の学びに生かそうとする姿につながっていきます。
報告者:研修協力員 各務