アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:徳島県立城北高等学校
教科等:1年化学基礎(平成29年10月)
単元名:1編 物質の構成 第3章 化学結合

事実に基づいて科学的に思考する力を育成したい

  • 見通しを持つ見通しを持つ
  • 多様な情報を収集する多様な情報を収集する
  • 知識・技能を活用する知識・技能を活用する

実践の背景

  • 実践校は、昨年度から徳島県教育委員会の「新たな学びに関する教員の資質能力向上のためのプロジェクト」の協力校として指定を受け、「主体的・対話的で深い学び」の推進に取り組んでいます。
  • 本年度は、さらに県立総合教育センターの「進化する教室イノベーション事業」の指定を受け、夏休みに全普通教室にホワイトボード型電子黒板プロジェクターが設置され、2学期から授業においてICT活用が本格化するようになりました。
  • 来年度からは「理数科学科」が新設されることになり、「心 動く 学び 城北」というキャッチフレーズが教職員の公募から選ばれ、ポスターを作成して校内に掲示する等、全校生徒・教職員が揃って、新たな学びに向かう気持ちを高めています。

授業改善のアプローチ

  • 理科の目標を「自然の事物・現象に対する興味・関心を喚起し、実験・観察を通して科学的に探究する態度を養い、事実や実験結果を科学的に思考する力を育成し、自然の事物・現象について理解を深める」と設定し、授業において生徒自らが考えたり体験したりしたことを発表し合い、仲間と協働して深め合っていく機会を重視しています。
  • 新たに設置された電子黒板を使って、生徒が実施した実験の映像をタブレットで記録し、プロジェクターで映し出して確認したり、発表内容をまとめた表を皆に示しながら伝えたり、効果的なICTの活用を目指しています。

単元づくりのポイント

目標

  • イオン結合、金属結合、共有結合などによってできた物質の性質について観察、実験などを通して探究し、物質の性質が化学結合により特徴づけられることを理解する。
    【知識・理解】
  • 実験結果をもとに、実証的、論理的に思考し、事実に基づいて科学的に判断する姿勢や態度を身につける。
    【思考・判断・表現】

展開

第1次 イオンとイオン結合(3時間)

第2次 分子と共有結合(3時間)

第3次 金属と金属結合(1時間)

第4次 化学結合と物質の分類(3時間)
第1時 化学結合と物質の分類
第2時 結合の違いによる物質の性質を確認する(探究活動)
第3時 物質の性質から結晶の種類を推定する(本時3/3)

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

実験結果とこれまで授業で学んだ内容とを照らし合わせ、結合の違いによって物質の性質に違いがあることを理解する。
  討議や、他のグループの発表を聞くことを通して、実験結果をもとにした考察ができ、それを表現する。

授業場面より

  • ①実験結果を確認したら・・・

    実験結果を確認したら・・・画像

    目標が、「結合の違いによる結晶の性質の違いを理解しよう」「討議や意見発表を通して、実験結果をもとにした考察をしよう」と示されました。
      教師は前時の実験で、あえて水を渡す際に水道水を渡したり、純水を渡したりし、性質から結晶の種類を考察する実験結果が一致しないように工夫しています。さらに、ある生徒の「この物質はすぐ融解したんだけど、水溶性の電気伝導性はあるし、・・・」というつぶやきを示し、各グループの実験結果に多くの矛盾があったことを確認しました。
      生徒は実験結果から考察をします。
      各自がワークシートをもとに実験の様子を振り返り、A~Eの物質がどのようであったか、結果をどのように判断していくべきか考え、グループ討議に向かっていきます。

  • ②結果をもとに結晶の種類を考察

    結果をもとに結晶の種類を考察画像

    5種類の物質の性質から結晶の種類を考察していきます。A~Eの物質について、電気伝導性・融点・水への溶解性・水に溶解した場合の電気伝導性を実験により確認しています。
      教師は、結晶の種類を考察した理由の中から「決め手となったもの」をワークシートに記入するよう伝えます。
      生徒はグループ討議で実験の様子を振り返りながら疑問を持ち、「この試料は、なんで溶けなかったの?」「ちょっと溶けてたよ」「全部は溶けてなかったよね」「じゃあ、溶けてたってこと」と結果を確認し、考察を深めていきます。周囲の意見や自分の意見を様々な方向から考え、意見をまとめていきました。他者の意見をよく聞き、自分の意見を伝え、話合いの中からグループでの納得解が生まれました。

  • ③全体で考察を共有しよう

    全体で考察を共有しよう画像

    発表の時間です。十分に討議したことで、他と違った考察となっていても、臆することなく根拠を述べることができました。水の違いや塩化ナトリウムの湿っている、いないの違いから、考察により導かれた結晶の種類は一致していません。
      教師は、さらに多様な情報を収集し、考察を深めるためにグループの再編を行います。
      生徒は他のグループの実験結果を知り、その違いを確認しながら改めて考察をやり直します。ワークシートに記入し、見比べながら、自分のグループと他のグループの結果の差に注目し、「水が違うのでは?」と気づいた生徒もいました。

  • ④いよいよ解決

    いよいよ解決画像

    教師は、実験中の様子を撮影した動画を確認しながら、その違いに着目するよう解説を加えていきます。
      生徒は、映像を見ながら教師の仕掛けに気づき、様々な要素により結果が変わることを確認します。また、グループ討議を繰り返したことで「他者の意見から新しい発見をすることは大切だと思った」「自分の意見を持ちながら他者の意見を尊重し、自分の考えをより深められた」と振り返ります。共に意見を出し合うことで自分の考えを構築できたことを自覚し、結合の違いによる物質の性質の違いについて理解するとともに、科学的に探究する時の基本の大切さ、仮説を持って実験に向かう必要性を実感することができていました。

報告者:研修協力員  木下