アクティブ・ラーニング授業実践事例

学校名:由利本荘市立西目小学校
教科等:2年国語科(平成29年10月)
単元名:つたえたい!分かったこと じぶんのこと
            ~「どうぶつ園のじゅういさんのしごとって?」~

文章から自分の考えの根拠を書き抜き、考えや感想を整理して伝える力を育成したい

  • 振り返って次へつなげる
  • 互いの考えを比較する
  • 知識・技能を活用する

実践の背景

  • 実践校は、学校教育目標を「ふるさとに学び、自分の生き方を真剣に考える子どもの育成」としてふるさと西目に学び、西目らしさの薫る体験的な学習活動や問題解決的な学習活動を重視し、研究主題は「学びの自立を目指して」としています。また、コミュニティ・スクールとして、地域とともに学校づくりを進めています。
  • 開発実践フィールド校として、全職員でアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善に取り組む過程を、県教育委員会・市教育委員会・県総合教育センターと連携し、推進地域に公開をしながら進めています。
  • 子供自身が課題を発見し、解決し、発信していく単元構想の中で、どのように事象とかかわり、他者とかかわり、最終的に子供自身が自己の高まりとして手応えを得るのか、継続した見取りと教師の出番の在り方を問いながら、子供の学び続ける意欲が醸成されることを「学びの自立」と捉え研究を推進しています。

授業改善のアプローチ

本単元「どうぶつ園のじゅういさんのしごとって?」は、生活科との関連を図り、校外学習で動物園を探検したことから学習がスタートするようにしました。実際の獣医さんにインタビューしたことをきっかけに、関心をもって教材文「どうぶつ園のじゅうい」に出会うことができるようにします。また、これまでの国語科の学習を生かして時間的順序を表す言葉や理由を表す叙述に着目し、獣医さんの一日の仕事とそうする理由や仕事の工夫を読み取っていきます。子どもたちは自分が治療を受けた経験を想起し、これまで持っている知識と比べたりつなげたりしながら教材文を読み進めることが期待できます。並行して関連図書も提示し活用することで、読み取ったことを確認したり広げさせることにつなげていきます。獣医さんの仕事の工夫や素晴らしさを知った感想を学級で交流させるだけでなく、獣医さんにも学んだことや考えたことを発信する活動を設定することで、目的を持って自分の考えの根拠を文章から書き抜き、考えや感想を整理して伝える力を育成したいと考え、単元を構築しました。

単元づくりのポイント

目標

  • 時間的な順序を考えながら獣医の仕事やそうする理由を読み取り、感想を書いたり伝えたりしようとする。
    【国語への関心・意欲・態度】
  • 時間的な順序を考えながら獣医の仕事やそうする理由を読み取ることができる。
    【読むことイ】
  • 文章中の大事な言葉や文を書き抜き、自分の知識や経験と結び付けて感想をまとめ、発表し合うことができる。
    【読むことオ】
  • 自分のしたことが分かるように、時間の順序に沿って簡単な構成を考えて書くことができる。
    【書くことイ】

展開

1次 じゅういさんって、どんなしごと?(2時間)
1, 2
  • 生活科の校外学習での動物園の動物の様子や獣医さんへのインタビューを想起する。
  • 教材文「どうぶつ園のじゅうい」を読み、挿絵の順番や出来事をつかみ、感想を交流し合い、学習課題を作る。
  • 校外学習で出会った動物園の獣医に感想文を送る計画を立てる。
1次 じゅういさんのしごとのりゆうやくふうは?(5時間)
3〜7【本時7/12】
  • 時間を表す言葉や文末表現などに注意して、獣医の仕事と、その理由や工夫を見つける。
  • 時間や説明の順に、獣医の「したこと」「その理由」、「工夫したこと」などを見つけ、書き抜いて表に整理する。
  • それぞれの場面における獣医の気持ちを考える。
  • それぞれの場面に「○○のしごと」と見出しをつける。
  • 獣医の仕事のすばらしいところや、自分の知識や体験と比べて考えたこと、気付いたことなどをカードに書き溜めていく。
3次 じゅういさんって、すばらしい!(2時間)
8, 9
  • 自分の体験や並行読書で見つけた知識などを想起して比べ、似ているところや違うところなどを考えて感想を書く。
  • 友達の感想を聞き、自分の感想と比べながらそのよさを考える。
4次  ぼく・わたしの一日を書いてみよう!(4時間)
10〜12
  • 家族に伝えたい出来事を選び、したことの順番に表に整理する。
  • これまでの学習から時間を表す言葉を確認し、それらを使って、自分がしたことの順序が分かりやすいように書く。

「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善

本時のねらい

一日の仕事の終わりや動物園を出る前の、獣医の仕事とそうする理由を読み取ることができる。

授業場面より

  • ①本時の見通しを持つ

    本時の見通しを持つ画像

    前時までに時間的な順序を考えながら獣医の仕事とそうする理由を読み取ってきました。教材文を読み取る活動では、児童が見通しをもって活動することができるよう、「いつ」「しごと」「りゆう」「くふう」など読み取る視点を明確に示すようにしました。また、読み取ったことを表にまとめ、可視化したことで、児童はそれぞれの事例を比較し、時系列での仕事の変化にも気付いてきています。このような教師の手立てが、前時までの学習とつなげながら、見通しを持って形式段落7、8、9の獣医の仕事とそうする理由について読み取ろうとする児童の姿につながりました。

  • ②文章中の大事な言葉や文を書き抜く

    文章中の大事な言葉や文を書き抜く画像

    獣医が、一日の仕事の終わりや動物園を退出する前の仕事やそうする理由を読み取る場面です。教師は、形式段落7、8の一日の仕事の終わりや動物園を退出する前の場面はこれまでの段落と違い、「しごと」は毎日の日課になっていることに児童が気付くことができるように、具体的な動物が登場しないことに着目するように促していきます。また、形式段落7の「しごと」「りゆう」の文を見付けることが難しい子どもには、文末表現や文の順序に着目して考えるよう助言していました。このような教師の手立てが、前段落までと違いを比べながら、形式段落7,8の獣医の仕事とそうする理由について文章中の大事な言葉や文を書き抜こうとする児童の姿につながりました。

  • ③互いの考えを比較して話し合う

    互いの考えを比較して話し合う画像

    読み取ったことを基にして互いの考えを比較して話し合う場面です。教師は、「獣医さんは、一日の仕事の終わりに日記を書いている。それは、次によりよい治療ができるから。」「獣医さんは、動物園を出る前には必ずお風呂に入る。それは病気のもとになるものを動物園の外に持ち出さないため。」などの児童の考えや感想をつなぎ、互いの見方が広がるよう話合いをファシリテートとしていきます。このような教師の手立てが、互いの考えを比較して話し合うことで、効果はすぐには見えないけれども動物のためにこつこつと準備を積み重ねることの素晴らしさや感染を防ぐための具体的な対策があることの驚きなどを感じ、仕事に対する自身の見方を広げていく児童の姿につながりました。

  • ④学びのよさを自覚する

    学びのよさを自覚する画像

    学習をまとめ、振り返る場面です。教師は、学習過程の中で見えてきた互いの考えを可視化できる板書構成をし、学習を振り返って自分の考えを再構築する際の助けとなるようにしていました。また、いろいろな友達と感想を話したり、考えを比べたりする交流場面を意図的に設定していました。このような教師の手立てが、「一日の終わり」の獣医の仕事とそうする理由を読み取ったことを基に、興味を引き付けられた言葉や文を用いて感想を書いたり、感想を交流することで多様な感じ方に気付き、学習してきたことを広く振り返ろうとする児童の姿につながりました。

報告者:研修協力員  稲岡